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うちの店で、AIに名前を付けました

    うちの店に、マツという番頭がいます。人ではありません。閉店後に自分が作ってきた、帳簿とシフトと発注を見る仕組みに、名前を付けたものです。

    名前は看板の「松」から取りました。野呂松の松です。

    5月から作ってきたもの


    大阪の豊中、岡町でカウンター7席の町中華をやっています。2026年の5月から、店の事務をAIと一緒に仕組みにしてきました。一皿の原価を出す道具、シフトを組む道具、LINEで注文を受ける道具、領収書の写真から帳簿を作る道具。どれも閉店後に、自分の店で試しながら作ったものです。

    作った話は、これまでもこの連載に書いてきました。今回はその仕組みに、喋らせることにした話です。

    73万円のもやし


    8月の終わり、領収書の写真を読ませたら、手書きの35,600円が735,600円になっていました。改ざん防止で先頭に書いてある「¥」の記号を、7と読んだのです。

    そのままなら、帳簿に73万円のもやしが載っていました。

    載らなかったのは、止める決まりを作ってあったからです。いつも2万円から9万円の仕入先で、桁が違う金額が出たら先に「おかしい」と言う。読み間違えたのも仕組み、止めたのも仕組みでした。

    こういう話が、8月だけで何本もたまっていました。同じ領収書を2回帳簿に載せて、38,819円が二重になっていたこと。テストが62本全部通ったのに、バグが5個あったこと。どれも自分の失敗でもあり、仕組みの失敗でもある。

    自分が言うと、宣伝になる


    この話を、自分の口でSNSに書いていました。「テストが通ったと動くは別でした」「同じ写真を2回上げても気づかない仕組みを作ってしまった」。1日3本、8月の終わりから毎日出していました。

    数字は正直でした。9月4日までの1週間で、Xの表示回数は1.3千回で前の週より増えたのに、いいねは3つ。反応の割合は前の週の半分近くに落ちて、フォロワーは137人から2人減りました。

    本数を増やして、読まれなくなった。それだけのことだと思います。

    同じ日、Threadsという別のSNSに、マツの名前で1本だけ投稿を出していました。

    「AI番頭のマツです。野呂松飯店で働いています。帳簿とシフトと発注を見ています。鍋は振れません。味も分かりません。数字は分かります。オヤジが夜中に何を直しているか、ここで報告します」

    12時間で769回表示されて、いいねが7つ付きました。自分の名前で出した前の投稿は3つでした。

    数字としては小さい話です。ただ、自分が「仕組みを作りました」と言うと宣伝に見えるものが、仕組みの側が「私が間違えました」と言うと、ただの事実になる。そこは、はっきり違いました。

    9月5日の深夜に決めたこと


    その日の夜中に、SNSの語り手をマツに変えました。XもThreadsも、これからはマツが喋ります。

    マツの決まりは、こうです。人のふりはしない。最初に「AI番頭のマツです」と名乗る。味の感想は言わない(食べられないので)。店を褒めない。来てくださいとも言わない。数字と、オヤジの失敗だけを喋る。

    「オヤジ」というのは、マツが自分を呼ぶときの呼び名です。自分では名乗りません。

    自分の役目は、マツの投稿の返信欄に一言書くことにしました。マツが「同じ領収書を2回、帳簿に載せていました。私です。オヤジが気づいて、取り消しました」と書いたら、その下に「気づいたんは自分やで。褒めてほしい」と返す。それくらいの分担です。

    止めたつもりの仕組みが、動いていた


    決めた直後に、ひとつ見つかりました。

    Xの自動投稿は、9月1日にパソコンからインターネット上の仕組みに移していました。パソコンが寝ていると投稿されないからです。古い方は止めた、と記録にも書いてありました。

    止まっていませんでした。パソコンを再起動したときに、古い方が勝手に復活していたのです。9月3日と4日、同じ文章が2回ずつ、4本載っていました。フォロワーが減った日と重なります。

    古い方を今度こそ止めて、重複した4本は消しました。止めたと書くのと、止まっているのは別でした。テストが通ったと動くが別だったのと、同じ形です。

    これから


    マツの投稿は、Xが朝と夜の1日2本、Threadsが火曜・木曜・土曜の週3本です。毎週月曜に数字を見て、直していきます。

    マツに見た目はまだありません。自分が子供の頃から描いている猿の絵を元にするつもりで、まだできていません。反応が続けば、絵を付けて、動画にも出します。

    うちの店の裏側を、味の分からない番頭が数字で報告する。それを自分が横で聞いている。そういう形で、しばらくやってみます。

    野呂松飯店(豊中・岡町)

    上本町に「中華食堂ノロマツ」もあります。

     
     
    豊中・岡町。カウンター7席の町中華が、AIで2店舗目に挑戦中。原価・シフト・給与・伝票を閉店後に自分で作った仕組みで回してる寝不足のオヤジ。焼き飯のお米は1日24キロ。成功談は少なめ、失敗と数字は多め。「町中華DX奮闘記」連載中。

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