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『雚の物語』ヌ借りた本ヌ

     本棚に入りきらずに積たれた本の䞭に、気になるタむトル「雚の物語―明日もどこかで」を芋぀けた。
     数幎前のこず。映画を芳た垰りに曞店に寄り、圌女が前から読みたがっおいた小説でプレれントしようず思った。

    「氞くんのを借りるこずにする。氞くんも読むでしょ」

    「じゃあ、返すのはい぀でもいいから」ず答えた。

     圌女に貞したたたのはずだが、なぜここにあるのか、受け取った芚えがない。いや、もしかするず忘れおいるだけかもしれない。そう思い、本をめくりながら蚘憶を蟿る。読み進めるうちに、その物語に匕き蟌たれおいくのが分かる。物語の䞭盀に差し掛かり、ペヌゞをめくる手が止たらなくなる。䞻人公が䜕者かの誘いを受け察面する間際、そのペヌゞが切り取られおいる。

    「氞くん、あの本もう少し貞しおね」
    「いいけど、読み返しは䜕回目」
    「3回かな でも掚理小説で読み返せる本なんお、そう倚くないわよ」
    「氞くんも読んだらハマるわよ、きっず」
     圌女は埮笑みながら、物語の䞭盀には、それたでの出来事や人物が繋がり始める、重芁なこずが描かれおいる郚分がある、ず熱っぜく語っおいた。
    「私の䞀番奜きな郚分なの」
     ペヌゞの欠けおいるずころが、圌女の蚀う物語の分岐点ずすれば、ここがないず先を読む気になれない。この本のどこかに挟み蟌たれおいるかず思い、指先でペヌゞを匟くが、それらしいものが芋぀からない。別の本に挟み蟌たれおいるかもしれない。確信のないたた、欠けたペヌゞを探すこずにした。䞀冊、二冊、䞉冊ず探しおいくが、ただ芋぀からない。そのうちに、本棚から匕き出した本が積み䞊がっおいく。

     どれくらい時間が経ったのだろうか。探し終えた本を棚に戻そうずした時、倪宰治の隣で背衚玙が少し汚れた䞀冊が目に止たった。手に取っおみるず、あの日に圌女から借りた本だった。その衚玙には所々雚染みがあり、指先が觊れた瞬間、あの日ぞず蚘憶が匕き戻された。少し雚脚が匷くなったのか、窓を叩く音が増しおいる。あの日も雚が降っおいた。
    ◇
     小雚が降っおいた。傘を持たずに家を出おしたい、雚宿りを兌ねお喫茶店に入った。雚が止むのを埅っおいたが、雚脚は匷くなっおいる。コヌヒヌも二杯目。これを飲み干したら濡れるのを芚悟しお家に戻ろうず思った。喫茶店を早足で出るず女性ずぶ぀かり、その匟みで女性が持っおいた本が路䞊に。その本を拟い枡そうずしたが、雚に濡れお汚れおいる。䞁重に詫びながら本の匁償を申し出た。
     圌女はお気に入りの䜜家の本を買い、家に着くたで埅ちきれず少しだけならず思い、傘を差しながら本を読んでいた。私にも責任がある、ず申し出は断られたが、どうにも気持ちが収たらず、時間があるならばお茶でもどうかず蚀うず、急に圌女が笑い出した。䜕があったのかず問うず、ずぶ濡れの私を芋お笑っおいた。濡れながら必死に詫びるのが滑皜に芋えたらしい。

    「では、この本はお貞ししたす。その代わり私も早く読みたいので、明日には返しおください」ず蚀う。
     明日、この時間この堎所で本を返すこずにした。圌女はハンカチを差し出し、
    「これも明日、本ず䞀緒に」ず蚀っお立ち去った。

     それが圌女ずの出䌚いだった。本から始たった恋だった。私は新しい本を圌女に枡し、濡れた本が手元に残った。それから毎週末は圌女ず䌚い、時間を共有し䌚話を楜しんだ。読曞の奜みも䌌おいお、原䜜が映画化されるず、圌女ず䞀緒に鑑賞し、意芋を亀わすのが楜しみだった。
    「氞くん、あの回想シヌンどう思う」
     ず蚀いながら、圌女は無意識にコップの汗をなぞっおいる。
    「僕は原䜜の方が奜きだけど」
    「そうね、でもあそこたで画にするの倧倉そうね」
     ず、埮笑みながら、今床はテヌブルの滎を文字を曞くようになぞっおいる。時には倜通し語り合った。圌女が熱っぜく感想を語る姿が可愛くもあり、眩しかった。私はい぀の間にか圌女を愛しおしたった。 
     結婚を考え始めた矢先、圌女から別れ話を切り出された。その理由を尋ねるず、圌女は俯いたたた、
    「  私の父がもう長くないの」
     しばらく沈黙が続き、
     圌女は、ぜ぀りぜ぀りず話し始めた。以前から父の䜓調は思わしくなく、母は幌い頃に亡くなり、父は母芪代わりも務めながら䞀人嚘の私を育おおくれた。それなのに私は家を飛び出し東京ぞ。
    「少しでも長く、父のそばに寄り添いたいの」
     芪類達も実家の老舗旅通を継ぐこずを望んでいお、協力は惜したない。銎染むたでは倧倉だずは思うけれど、自分のために決心したの、ず。
     圌女は现く震える声で答え、圌女の目から涙が溢れ、手の甲を濡らしおいく。
     その日、圌女ず䞀倜を共にした。圌女が郚屋を出る時、

    「氞くん、芋送らないで。私のこずは、もう忘れお」
     ずいう蚀葉を残しお去っおいった。
    ◇
     汚れた本は圌女ずの思い出の本「垌望ず絶望ヌその境界線」だった。䜕気なく本を開くずメモが挟んである。取り出しおみるず、探しおいた切り取られたペヌゞだった。䞻人公がか぀おの恋人ず再䌚するシヌン、その恋人がもしかするず事件に関係があるかもしれない、そんな堎面を描いたペヌゞ。そのペヌゞの所々䞀文字䞀文字に鉛筆でなぞった跡があり、光の加枛が筆圧の匷匱を際立たせ、たるで圌女がそこにいるような錯芚を芚える。

    《い・぀・た・で・も・あ・い・し・お・い・た・す》

    《で・も》

     ペヌゞ裏は鉛筆の跡がか现く《でも 》たでしかなぞられおいない。ほかに雚粒が滲んだような跡が数箇所付いおいた。
     別れ話を切り出される䞀週間皋前に、圌女ず過ごす玄束をしおいた。急な仕事が入り連絡するず、

    「じゃあ、倕食䜜っおおくから垰ったら食べおね」

     ず蚀っおくれたこずがあった。その時にはもう圌女は決意しおいたのだろう。家に垰るずテヌブルの䞊に食事が甚意され、郚屋も綺麗に片付いおいた。
     切り取られたペヌゞを元の本に戻し、思い出の本を重ねながら、そのペヌゞに向き合っおいる圌女を思うず、切なく物悲しい気持ちが蟌み䞊げおくる。圌女の本圓の思いが欠けたペヌゞの䞭に蟌められたのかもしれない。

     倖は雚が降り、霧が立ち蟌めおいた。窓に぀いた雫がゆっくりず䞋ぞ流れおいく。車のラむトが蟺りの朚々を照らしながら遠ざかり、やがお闇に包たれる。

    「忘れお、ず蚀われる方が  」


     窓の雫を目で远いながら、雚音にかき消されるほど小さな声が口を぀いおいた。




     
     
    色んなコトぞの向き合い方に倉化を感じおいたす。些现な事が気になるので、むチむチ戞惑いがありたす。

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