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送信ボタンの前で指が止まる僕の夜、あなたの夜。

    足元のハロゲンヒーターが赤くきらめている。
    窓際はスースーして、コーヒーは冷めるのが早い。
    冬ってだいたいこう。
    そして僕の体温は、いつもスロースターター。

    本業の画面を開いたまま、スマホでnoteの感想コメント欄を開く。
    「こんばんは」まで打って止まる。
    句点を打って、また止まる。
    指が止まるのは頭じゃない。
    体の反応だ。


    「読む人のため」か「自分のため」か、って言われると息が詰まる

    noteって場所には、いったい何を置けばいいんだろ。
    「読む人のため」に整える場所か、「自分のため」に本心をこぼす場所か。

    この二択、優しい顔してるけど、息が詰まる。
    「どっちつかずじゃないだろうか?」という不安に常に襲われる。
    どちらも正しい顔をしていて、
    どちらも信用しきれない。
    決めきれない夜の始まり。


    喉に引っかかった一文があった

    きっかけは、あるnote記事を読んだこと。

    元の記事に「だから、ここで本音を残していきます」とあった、その一文。飲みかけのコーヒーが喉に引っかかりました。
    “書かせてほしかった”に近い温度を感じて。

    その温度に触れたから、感想でもう半歩だけ踏み込みたくなった。
    「ありますよね」で終わらせるんじゃなくて、
    もう少しだけ僕を出したい……。
    でも半歩を出した瞬間、指が怯える。


    痛そうな単語から角を削る(臆病の手仕事)

    送信ボタンの近くでカーソルが行ったり来たりする。
    一度書いて、消して、また書く。

    「葛藤」を「引っかかり」に変えて、
    「つまづき」を「立ち止まり」に変える。
    痛そうな単語から順番に角を削っていく。

    職人芸じゃない。臆病の手仕事だ。
    整えれば整えるほど、体温が抜けていく感じもある。


    結局こわいのは「距離感おかしい」と思われること

    怖いのは失礼そのものより、
    「距離感おかしい」と思われること。
    「わかったふり」と思われること。
    その瞬間、僕は保険を欲しがっている。

    で、僕は確認を始める。

    文章をコピーして、AIの画面に貼る。
    この動き、ほんとは誰にも知られたくない。

    「失礼ではないかな?」
    「見当違いではないかな?」

    AIにチェックしてもらうのは、僕の心が耐えられる強度まで文章を丸めること。優しさの服を着せるフリをして、弱さを隠す。

    で、返ってきた答えを見て、ちょっと安心するんです。
    でも同時に、別の不安も出る。
    これ、僕の文章だったっけ。僕の温度、どこ行った?


    「スキ」を押したら、胸の奥に温もりがともった

    AIの返事を読んで、またコメント欄に戻る。
    句点の位置を変える。
    「(笑)」を付けるか迷う。付けたら軽い、付けないと重い。
    どっちでも不安になる。
    今日も、手触りだけが残る。

    そんなぐちゃぐちゃの最中に、ふいに胸の奥だけが温まる瞬間が来た。
    「スキ」を押したとき、アイコン越しに「出会った頃のその人」に会えた気がした。

    ああ、いる。って思った。
    懐かしい、って身体が先に言った。頭じゃなくて、胸の奥が先。

    画面の向こうに、その人が積み上げてきた道のりと、
    生きてきた姿が見えた気がした。
    ——僕も、そうありたいと思う姿だった。


    柱を一本だけ置く夜

    SNSの活動は、家を建てるのに似ている気がします。
    いま目に見えないものに向かって、柱を一本ずつ置いていく。
    置いた柱がどんな家になるのか、その場ではわからないままに。
    だから水平器を何度も当てたくなります。

    相変わらず、足元だけ暖かい。
    窓際の冷え込みは一段と強まっていく夜更け。
    すっかり冷めたコーヒー……。
    まるで、いまの僕の迷いそのもの。
    この温度差のまま言葉を出していいのか、まだわからない。

    それでも、
    送信ボタンの前で一回だけ息を止めて、コーヒーをひと口飲んで、
    もう一度文章を見直す。
    今日も答えは見つからない。
    でも、止まった指の跡だけは嘘じゃない。
    ただ、カーソルが行ったり来たりした跡だけが、僕の手の感触に残っている。

    ……そう。「止まった指」は、たぶん進もうとしている証拠だ。
    「今夜置く柱は……このコメントの送信。」

    さて。冷めたコーヒーをもうひと口。
    僕の夜にまた、戻ります。
    体温は……ようやく、暖まりはじめた。

    🦉梟流(おうる)

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