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あなたをnoteに書いたら、少しだけ前を向けた。夫の命日に思い出した若い日のこと。



    テレビから、懐かしい昭和の歌が流れてきました。

    あの頃のアイドルは、60歳を過ぎても、私の中ではやっぱりアイドルのままです。

    歌を聴いていると、不思議ですね。

    忘れていた景色や、その頃の空気まで、一緒に戻ってきます。

    そして私は、あなたのことを思い出しました。


    ─ ❀ ─ ❀ ─ ❀ ─


    あなたと出会ったのは、私が17歳の頃でした。

    喫茶店でウェイトレスをしていた私にとって、あなたは少し年上の、大人の男性でした。

    あなたは私を子ども扱いして、よくからかいました。

    私は少し腹を立てながらも、あなたの優しい眼差しが嫌いではありませんでした。

    あの頃の私たちは、まさかこんなに長い時間を一緒に過ごすことになるとは、まだ知りませんでした。

    時が、少しずつ二人を大人にしてくれたのでしょうか。

    二十歳の誕生日にもらった万年筆とペーパーナイフは、今も私の宝物です。

    万年筆を見ると、若かったあなたと私が、すぐそばに戻ってくる気がします。


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    ─ ❀ ─ ❀ ─ ❀ ─


    どのくらい一緒にいたのでしょう。

    どのくらい話したのでしょう。

    どのくらい愛されていたのでしょう。

    そして私は、どのくらいあなたを愛していたのでしょう。

    長く一緒にいると、それを言葉にして確かめることは、だんだん少なくなっていきました。

    でも、思い出のひとつひとつを拾っていくと、確かにそこに愛情があったのだと思います。

    ─ ❀ ─ ❀ ─ ❀ ─

    あなたは地図が好きでした。

    高速道路のサービスエリアで地図をもらうと、楽しそうに眺めていましたね。

    「地図を見ると、わくわくする」

    そう話していた顔を覚えています。


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    電車の旅にも、一人で出かけていました。


    『世界の車窓から』や、吉田類さんの酒場を巡る番組も好きでした。

    知らない土地を歩いてみたかったのでしょうか。

    いつか、気の向くままに旅をしてみたかったのかもしれません。

    二人でキャンピングカーの展示会にも、よく行きました。

    定年になったら、キャンピングカーでで旅をしよう。

    そんな話もしていました。

    私は、その時間が本当にやってくると思っていました。


    ─ ❀ ─ ❀ ─ ❀ ─

    けれど、その約束はかないませんでした。

    もっと一緒に旅をしたかった。
    行ったことのない町を歩いて、知らない景色を見たかった。
    地図を広げるあなたの隣で、「次はどこへ行く?」と、もう一度聞きたかった。
    そう思うと、今でも胸の奥が痛みます。


    それでも、二人で西国三十三所を巡れたことは、私の大切な思い出です。

    あの旅に行けて、本当によかった。

    道に迷ったことも、疲れて言葉が少なくなったことも、今となっては全部、愛しい時間です。


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    ─ ❀ ─ ❀ ─ ❀ ─

    あなたが亡くなって、三年になります。

    もう、涙は出ないと思っていました。

    日々の暮らしにも慣れて、ひとりでできることも増えました。

    けれど、この日が来ると、やはり寂しくなります。

    時間が悲しみを消してくれるわけではないのですね。

    ただ、抱え方が少しずつ変わっていくのかもしれません。


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    ─ ❀ ─ ❀ ─ ❀ ─


    私はnoteに、あなたのことを書くようになりました。

    夫を見送ったこと。一人になって感じたこと。

    二人で過ごした暮らしのこと。

    最初は、書いたら余計につらくなるような気もしていました。

    うまく言葉にできず、何度も手が止まりました。

    それでも、ひとつずつ思い出を書いているうちに、気づいたことがあります。

    書くことは、あなたを過去に置いていくことではありませんでした。

    あなたとの時間を、私の中でもう一度、大切に抱き直すことでした。

    そして、誰かが読んでくださり、「私も同じです」「思い出しました」と声をかけてくださるたび、ひとりきりだった悲しみに、小さな灯りがともりました。

    あなたのことをnoteに書いたら、私は少しだけ前を向けたのです。

    ─ ❀ ─ ❀ ─ ❀ ─

    あなたを忘れない。若かったあなたも。
    地図を眺めていたあなたも。
    旅に出ることを楽しみにしていたあなたも。
    家族のために生きてくれたあなたも。

    全部、私の中にいます。


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    先日の休日家族であなたに会いに行きました。


    今日は命日です。どうぞ、安らかに休んでください。

    そして、私や子どもたちを、これからも見守っていてください。

    みんな、あなたのことが大好きです。

    「ありがとう。お疲れ様」


    ─ ❀ ─ ❀ ─ ❀ ─

    最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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    皆さまのお気持ちは、スキ❤️で受け取らせていただけたら嬉しいです。

    いつも本当にありがとうございます。💐

    おその|シニアの保健室


     
    夫を見送り、ひとり暮らしの63歳の看護師。FP3級取得。 「シニアの保健室」として、健康・年金・老後の備えと、精神科看護で学んだ「つらさを話せること」の大切さを綴ります。旅・本・AIも楽しんでいます🍀 Amazonアソシエイト参加中

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