
あふれだす
「あー、俺も必殺技が欲しいなあ。
ねえ、ちょっと試しにやってみたいから、お前、怪人役をやってくれない?」
「え、どうした急に?
いきなり怪人役をやれって言われても、さすがに出来ないよ。心の準備も必要だし。
……なんだよ、そんな悲しそうな顔するなよ、わかった、わかったよ。やればいいんだろ、やれば。
じゃあ、まあ、こんな感じかな。
『ケーッケッケッケー!人間をさらって秘密基地に連れて行くでやんす!』」
「『やめろ!悪事はそこまでだ!ハエ男!』」
「あ、俺はハエ男だったんだ。定番の怪人だな。」
「いや、なんかお前ってさ、語尾に「はえぇ〜///」ってつけそうな顔をしてるから。」
「そっちなの!?っていうか俺そんな顔してる?」
「『うるさい!街の平和を乱す狼藉は許さないぞ!
喰らえ、正義のパーンチ!』」
「あ、パンチって言いながら殴るタイプのヒーローなんだ。
『ハエーハエハエ!そんなパンチは効かないでやんすよ』」
「『くそっ、こうなったら必殺技を出すしかない。
いくぞ!オーバーフローイングセルフコンシャスネス!!!』」
「『あふれ出す自意識?』」
気を抜くと自意識が溢れ出す。
もちろん、文章を書いている以上、自意識が反映されるのは避けられないけれど、物事には適量というものがある。過ぎたるは及ばざるが如し。スギタールは、オヨバザールがゴトーシー、デスよにょっきサーン。
他に溢れ出すものとして、たとえばリビドーなんてものもあるかもしれないけれど、さすがにそれはだいぶ落ち着いてきた。さすがにそうでなければ困るのですけども。さすがにね。それでもときどきリビドーだってこぼれ落ちてしまう。隙間だらけの心の底。
ともかく用法容量を守って適切にご使用するのが自意識にとっても幸せなのではないか。多過ぎれば自意識過剰の誹りを免れない。
とはいえ自意識過剰がダメなのはなんでなのかはよくわからないのだけど。
何でダメなんだっけ?
法律で決まっているから?
みんな我慢しているのにひとりだけ自意識を出しすぎると社会の調和が乱れるから?
その箱を開けたとたんに白い煙が出て一瞬でおじいさんになってしまうから?
歳を取れば自然におさまるなんて思っていたかもしれないけれど、そんなことはないぜ。まだまだ自意識が暴れ出すんだぜ。