
マッチョ華道
こちらに参加させていただきました。
「マッチョ華道」と書かれた教室に入ると、花が一本もなかった。
代わりに、屈強な男たちが壁際に並んでいる。全員、なぜかタンクトップ姿だ。
「では本日の稽古を始めます」
師範の老婆が杖で床を指した。
「佐藤さん、窓際へ。上腕二頭筋を十五度、左へ」
「はい!」
「田中さんはその後ろ。胸を張りすぎ。余白が死んでます」
「すみません!」
二人の間に三人目がしゃがむ。師範は数歩下がり、目を細めた。
「うん。今日は流れが弱い。僧帽筋を少し足しましょう」
私は体験入門の紙を握ったまま尋ねた。
「あの……花は?」
師範は無言で白い百合を一輪取り出し、中央の男の組んだ手に差した。
その瞬間、教室が静まった。
筋肉の山の真ん中で、百合だけが細く、まっすぐ立っている。
「華道とは、何を生けるかではありません。何を生かすかです」
思わず頷いた、そのとき。
「では新人さん。上着を脱いで」
「え?」
「次はあなたを生けます」
入門申込書には、小さくこうあった。
〈花材は各自持参。筋肉は教室で育てます〉
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