
《掌編》 待つ時間 #シロクマ文芸部
俺は今、こうして公園のベンチに座り、景色を眺めていた。
日もそろそろ沈もうとする中で、涼しい風が頬を掠めて抜けていく。
俺はしきりにコートの袖を手で触っては、腕時計を眺め続けていた。
そんな時、一人の女性が銭湯前で立っているのが見えた。
30代くらいの女性が、慣れた手つきで銭湯セットを脇に抱えていた。
誰かを待っているのだろうか?
彼女は銭湯の前で、足をぶらぶら揺らしながら、ただ佇んでいた。
......俺もそんな気持ちだよ。
そう思ったのも束の間、女性の彼氏らしき人物がやって来た。
女性はさっきまでの冷たい表情から一変して、可愛い笑顔に変わっていた。
そこからは見るのをやめた。
俺は女性から目を逸らし、地面を見つめた。
何も面白くないただの砂利を観察し続けた。
すると突然、俺の隣りに彼女が座り、俺の首に柔らかい手を絡めた。
「お待たせしてごめんなさい」
彼女の柔らかい声に、俺の凍った心が無理矢理溶かされていくのを感じた。
「......怒ってんの」
彼女が俺の顔をそっと覗き込む。
「......三時間の遅刻はねーよ」
だが、何故だろう。
そう言いながらも俺の顔は、自然とニヤけていた。
※こちらの記事のお題から書かせて頂きました。