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『殎り殎られ詩人酒堎』ep.83「文士の口先」

    うさぎはほずんど透明になっお、土間䞉和土どたたたきを黒く染めおいた。
    「ずいぶんず痩せちたったね  」
    俺はうさぎを抱き䞊げ、背を撫でる。
    冷えた身䜓は手の䞭で芋る間に色を倱っお、指のあいだをすり抜けた。
    手に残ったのは、圌の目ず耳ず──

    「朔ちゃん」
    「  うわ  んだよ、むペさん  吃驚びっくりすんだろ」
    「がけぇずしおんのが悪ィんだ。」
    土間の隅で、雪のうさぎが溶けかかっおいる。
    「なんだい 今床はうさぎのおはなし、、、、、、、、かい」
    「は」
    俺は垳面を襟の裡うちにねじ蟌んだ。
    わずかに肌に觊れた。
    拍が脱兎の劂く跳ねおいる。
    「芋たのかい」
    俺が聞くず、むペさんの口の端にみるみる少女の色が浮かび䞊がった。
    「芋えるずころで曞くのがいけないんだよ」
    ず叫ぶず圌女は䞊県に俺を眺め、そのたた肩に手を眮いお䞀回転ず半回りする。
    なんだか俺は玔真無垢の少幎に戻っおしたっお、だんたりで、でもどこか泣き出しそうな喉で「ひでェや。」なんお蚀いながら䞀緒になっお回っおいた。
    俺は惚めぶっおわざずふら぀き぀぀土間の隅にしゃがむず、瀕死のうさぎを抱き䞊げた。
    「そんなずこに眮くからだよ。」
    「だっお、他にどこに眮くっおんだよ」
    「玄関  」
    「芋えない。」
    「裏庭  」
    「埋たっちたうよ。」

    足が濡れる。
    俺は短く息を吞っお手元を芋た。
    残ったのは、目ず耳ず──

    「䜜り盎しおやろうね。」

    俺は裏庭に出お、雪を集めた。
    空の色を吞った雪はやや硬くなっおいる。
    土に近くなる皋、ただ柔らかであった。
    それから千䞡の実を四぀ず怿の葉を四枚。
    玄関ぞ回り、鞠菊を䞀茪。

    指先が真っ赀になるのも構わず、俺は倢䞭だった。

    「むペさん、できたよ。」
    「なんだい」
    「うさぎ、、、だ。元気になったろう」

    真っ癜な身䜓に、぀ややかな緑の耳、぀ぶらなる玅の瞳ひずみ。

    瞁偎に座るむペさんに䞀矜、手枡した。
    鞠菊の耳食りをした雪うさぎ。
    「なかなかにかわいらしいじゃないの。」
    圌女は人差し指で撫でた。
    「あらやだ、もう溶けおる」
    「ああもう 早く眮けっお」
    「なんだい、朔ちゃん あんたが枡しおきたんじゃないか」

    俺が眮いた䞀矜ず、溶けかけの䞀矜が瞁偎に䞊ぶ。
    ひきかけの砎れ障子が䜜る、寫眞機の劂き圱が二矜のうさぎを切り取っおいた。

    「障子、替えそびれちたったね。」
    「たあ、そのうちな。そのうち俺がやっずくよ。」
    「朔ちゃん、あんたのそのうちほど信甚ならないもんはないよ」
    「んだよ、人を嘘぀きみおェに」
    「おや。じゃあ私の桐箪笥の取っ手は あれもそのうちっお  い぀になったら盎るんだい」
    「そりゃあたあ  そのうち、だ。」
    「もう䞉幎だよ」
    「なんだ、ただ䞉幎かい。」
    「䜕がただ、、だ 桃ず栗が実ィ぀けちたうだろ」
    「そりゃあいいじゃねェか  秋の栗、倏の桃  粋だね。」
    「冗談じゃないよ 党く  あんたは。」
    軒䞋の柿が、寄るべなく揺れた。

    「なあ、むペさん 蕎麊食いに行かないかい」
    「たァた随分ず急なこずいうね。」
    俺はもう倖套に手を掛けおいる。
    むペさんはただ瞁偎に腰掛けお、足をぶらぶらさせおいるらしかった。

    俺はむペさんの肩に、圌女の気に入りの襟巻ストヌルを掛ける。
    「おやたあ  今かい」
    「ああ、今。」
    「寒いだろう」
    「だから襟巻持っおきたんじゃないか」
    「それだっお、寒いよ。」
    「そしたらここに入ったらいい。」
    俺は䞡腕を広げた。
    倖套の裟が軜やかに揺れる。
    「たァ ああ、やっぱりいやらしい子だ あんたはいけないよ、朔ちゃん」
    むペさんは頬を赀らめ぀぀も、「銬鹿蚀っおんじゃないよ」ず俺の尻を匕っ叩いた。
    尻をさする俺を尻目に圌女は空を指しお蚀う。
    「芋おみな、朔ちゃん。もうひず雪来そうだよ。」
    空は玫色の霞の圱で薄灰に染たっおいる。
    怿の花で眠っおいた雪が颚で飛び起きた。
    「蝙蝠があんだろ、あれさしおいけばいい。」
    むペさんは、すっかりこの問答もんどうが愉しくなっおしたったらしい。
    䜕かを指折り数えおいる。

    「今日なんお、ずいぶんず行列しおるんでないかい」
    むペさんは襟巻を撫で぀぀、壁掛けの暊を芋遣った。
    「そりゃあたあ  な。」
    「あたしャ、短気な女だよ。」
    「そりゃ垞識だ。高文こうぶんにも出おら」
    「ハハ それじゃあお偉いさんたちも私の名を知らない人はいないね。」
    「そうだ。蕎麊屋の行列だっお恐れ慄きなんずや  」
    「調子いいこず蚀っおんじゃないよ」
    俺もそろそろ案も尜き、しゃがみ蟌んでしたった。
    「なあ、行こうよ。」
    「䞊ぶんだろう」
    「䞊ぶさ。」
    「退屈なのはいやだよ。」
    もうむペさん指は䜕も数えおいなかった。
    「そしたらな、俺がおはなし、、、、聎かせおやっから。」
    圌女はやっず俺の方を向く。
    俺は圌女の目を凝ぢっず芋た。

    「西瓜の銬車の王子様、のな。」

    怿を぀぀いおいた目癜が飛び立った。
    䞀矜のはばたきに驚いた二矜目が飛び、その発た぀颚に぀られた䞉矜目が飛んだ。

    「長いんだよ  あれ」
    「たあいいだろ。今日は時間がある。」

    むペさんは花玺青はなこんじょうの襟巻を胞で重ねるず俺の肩に手を぀いた。
    「半分くらいは聞いおやっおもいいよ。」

    皋なくしお牡䞹雪が舞い出した。
    蝙蝠の䞋、俺は季節倖れの西瓜の実を枩めおただただ笑っおいた。

    今、䞉台目の銬車が走り去った。
    そしおたた語るのだった。
    四台目が来ぬこずを、ひたすらに祈りながら。


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    ゆきお様・解説
    ぀たりはそうなんです。
    描かんずしたのはそこなんです、が詰たった解説です。
    ありがたや。

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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