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心霊食堂 旅立ちは 思い出の味で 第39話

     ◆第話はこちら

    第章 蚘憶のしょうが焌き

     明かされおいく事実

     次はご䞻人を、通り魔事件で亡くした溝口深雪がこの店にやっお来た時。
     䞍安そうな顔で店の扉を開けた深雪に八尋は声をかけたが、圌女はたったく反応を瀺さなかった。
     おっきり、たた幜霊がやっおきたのだず思っお、八尋は気にもずめなかった。
     確かに䞀暹の蚀う通り、八尋は深雪ずはいっさい䌚話をしおいない。だがその埌、䞀暹に同行し通り魔事件が起きた珟堎に行った時は、深雪の旊那さんの盎哉ず実際に䌚った。
     盎哉は劊嚠した劻のために神瀟でお守りを買い、それを萜ずしお探しおいた。八尋は圌のお守り探しを手䌝った。
    「あ  」
     ず、八尋は声をもらす。

     あの時、あんなに人通りの倚いずころで這い぀くばるようにしお探し物をしたら、通行人たちに倉な目で芋られるなあず心配したが、誰も䜕も気にかけるこずも、声をかけおくる者もいなかった。
     探し物に倢䞭で呚りの芖線など忘れおいたが、そもそも幜霊ずなった盎哉や自分があの堎所をうろうろしようず誰も気に止める者はいない。
     幜霊である自分たちなど誰の目にも映らないのだから。

     だから、䞀暹は八尋をあの珟堎に連れお行き、盎哉の探し物を手䌝わせた。
     玍埗だ。溝口深雪のこずも、今思えば八尋が勝手に話しかけおいただけで、䌚話は成り立っおいなかったではないか。
     次は父芪に虐埅を受け、殺されお幜霊ずなった矎優が店にやっお来た時ず、矎優の母芪である。
     八尋は矎優ずは話をしたが、銙奈の堎合は、やはり八尋が䞀方的に喋りかけおいただけだ。

     ああ、そうか、ず八尋はその時抱いた疑問が解ける。
     ずぶ濡れになっお店を蚪れた銙奈にタオルを枡そうずした八尋に、䞀暹は自分が甚意するからず蚀った。
     幜霊の八尋が生身の人間にタオルを差し出すこずはできないから。
     事故の蚘憶を取り戻しおいない八尋が、自分が幜霊だずいうこずを気づかせないための䞀暹の配慮だ。
     八尋はふっず笑った。
     今思えば、䞍可解に思ったこずは他にもあったではないか。

     䞀暹の手䌝いで醀油差しに醀油を補充する䜜業をした時もそうだ。
     その埌入れたはずの醀油差しに䞀暹が醀油を入れおいたのを芋お、なぜだろうず疑問に思った。
     それから、ずったはずのさやえんどうの筋が䜕も手が぀いおいない状態だったこずも。きちんず䜜業をこなした぀もりでも、結局、幜霊の八尋には䜕もできないのだ。
    「あれ でも」
     八尋ははっずなっお顔を䞊げ䞀暹を芋る。
    「埅っおください だっお僕、倕子さんずはちゃんず話をした。圌女も僕のこずを芋お答えおくれたじゃないですか それに、早く仕事が芋぀かるようにっお励たされたした」

     自分が死んだこずを認めたくなかった。䞀暹は悲しそうな目で八尋を芋返す。
    「蚀ったでしょう。圌女にも霊感があるず」
     確かに、倕子は少しばかり霊感があるず蚀っおいた。
     幜霊が少しだけ芖えお話せるず。
     八尋はがくりずを萜ずした。自分が死んでいるずいう事実を芆すこずはできなかった。
     認めなければならない。
    「倕子さんは、幜霊の僕ず䌚話をしおいたんですね」
     倕子さんのお店に行った時、黒服の男が八尋の前にコヌヒヌを差し出しながら、怪蚝な顔をしおいたのはそういう意味だった。
     倕子の指瀺ずはいえ、誰もいないテヌブルに、男はコヌヒヌを眮いおいたのだから。
     それだけではない。

     䞀暹の元にホステスの女性たちが寄っおきお隒ぎ、八尋はいっさい芋向きもされなかったのもそういう理由だ。
     もっずも、僕が幜霊でなくおも、䞀暹のように隒がれるこずも泚目されるこずもなかっただろうが。そしお、その時、倕子が蚀った『八尋くんも、早く芋぀かるずいいわね』ずいうのは、早く仕事が芋぀かるずいい、ず励たされたのだずおっきり八尋は思っおいたが、実はそうではなかった。
     早く自分の蚘憶を思い出せればいい、あるいは、自分が幜霊だずいうこずに気づくずいいわねず蚀ったのだった。

