
3日かけた資料が「方向が違う」でほぼ白紙に。やり直しを防ぐ中間報告は"3割"で出す
「ごめん、そういう方向じゃなかったんだよね」
3日かけて仕上げた提案資料を送った、その日の夕方。上司から返ってきたのは、この一言でした。
20枚のうち、使えるのは表紙と最後の1枚だけ。週末に作り直すことが、その場で決まりました。
このやり直しは、2日目の午前に5分だけ相談していれば、ほとんど防げたものです。
読み終えたら、手元の仕事で中間報告を出す「その日」を決め、文例を1つ貼って送れるようになります。上司向けにも、クライアント向けにも使えます。
評価を落とすのは、未完成より「ずれに気づくのが遅いこと」
途中のものを見せるのは、勇気がいります。
「まだ粗いのに、雑な人だと思われたらどうしよう」。そう考えて、きれいに仕上げてから出したくなります。
私もずっと、そうしていました。完成度の高いものを出すことが、誠実さだと思っていたのです。
けれど、頼んだ側から見ると、見え方は少し違います。
頼む側の頭の中にも、「こんな感じ」というぼんやりした完成形があります。それは依頼の言葉に全部は乗りません。だから、どれほど丁寧に作っても、方向が少しずれることはよくあります。
問題は、そのずれにいつ気づくかです。
- 2日目に気づく → 直すのは骨組みだけ。半日ほどで戻れる
- 締め切り当日に気づく → 作り直し。締め切りも、相手の予定も崩れる
上司やクライアントが困るのは、粗い途中経過ではなく、締め切り直前の「やり直し」のほうです。
たとえば5日の仕事なら、最終日にやり直すと3〜4日分の作業が戻ります。2日目に方向を確かめていれば、戻るのは半日ほどです。完璧に仕上げてから見せる人ほど、この差を払い続けることになります。
中間報告は「3割」の地点で出す
では、いつ見せればいいのか。目安は、作業全体の3割ほどが進んだところです。
3割なら、方向を変えても失うものが少ない。それでいて、相手が「こういうことか」と判断できるだけの形はあります。
締め切りまでの期間で考えると、次のようになります。
- 5日の仕事 → 2日目の午前
- 2週間の仕事 → 4日目あたり
- 1日の仕事 → 昼休みの前
見せるのは、完成品の縮小版ではありません。骨組みと、迷っている点です。
- 資料なら:目次と、各ページで言いたいことを1行ずつ
- 企画なら:結論の1文と、その理由を3つ
- 調査なら:分かったことの要点と、まだ分からないこと
たとえば提案資料の3割は、これくらいで十分です(架空の例です)。
1. 表紙:[業務システム見直しのご提案]
2. 現状:[月末の集計に、毎月2日かかっている]
3. 結論:[集計を自動化し、コストを下げる]←ここを確認したい
4. 方法:[候補は2つ。詳細はこれから]
5. 費用と時期:[見積もり待ち]
色や言葉づかいを整える前の段階です。整えるのは、方向が決まってからでかまいません。
途中を見せるときの「最初の一言」で、印象が決まる
粗いものを見せても評価が下がらない人は、最初の一言が違います。
「いまどの段階なのか」と「どこを見てほしいのか」を、先に伝えているのです。
これがないと、相手は完成品のつもりで細かい誤字まで見てしまいます。そして「まだこの程度か」と受け取られかねません。
見てほしい1点は、いちばん迷っていて、あとで変えると手戻りが大きいところから選びます。資料なら、たいていは結論か、誰に向けた話かです。
上司に、席で声をかけるとき:
いま[提案資料]が3割ほどの段階です。方向だけ確認させてください。
見ていただきたいのは[3ページ目の結論]の1点です。
[今日の15時]までに、5分ほどお時間をいただけますか。
上司に、チャットで送るとき:
【確認】[提案資料]の骨組みができたので、方向の確認をお願いします。
まだ3割の段階で、言葉や体裁は整えていません。
見ていただきたいのは、[結論を「コスト削減」に置いてよいか]です。
[明日の12時]までにお返事をいただければ、そのまま[金曜の提出]に間に合います。
クライアントに、メールで送るとき:
[株式会社〇〇][〇〇様]
いつもお世話になっております。[〇〇]です。
ご依頼の[パンフレット案]について、本格的に作り込む前に、方向性のご確認をお願いしたくご連絡しました。
添付は構成と見出しのみの段階です。デザインや細かな文言は、ご確認後に仕上げます。
特にご確認いただきたいのは、[表紙のメッセージを「初心者向け」に寄せる点]です。
[〇月〇日]までにご返信いただければ、予定どおり[〇月〇日]に完成版をお送りします。
どの文例にも、「どの段階か」「見てほしい1点」「いつまでに返事がほしいか」の3つが入っています。見てほしい点が1つなら、相手は数分で答えられます。
期限を過ぎても返事がないときは、決めた方向で進めることを先に伝えておきます。
[〇〇様]
いつもお世話になっております。先日お送りした[パンフレット案]の件です。
[〇日の正午]までにご意見がなければ、[「初心者向け」の方向]で作り進めます。
「ほぼできています」「すみません、途中ですが」が不安を呼ぶ
出し方しだいで、途中経過は不安の種にもなります。ありがちな言い方3つと、その言い換えです。
- 「ほぼできています」だけで終わる → 「10ページ中4ページまで。残りは数字のページです」と、量で言う
- 「すみません、まだ途中なんですが…」と謝りから入る → 「方向の確認です」と目的から入る。予定どおりの途中経過なら、謝る必要はありません
- 「何かご意見があれば」と全部を投げる → 「この1点だけ見てください」と絞る。全部を投げると、相手の仕事が増えます
もう一つ大事なのは、悪い知らせを最後に回さないことです。遅れが見えているなら、それを最初に書きます。
遅れや催促が絡む報告の組み立て方は、『こまめに報告しても催促される原因は「最後の1行」。上司が安心する報連相の4行と文例8場面』という記事にまとめました。場面ごとの文例もそろえています。
2日目の5分で、残りの3日が軽くなる
2日目の午前、上司の席で5分。
「この方向でいいよ。あ、ここは数字があると助かる」
返ってくるのは、そんな一言です。あとの3日間は、何を足せばいいかが分かったまま手を動かせます。
夕方に資料を送るときも、「また全部ひっくり返るかもしれない」という胃の重さはありません。
週末の予定表に、作り直しの文字はもう入っていません。
宿題を1つだけ出させてください。手元の仕事を1つ選び、「3割の地点」が来る日に、5分の予定をカレンダーへ入れておきます。予定名は「方向確認」で十分です。
途中経過をすぐに見せられるかどうかは、必要なファイルがすぐ出てくるかにも左右されます。次の記事では、デスク周りとパソコンのデスクトップを15分で整理するルールと手順を扱います。
文例のどれかを使ってみようと思えたら、スキを押して目印にしておいてください。