
ワインを守るとは、文化を守ること ― オベール・ド・ヴィレーヌ Aubert de Villaine氏の言葉
近年、フランスではワインの消費が減少している。
健康志向の高まりや、反アルコール政策の影響もあり、ワインが「アルコール飲料」として語られる場面が増えている。
そんな中、ブルゴーニュの象徴的な人物であるオベール・ド・ヴィレーヌ氏が、地元紙「ル・ビアン・ピュビュリック」のインタビューで印象的な言葉を残していた。
87歳になってもなお、ブルゴーニュを語り続ける人
87歳を迎えた現在も、オベール・ド・ヴィレーヌ氏は驚くほど精力的だ。
ブルゴーニュのブドウ畑「クリマ」協会の名誉会長として、また6月にクロ・ド・ヴージョ城で開催される音楽祭「Festival Musique & Vin au Clos Vougeot」を率いる存在として、彼は「ロマネ・コンティ(DRC)」の共同経営を退いた後も、なお重みある言葉で時代に問いを投げかけ続けている。
先日、ブルゴーニュの地元日刊紙『ル・ビアン・ピュブリック(Le Bien Public)』に、久しぶりに彼のインタビュー記事が掲載された。
その中で彼が語ったのは、フランスにおけるワイン消費の減少への危機感だった。
ワインが「悪者」になりつつある時代
もちろん、健康志向の高まりは時代の流れである。
しかし彼は、それ以上に、反アルコール・キャンペーンの中でワインが象徴的な標的とされる風潮に強い懸念を示している。
国の政策を含め、ワインがあたかも「悪者」であるかのように扱われているというのだ。
彼はこう語る。
「ワインを本来あるべき姿として再評価してもらうためには、各ワイン産地がテロワールの価値を示し、それを引き立てる努力を続けなければならない。」
ワインはアルコールではなく、人の営み
彼の言葉が深いのは、ワインの本質を「アルコール」ではなく、人間の営みそのものとして語っている点にある。
ワインは人を、より人間らしい行為へと導く。
祝うこと、分かち合うこと、ともに過ごすこと。
その価値は、単なるアルコール飲料という枠に収まるものではない。
ワインは文明とともに歩み、技術や美食文化の発展を支えてきた——それが彼の確信である。
私もこの意見に深く頷く。
ワインが「アルコール商品」であることばかりが語られる前に、まず理解されるべきなのは、長い歴史の中で育まれ、人々の生活と文化に寄り添ってきた存在であるということだ。
彼の生き方が語るもの
さらに印象的なのは、彼の生き方そのものが、その思想を体現している点である。
DRC共同経営者という頂点の立場にありながら、彼はあえてコート・シャロネーズの小さな村ブーズロンに身を置いた。そして1997年にブーズロンが村名アペラシオン(AOC)として認められるまでの道のりを、長年にわたり支え続けてきた。
そして今もなお、その土地の“クリマ”の価値を世界に問いかけ続けている。
ブルゴーニュの「現代の修道士」
私にとって彼は、ブルゴーニュにおける「現代の修道士」のような存在である。
派手な言葉ではなく、土地と文化への敬意によって、ワインの意味を守り続ける人。
新年にふさわしい、静かで清冽な言葉だった。
出典
ブルゴーニュ地元紙
Le Bien Public