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知り合い未満

    歳をとって、孤独を痛切に感じる人が多いそうだ。

    そうなのかな?
    でも、孤独の何がいけないんだろう。

    実は学生時代も独身時代も実家通いで、人生で一度も独り暮らしをしたことのない私。
    本当の独りになった経験がないから、のんきなことが言えるのかもしれない。

    病気になったら?
    トラブルに巻き込まれたら?
    災害が起きたら?
    お風呂中にピンポン鳴ったら?(いや無視しとこう)
    喪服の背中のファスナー上がらん時は?(いや痩せよう)

    独りだと不安なことも、あるかも知れない。

    しかし私は元来、人混みや大勢でつるむのを好まない。
    基本インドアで一人時間を潰せる方だから、将来的に独りになる時が来ても、そんなに焦らないと思う。

    それに、どうも
    「孤独なんて耐えられない!一人は寂し過ぎる!」
    とSNSなどで切実に訴えている人ほど、
    ・普段は人とのコミュニケーションをおろそかにしている
    ・人を頼り過ぎ、もたれ掛かり過ぎ
    のどちらかが多いような気がする。

    日頃家族や友人・他人に対し、とっつきにくく非礼な態度でいるのに、いざ自分が独りになった途端に「近寄ってきて欲しい」は通らない。

    またそこそこ友人がいても、親族でもなしそこまでがっつり世話を焼いてくれると思う方が、ややずうずうしい。
    何も言ってこない時点で、そういう仲だったのだと割り切らねば。



    ところで私には、とても不思議な立ち位置の人がいる。

    お顔は、分かる。
    でも名前は、知らない。
    年齢も、同世代かな?というくらい。
    お住まいも、近くだろうということしか分からない。
    はっきり言って、知り合いとは呼べないかもしれない。

    でも会うと、とても嬉しい気持ちになる人。

    きっかけは、なんと野良犬。

    通りに人気の無い早朝、ゴミを出しに表へ出ると、家の前に一匹の犬が。
    首輪はしているがリードも無く、傍に誰もいない。
    毛はところどころ剥げて、ボサボサ。
    こちらを見ているが近づくようで近づかない。どう見ても、どこかから逃げてきた野良犬だった。
    ただ、大人しく顔がとてもべっぴんさん。
    あまりに可愛い顔なので、勝手に
    「かわいいチャン」
    と呼んでいた。

    しばらくすると、かわいいチャンに寄り添う一人の女性の存在を知った。
    何度か顔を合わせているうちに彼女の方から、
    「いつもこの子を気にかけてくださってありがとうございます」
    と声をかけてくれた。

    聞けばかわいいチャンは、うちの近所の何処かで飼われていたっぽいが、脱走あるいは飼い主がいなくなった等の理由で野良となり、人や車の少ない早朝にこの界隈をうろついて、夜はどこか廃屋で寝ているらしい。
    自身も愛犬家で、見過ごせないと考えた彼女は、餌を持って毎朝かわいいチャンに「付き添い散歩」をしているのだった。

    この時点で本当に聖人のような女性なのだが、やはり中型犬で野良となると、かわいいチャンのことを快く思っていない人々もいるという。
    そんな中、私がかわいいチャンに声を掛けていたのを見て話しかけてくださったのだ。
    私なんざ、餌もあげてないしただ「かわいーねー♡」と言っているだけなのだが。

    そんな野良犬が取り持つ縁で、見かけると彼女と話すようになった。

    程なく当のかわいいチャンは、「引き取りたい」という人が現れ喜んだものの、驚くことに諸事情で3日もしないうちに飼えなくなり、保健所へ。

    「こんなことならあのまま放浪させてあげといた方が良かった」
    と彼女は悔やんでいた。
    処分されてしまわないかと、保健所へ足を運んだり、譲渡のホームページを毎日チェックしたりしていたらしい。
    そして半年後、譲渡先は二転三転したが、遠く離れた他県で良い飼い主にめぐり逢い、かわいいチャンはついに安住の地を見つけたのだった。

    先日彼女に会った時、今の飼い主がインスタグラムでかわいいチャンの様子を投稿しているので見てみて、と教えてくれた。
    かわいいチャン(今は別の名前)はトリミングや健康診断にも連れて行ってもらい、愛情たっぷりに飼われているようで心底ホッとした。



    近所に住んでいることは確かで、トイプードルを飼っている。
    休みの日は、時々旦那様と一緒に散歩しているところを見かける。
    しかし、それ以上のことは何も知らない。
    かわいいチャンというつながりもなくなった。

    それでも彼女に出会うと、その日1日がラッキーデーのような気分になる。
    彼女の笑顔に、癒される。

    べったりと、私情の一部始終まで付き合わなくていい。
    いつも行くスーパーで会う、私に野菜のことを訊いてくるおばさんもそう。
    私は結局、こういう知り合い未満との二言三言に、幸せを感じる。

    本物の孤独を知るのは、もう少し先になりそうだ。

    ※上の画像はまだ薄暗い冬の早朝のかわいいチャンです(私撮影)





     
     
    旅と洋楽と本と珈琲と鳥と美味しいごはんが好き。人生折り返して早期退職したら見えてきた自分のこと、まわりのこと。機は熟した(?)ので少しずつ書き残していきたい。

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