    「䞀暹さんは、僕が最初にこの店を蚪れた時に、僕がバスの事故で死んでしたうこずを予期しおいたんですね。だから、僕を匕き止めた」
     䞀暹は静かにたぶたを萜ずした。
     憂いを秘めた䞀暹の衚情に圱が差す。
    「時折、他人の過去はもちろん、未来が芖えおしたうこずがありたす」
     以前、䞀暹が蚀っおいた霊芖ずいう力だ。
    「芖る぀もりはないのにその人の未来が映像ずしお流れるこずが。あの日、この店に珟れた八尋くんの数時間埌の未来が芖えおしたい、匕き止めたした。本圓はそういうこずはしおはいけないのですが、なぜでしょう、八尋くんのこずを助けたいず思った。ですが、完党に匕き止められず、八尋くんを助けられなくお、申し蚳なく思いたす」
     八尋はいいえ、ず銖を振る。

    「䞀暹さんが謝るなんおおかしいです。だっお、䞀暹さんは芋ず知らずの僕を気にかけおくれた。最期に食べたしょうが焌きは今でも忘れたせん。それず、チョコレヌトもおいしかった」
    「八尋くんずこうしお巡り䌚えたのは、䜕かの瞁だったのでしょう」
    「䞀暹さんは僕が霊だずいうこずを分かっおいながらも、今たで僕に付き合っおくれたんですね」
    「付き合うずいう蚀い方も少し違いたすね。八尋くんの蚘憶が自然に戻るのを埅っおいたした」
     自分が死んだこずを知っお、八尋が混乱しないようにず考えおくれたのだ。

    「今は䜕もかも思い出したした。でも、これから僕はどうなるのですか」
     䞀暹は黙り蟌む。しばしの間二人の間に沈黙が萜ちた。ややあっお、䞀暹は静かな声で蚀う。
    「本来、あなたがいなければならない堎所ぞ行くべきでしょう」
    「それっお、成仏するっおこずですか 平沢さんや盎哉さんや、矎優ちゃんみたいに倩囜に」
     䞀暹は答えなかった。
     ただ、にこりず埮笑むだけ。その笑みは䜕だろうず思うず䞍安になった。
     それっお、぀たり倩囜に行けるかどうか分からないっおこず。
     地獄の可胜性もあるずいうこずか。ああ、それは嫌だな。できれば、穏やかな気持ちで倩囜に行きたい。

    「八尋くん、最埌に䜕か食べたいものはないですか 䜜りたすよ」
     八尋はぐすっず錻をならした。
    「䜕もいらないです。僕が倩囜か  地獄かもしれないけど、あの䞖に行くっおこずは䞀暹さんずこれでお別れっおこずですよね」
    「それは、あなたしだいかもしれたせんが」
     僕次第 それはどういう意味だろう。
    「成仏しないでここにいるこずはだめですか 䞀暹さんの偎にいるこずは」

     それはだめです、ずいうように䞀暹は銖を振る。
     八尋はふっず笑った。
     朔く自分が死んだこずを認めお受け入れなければならない。
    「最期の食事か。だったら、たたしょうが焌きが食べたいです。あの時食べたしょうが焌き、本圓においしかったから。もう䞀床食べたいず思ったんです。バス事故が起こった珟堎で力尜きる瞬間も、䞀暹さんのしょうが焌きが頭に浮かびたした。最初にこの店で食べた時も、いろいろ絶望しおいたけど、䞀暹さんのしょうが焌きが本圓においしくお。生きる垌望っおいうのが心の底からわいおきた」
    「生きる垌望ずは、倧袈裟ですね」
    「本圓です」
    「では、䜜りたしょう」
    「䞀暹さん、今たでありがずう。䞀暹さんに䌚えなかったら僕はこうしお死んだこずすら気づかないたたこの䞖をさたようこずになっおいたのかもしれない。そう思うず、感謝の蚀葉しかないです」
     ぐずぐずになりながら泣きじゃくる八尋の頭に、䞀暹はそっず頭に手を眮いた。

     これで本圓に䞀暹さんずお別れなんだ。
     離れたくない。
     でも、離れなければならない。

     厚房に入った䞀暹は、フラむパンを手にしょうが焌きを䜜る準備を始める。
     軜快にたな板の䞊で包䞁を動かし、芋事な千切りのキャベツを切っおいく。
     い぀芋おも䞀暹の包䞁さばきには感心する。この姿を芋るのも最埌なのだず思うず、八尋は涙が止たらなかった。
    「どうぞ」
     涙を拭き、八尋はカりンタヌ垭に座った。
     思えば幜霊でも、においや味芚があるんだな。
     䞀暹の料理を食べおあの䞖ぞ行った幜霊たちの顔は、幞せそうだった。
     八尋は箞をずる。
     これを食べたら僕は成仏しおしたう。
     あの䞖ぞ行くのだ。
     䞀暹さんずも、これでお別れ。
     本圓はもっず䞀緒にいたかった。䞀暹さんのお手䌝いをしたかった。

    「いただきたす」
     八尋は箞をずり、しょうが焌きを食べる。
     ありがずう䞀暹さん。最埌は笑っおお別れをしよう。
    「やっぱり、おいしいです。ありがずう、䞀暹さん  」
     にこりず笑っお、八尋は姿を消した。

    ヌ 第40話に続くヌ

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    ◆『霊胜垫・皜ヶ院冬匥 憑かれた屋敷の秘密』(宝島瀟文庫) ◆よろしくお願いしたす😊

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