
『気まぐれな猫』ー忠猫コマー
「今話題のコマちゃんです!」
TVの取材が飼い主の美容院に。その猫はスコティシュ・フォールド、メス3歳、美和美容院のアイドル。
「では、飼い主の佐々木美和さんにお話を伺いましょう」
「コマちゃんはいつ頃からお手とか、待て、といったワンちゃんみたいに言うことを聞くようになったんですか?」
「そうねー、気がついたら言うこと聞いてくれてました」
すまし顔のコマを抱っこしながらインタビューに応じる飼い主。
「じゃあ、早速やってもらっても良いですか?」
「分かりました」
と言うとコマを床の上に。
「コマちゃんお手、お代わり!」
差し出す手に合わせてコマも手を添える。
「凄いです、ちゃんと分かるんですねー!」
「はい、コマちゃん待って!」
と言うと、お座りしたまま微動だにしない。TVカメラが間近に寄るがピクリとも動かない。
猫じゃらしをチラつかせるカメラクルー。それでも動じない。
「すごい!このままどれくらい待てるんですか?」
「そうねー、開店して昼くらいまで待ってましたね!」
「そうすると3時間位はこの状態ですか!」
「ええ!」
美容院の窓越しに集まってそれを見ていた近所の猫たち。
「アイツの気まぐれにも程があるだろ!」
「あいつ、『営業待て』かよ!」
「オレらの前じゃ、グデっとしたとこしか見せねーのによ」
「全く、オレたちから見りゃあ気まぐれの何ものでもねえな!」
「ホントだよな。あいつ、オレたちの前じゃ『あ? 何見てんだよ』みたいな顔して日向ぼっこしかしてねえぞ」
「『営業待て』って……プロ意識が高すぎるだろ。絶対あとで高級ウエットフード貰う計算だぜあれは」
「人間どもは『お利口さんね〜』なんて喜んでるけどよ、ただ開店から昼までボケッと動くのが面倒くさかっただけなんじゃねえのか?」
「違いない! 結局、自分のペース崩してねえんだよな。人間を掌(肉球)の上で転がしてるだけだわ」
「はぁ〜あ、帰ろ帰ろ。あんなすまし顔見せられたら、なんか調子狂うわ」
窓際に集まっていた野良猫たちは、あきれ顔でそれぞれしっぽを振ると、あくびを噛み殺しながら夕暮れの路地裏へと消えていった。
店内では、カメラに向かってドヤ顔を決めるコマちゃんと、それにまんまと鼻高々な美和さんの笑顔が輝いていた。