
鳴らない電話
待つより待たせる方が辛いと言われているけれども、とはいえなんだかんだ言っても待つ方が辛いのではないだろうか。待たせている側はこの後どれくらい待たせるのかを理解しているのに、待っている側は何も情報が無い。不安が募る。
このあとすぐに来るかもしれないし、あと3時間かかるかもしれない。ひょっとしたら永遠に来ない可能性もある。そんな状況で待ち続けるなんていうのは、ちょっと耐えられそうもない。
とにかく僕は電話を待っている。
かかってくるかもしれない電話。
可能性だけはあるのだから、待つだけは自由だ。
でも、そこらへんをはっきりさせて欲しいな。
もし電話が来たら、こんな感じになるんじゃないかな。
「もしもし?俺、俺。俺だよ、ノーベルだよ。」
そんな風にノーベル財団から電話がかかってこないかと首を長くして待っていたのだけれど、一向に電話が来る気配はない。そもそもノーベル氏から直接に電話が来るものでは無いんじゃないかな。
毎年10月上旬になると、プロ野球のシーズンが終わり、ドラフト会議の時期が来る。
ドラフト会議では、各プロ野球団が、有望な高校生や大学生、社会人を指名して入団の交渉権を獲得する。僕はプロ野球のことをよく分かっていないから、理解が浅いのけど、ともかくテレビで放送していて、指名された選手には電話が掛かってくるということだけは分かっている。高校生なんかはテレビカメラの前で学生服を着たりして監督とかと一緒に待っている。
さて、日付が変わってドラフト会議の翌日。職場のひょうきんなおじさんが「いやー昨日ずっと待ってたけど電話来なかったよ」とボケる、そう言われても若手は愛想笑いで返すしかない。そんな茶番が毎年、日本全国で行われており、社会問題となっていると、専門家が警鐘を鳴らす。
政府ではこの社会問題に取り組むべく、3年連続でこのボケを繰り返した中年男性を東京ドームの地下に集めて共同生活をさせることを閣議決定した。そしてその様子をリアルドキュメンタリーとして放送することを予定している。おじさん達の共同生活。
自分をひょうきんだと思っていたおじさんは、同じようなおじさんに出会うと歯を剥き出しにして威嚇のポーズを取るなどの独特の生態で知られており、生物学的にも注目度が高い。そもそもひょうきんを自称するような人というのは、コミュニケーション上で何らか困難を抱えているのであり、そんなおじさん同士は簡単に仲良くなったり出来ないんだ。俺は当事者だから詳しいんだ。
目標はドラフト会議から実際に電話をもらうこと。自分の発言に責任を持つことの大切さを伝えるたいと主催者の1人は語る。とにかく誰か1人でも本当にドラフト会議から電話が来たら全員が脱出できる。
政府はその放映権をネットフリックスとかに売り出して少しでも国費の足しにしたいとか、したく無いとか。
まさに、「ノーベルから電話が来るかと思って待ってる」というのは、全く同じタイプのボケである。しかしながら何が「まさに」なのかがよく分からない。観測した範囲ではまだ誰も言ってないような気もするけれども、きっともう誰かがもっと面白く書いてるだろう。