
ブルゴーニュの収穫が変わる。30年ぶりに「テント宿泊」が復活する理由
ブルゴーニュでは、畑仕事も落ち着き、後はブドウが完熟するのを待つのみ。早くも2026年の収穫(ヴァンダンジュ)の準備が始まっている。
先日、コート・シャロネーズのシャトー・ド・シャミイが収穫スタッフの募集を発表した。
今年の収穫開始は8月20日頃を予定
期間は約15日間。
募集内容を見ると、午前の軽食と昼食の支給、皆勤手当、収穫を最後まで終えた人へのワインのプレゼントなど、家族経営のドメーヌらしい温かさが感じられる。
一方で、以前なら珍しくなかった宿泊施設の提供については記載がない。
もちろん、この募集だけで「宿泊はない」と断定はできない。しかし、近年は宿泊を用意しないドメーヌも増えており、ブルゴーニュの収穫を取り巻く環境が少しずつ変わってきていることを感じる。
18年間見てきた「収穫」という共同生活
私は、ブルゴーニュの家族経営のドメーヌで約18年間、収穫の準備に携わってきた。
収穫は、朝早くから夕方までブドウを摘み続ける体力勝負の仕事。
しかし、それ以上に印象に残っているのは、人と人との営みだった。
学生、会社員、定年退職後の人、近所の人、海外から来た人。
年齢も職業も国籍も異なる人たちが、約2週間という短い期間、一緒に働き、一緒に食事をし、夜は同じ宿で過ごす。
毎年戻ってくる常連の収穫人も多く、「今年も会えたね」と再会を喜ぶ姿は、ブルゴーニュの収穫ならではの光景だ。
ワインはブドウから生まれるが、その収穫は、人と人とのつながりによって支えられている、私はそんな場面を何度も見てきた。
収穫人不足と宿泊施設不足
ところが近年、その風景は少しずつ変わり始めている。
収穫人を集めること自体が年々難しくなり、さらに宿泊施設の確保も大きな課題になっている。
ブルゴーニュの多くの村は小さく、ホテルや宿泊施設の数は限られている。
収穫期には多くのドメーヌが同じ時期に人を募集するため、宿泊施設はすぐに埋まってしまう。
家族経営のドメーヌにとって、数十人分の宿泊場所を確保し、食事を準備し、生活環境を整えることは、決して小さな負担ではない。

昔の植栽の名残であり、ブルゴーニュの歴史を物語る風景の一つ。
30年ぶりに復活する「テント宿泊」
そんな中、今夏大きなニュースになったのが、1996年以来禁止されていた収穫人のテント宿泊が、一定の条件のもとで再び認められるという発表だった。
かつては、ドメーヌの敷地にテントを張り、収穫期間を過ごすことは珍しいことではなかった。
しかし1996年以降、労働者の衛生や安全、居住環境を守るための規制が強化され、テント宿泊は禁止される。
それから約30年。
今回の制度変更は、「昔のやり方に戻る」というよりも、人手不足や宿泊施設不足という現実に対応するための現実的な選択と言える。
もちろん、テントで寝ることが快適とは言えない。
それでも、「収穫に参加したい」「人手を確保したい」という双方の思いを支える一つの選択肢として、再び認められることになったのだ。
収穫文化も時代とともに変わる
ブルゴーニュの収穫は、毎年繰り返される伝統行事のように見える。
しかし、その裏側では、人手不足、宿泊施設不足、労働環境の変化など、多くの課題に向き合いながら少しずつ姿を変えている。
30年ぶりのテント宿泊復活のニュースは、その象徴なのかもしれない。
畑で育つブドウだけではなく、収穫を支える人々の暮らしや働き方もまた、時代とともに変化している。
今年のブルゴーニュの収穫は8月20日頃から始まる予定。
2026年ヴィンテージは、どのようなワインになるのか。
そして、そのワインを支える収穫の風景もまた、新しい時代へと少しずつ歩み始めている。
今回、テント宿泊が新たに認められるのは、ブルゴーニュのコート=ドール県、ソーヌ=エ=ロワール県、ヨンヌ県、そしてボジョレーを擁するローヌ県の4県。近年の収穫時期の前倒しや深刻な宿泊施設不足を受け、約30年ぶりに制度が見直されることになった。
なお、フランスで就労する権利(労働許可など)を持たない外国人は、原則として収穫作業に従事することはできない。