
月を見る #シロクマ文芸部
月を見る、綺麗な満月だ。
タバコに火をつける。
参ったな。寝過ごしたってレベルじゃないぜ。
◆ ◇ ◆
「着信めっちゃ入ってるな」
タバコを吸いながら男はスマホをみる。
上司からの着信が1時間おきに入ってる。
メールもあった。
開いてみる。
【おい、お前が来ないと始まらんぞ】
【先方がお前じゃないとやらないと言ってる】
【ほう、無視か。いい度胸だ】
【打ち合わせ延期だ。シバく!】
男はフッと笑った。
「とんでもねぇ野郎だぜ」
ふ〜っと煙を吐く。
煙で輪っかをつくった。
ぽん、ぽんと出来上がっては消えていく。
さて、今回はさすがにマズイ。
なんせ仕事の時間すら終わっている。
よほどの事がないと信用してもらえない。
男は考えた。
「天井が破れて2階の人が落ちてきたんです」
これは前に使ったな却下だ。
また3時間説教される。
「部屋を出ようとしたら気を失ってしまって」
これも前に使った気がするな。
被らないように書いとくか。
「実は彼女がアメリカに行くことになって」
うん、悪くないんじゃないか。一緒に行かなくていいのかって逆に心配しそうだしな。
ピンポーン。
玄関のチャイムがなった。
さっそくお出ましだぜ。
男はゆっくりと玄関に行く。
ドアを開けた。
目の前には上司がいる。
「何故、電話に出ない?」
「実は彼女がアメリカに行くことになって」
「お前、彼女いないだろ」
「...フフ、このウソつきを見る目、最高だぜ」
「はぁ?なんだそりゃ」
男はドアを閉める。
上司がドアに足を挟んで止めた。
「おい、ちょっと待て。なんで閉める?」
「もう一回最初からやります」
「ダメに決まってんだろ!」
「ぴえん」
終
シロクマ文芸部 お題「月を見る」参加作品