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ブルゴーニュのヴィニュロンが日本酒に出会った夜|Bon Pinard 進藤聡子 × 久須美酒造 × WINE no KAORI

    「ブルゴーニュと日本」。

    この二つの言葉を聞いて、多くの人は何を思い浮かべるだろうか。

    ブルゴーニュには、世界中のワイン愛好家を魅了するテロワールがある。
    一方、日本には四季を映し出す繊細な食文化がある。

    どちらも自然と向き合い、人の手によって育まれてきた文化だ。

    そんな二つの文化を、ブルゴーニュの一つの食卓で出会わせてみたい。

    その思いから、2026年7月の収穫前の畑仕事が落ち着いた頃に、「Bourgogne × Japon」と題したディナーを開催した。

    日本酒とのペアリング

    会場となったのは、レストラン「ボン・ピナール・オ・プティ・ボヌール(Bon Pinard au petit bonheur)」。
    『気取らず、おいしいワインを小さな幸せとともに楽しむ』というニュアンスを持つ、ブルゴーニュらしい名前のレストランだ。

    料理を担当したのは、進藤聡子シェフ。

    進藤シェフは調理師専門学校卒業後、都内のフランス料理店で7年間研鑽を積み、2005年に独立。ソムリエである夫・康平氏とともに東京・広尾でレストランを開き、繊細な料理と豊富なワインリストで多くの食通を魅了してきた。

    現在は拠点をブルゴーニュへ移し、ヴォーヌ・ロマネ近郊でレストランを営んでいる。

    フランスの食材を尊重しながら、日本料理の技法と感性を織り込んだ一皿一皿は、多くのヴィニュロンにとって初めての体験となった。

    日本酒とのペアリングを担当したのは、夫であり、日本でもブルゴーニュワインのスペシャリストとして知られる進藤康平氏である。

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    当日のペアリング。3皿目は、ヴィニュロン持参のワインとのマリージュを楽しんだ。

    久須美酒造の「亀の翁」

    ワインと日本酒。

    異なる文化に生まれた二つの酒は、料理とともに味わうことで、それぞれの魅力をより鮮やかに映し出していった。

    今回、日本酒として選んだのは、新潟県・久須美酒造の酒。

    江戸時代(天保4年)から続く老舗酒蔵である久須美酒造を語るうえで欠かせないのが、「亀の翁」である。

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    会で試飲された、2種の日本酒「亀の翁」と「七代目」。
    亀の翁は、Robert Parker Wine Advocate で98点(2016年)を獲得した逸品。
    実際に新潟まで出向いて手に入れた品々。

    その原料となる「亀の尾」は、明治時代に山形県庄内地方で育成された高品質の酒を産む米である。かつては東北を中心に広く栽培されたが、栽培の難しさなどから次第に姿を消し、「幻の酒米」と呼ばれるようになった。

    久須美酒造は、その亀の尾をわずか1,500粒の種籾から長年をかけて復活させた蔵として知られている。

    効率ではなく、本当に良い酒を造るために失われた品種をよみがえらせる。その姿勢には、古木を守り、一つの区画の個性を受け継いでいくブルゴーニュのヴィニュロンたちと共通する哲学を感じる。

    派手さではなく、料理に寄り添い、飲み飽きることのない酒を目指す酒造りもまた、ブルゴーニュワインの精神に通じるものである。

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    写真右から、七代目当主・久須美賢和氏、八代目・久須美諒典氏。 さらに興味深いことに、故・六代目当主・久須美記廸氏は、ブルゴーニュの今回の会場近辺のシャトー・ド・ヴィラール・フォンテーヌ(Le Château de Villars Fontaine)を所有し、かつてワイン造りにも携わっていた。 日本酒とブルゴーニュワイン。一見すると異なる二つの世界であるが、その歴史の中には、このような意外な接点も存在する。

    日本酒はアルコール度数が高い?

    ブルゴーニュのヴィニュロンたちは、日本酒を真剣な表情でテイスティングし、その香りや旨味に耳を傾けていた。

    彼らが惹かれたのは、単に「日本のお酒」だからではない。

    日本は、多くのフランス人にとって憧れの文化を持つ国である。その繊細な文化の中で育まれ、ワインと同じように職人の手によって丹念に醸される酒に、強い興味を抱いていたのである。

    ヴィニュロンたちは、日本酒を味わいながら、自分たちのワイン造りと重ね合わせて考えていたように見えた。

    同じ「発酵」という営みでありながら、原料や気候、風土が異なれば、これほどまでに異なる表現へとたどり着く。その違いこそが、彼らにとって最も興味深かったのであろう。

    実際、テイスティングではさまざまな感想が聞かれた。

    「日本酒はワインよりアルコール度数が高いのですね。」

    そんな驚きの声もあった。

    私がブルゴーニュへ移り住んだ20年前、彼らにとって「SAKÉ」は、中国の蒸留酒のような強い酒というイメージで語られることも少なくなかった。

    しかし今では、日本酒は繊細で洗練された酒として広く認識されている。さらに、造りによっては果実味を感じさせる軽やかなタイプもあることを知り、その表現の幅広さにも驚いていた。

    一方で、日本酒は旨味が豊かで存在感のある酒である。そのため、「日本酒を飲んだ後にワインを味わうのは難しい」という感想も聞かれた。

    これは、ワインとの優劣ではない。それぞれの酒が持つ構造や味わいの違いを、ヴィニュロンならではの感性で捉えた率直な意見である。

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    7月の夕風が心地よいテラスで、「Bourgogne × Japon」の夜が幕を開けた。

    ぜひ日本へ行ってみたい!

    しかし、この夜の主役は料理でも酒でもなかった。

    人と人との対話である。

    初めて顔を合わせるヴィニュロン同士が語り合い、日本の食文化について質問を交わし、日本酒を味わいながら笑顔になる。

    その光景を見ながら、改めて思った。

    ワインも日本酒も、単なる飲み物ではない。

    そこにはテロワールがあり、人があり、歴史があり、文化がある。

    そして、その文化は、人と人をつないでいく。

    「Bourgogne × Japon」。

    最後には、「ぜひ日本へ行ってみたい」、「また日本を訪問したい」という嬉しい声が、ヴィニュロンたちから聞かれた。

    一杯の日本酒と一皿の料理が、海を越えた文化への関心を生み、新たな一歩につながった夕べとなった。




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