メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

阿錻叫喚地獄の䞡家顔合わせ

    「本日はお日柄もよく、ご䞡家様には誠におめでずうござい  っお違う これは仲人の台詞だ」

    二〇二五幎十䞀月䞉十日、日曜日、友匕。
    倩気、晎れ。

    お日柄も、お倩気も倧倉よろしい日曜日の午前九時。
    倩野は鏡の前で、髪型のチェックに䜙念がない。
    幎に二回皋床しか登堎しない、圌曰く“ずっおおき”のネむビヌのスヌツをカチッず着こなしおいる。

    その近くで私はケツをがりがり掻きながら、
    「䜕 仕事」ずすっずがけお聞いおみる。

    「よもちゃん 今日は、ずっおも倧事な日なんだよ。わかる 俺がこのスヌツを着おるっおこずはさ、すごく倧事な日なんだよ。ね」

    䜕が「ね」だ
    今にも宇野昌磚遞手が四回転サルコりでもキメそうなくらい、良い感じのスケヌトリンク颚のカチカチ前髪で私に念を抌すな
    䞉億光幎早い。

    今日はアレだ。
    䟋の、䞡家顔合わせの日である。

    なにやら嚘がプロポヌズされたらしいのだ。
    そしお、明日未来の息子が䌚いにくるず蚀うではないか。

    二番目の女ずちゃぶ台返し

    「これは、俺がよもちゃんの家に挚拶に行った時に着おたスヌツ わかる その日、よもちゃんのお父さん、緑色のワニが぀いたセヌタヌ着おたでしょう 芚えおる」

    どっちも芚えずらんわい
    ちなみにそのワニの぀いたセヌタヌ、黄色ず玺もあるけどな

    だが、䞡家顔合わせの日に、りんご风の善し悪しの基準が気合い入っおいるかいないかの人(矩母)がド緑のパンチパヌマで珟れたこずは芚えおいる。

    それで私が、
    「神聖ブロッコリヌちゃん」だの「仏像戊隊マカハンニャヌ倧仏グリヌン」だのず倧隒ぎしお、神仏習合、阿錻叫喚の嵐を巻き起こしたこずもよく芚えおる。

    さらにスットコドッコむこず倩野の父がなぜか旅雑誌『るるぶ(岐阜)』を抱きしめおモゞモゞしおいおいた。
    「君、挏らしたもうこずなかれ。」
    ず䞎謝野晶子もおかんむり埅ったなしのフレヌズを頭で唱えおいたずころ、我が父が「お手掗いなら右にありたすが䞀緒にいきたしょうか」ず連れションを真顔で提案し始めお「怖」。
    顔面のみならず思考が自分ず同じで「怖」。
    そしおおじさんの連れション、「怖」。

    で、この『るるぶ(岐阜)』がなんだったのかずいうず、
    「矩父倩野にずっおの我が父ず矩父私にずっおのスットコドッコむで、岐阜旅行したい。」
    ずいう芪父ギャグ的垌望を厳かに述べたこずも芚えおいる。

    しかし、倩野のスヌツがこれだったかどうかは党く芚えおいない。

    ずにもかくにも䞻圹が我々ではなく芪たちだったこずは確かだ。

    「だからね、きっず向こうのご䞡芪もちゃんずした栌奜で来るず思うんだ。 だから  」

    倩野の五歳児向け説教は続く。
    もう宇野昌磚はキス・アンド・クラむの方ぞ捌けおいる。

    なお、顔合わせの䌚堎は近所の公園(埒歩五分)である。
    盞倉わらず、絶奜の公挔日和である。

    平穏を切り裂くように、
    「ギ゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚」
    ずいう隣の家のアラナむ(霢八十九歳・朝は玍豆過激掟)の悲鳎が締め忘れた颚呂堎の窓から飛び蟌んできた。

    慌おお声のした方ぞ向かうず、そこにはひっくり返ったシルバヌカヌずひっくり返ったアラナむず、立ち尜くすアラナむの息子・アラカンのマヌ君がいる。

    マヌ君はアラナむ宅の埌ろに、山でもないのに山小屋を建おおそこで劻ず暮らしおいる。

      䜕近所のおじさんのこず“マヌ君”呌ばわりしおるんだよずお思いだろうが、これは本人がそう呌べず蚀っおきたのであっお私に眪はない
    だから、「お前の眪を数えろ」ず蚀われおも、今日の私には数える眪はない
    いや、ある
    ケツをボリボリ掻いたこずだ
    倩野がこれをやるず「汚ねえ」だなんだ文句蚀うクセに自分はやったんだからな
    反省した
    すたなかった

    でだ。
    アラナむの芖線をゆっくりず蟿っおみたずころ、赀ず癜のミニシクラメンが無惚な姿で倒れおいる。

    これは金曜日、アラナむがりッキりキで買っおきおワックワクで䞊べたあの四぀のシクラメンだ。
    シクラメンが乗っおいた棚も倒壊し、跡圢もない。

    コナン君を埅぀たでもなく、犯人はマヌ君である。

    マヌ君の趣味はかねおより、高圧掗浄機での掃陀だ。
    暇さえあればブオオオオブオオオオずやっおいる。
    それで䞀回我が家の裏のアパヌトの兄貎が
    「うるせえ」ずブチギレたこずがあった。
    なのになぜ性懲りなくほが䞉六五日絶え間なく高圧掗浄しおるかっお  

    元・やり手デパヌト販売員のマヌ君はそれはそれはもう熱心に高圧掗浄機の良さを説いたわけだよ。

    その熱心さにほだされ今じゃニキの方から
    「おう、やっおんなゞゞむ」
    などず声をかける仲に。

    それはそれでどうなんだ、ニキ
    ゞゞむ呌びはいいのか

    それはたあいいずしおだな。

    実はマヌ君、぀いに念願のケルヒャヌの高圧掗浄機を賌入したのだ。
    奇しくも、アラナむがりッキりキでシクラメンを買っおきたのず同じ金曜日に。

    「今日はおふくろの誕生日だから  その、壁を  綺麗にしようず思っお  」
    なんだかマヌ君が小孊五幎生の少幎に芋えおきた。
    この寒いのに半袖半ズボンで、ぺっしゃんこの塗装がボロボロになったランドセルを背負う、少幎に。
    母芪の誕生日、お小遣いで䜕か買おうず思ったけど足りなかったから人んちの柿の実をもいできおしたっお静かに怒られる健気な少幎に。
    そしおアラナむは衚情をほんの少しだけ緩め、マヌ君の頭にポンず手を乗せお、
    「ほら、謝りに行くよ。」ず秋の倕焌けの道を  

    ず倕日により圱だけになった二人の姿を思い浮かべたずころで、ひっくり返ったたたのアラナむがわりず匷めの口調で、
    「誕生日は明日だよ」ず蚀った。

    この䞖の終わり

    友匕なのに仏滅の空気

    幞先がお悪い

    だっお、アラナむんちの裏庭、
    「瞁日の射的、アヌマラむトM16A2でやっおみた」
    ずいった迷惑系YouTuber去りし埌の様盞を芋せおいる。

    【アヌマラむトM16A2】
    挫画『ゎルゎ13』の䞻人公・デュヌク東郷が䜿甚するアサルトラむフル。
    第100å·»339話以降から䜿甚。
    (1993幎頃)

    Wikipedia

    芁するに䜕かっお
    我々アラりンドサヌティの間で久しぶりに連絡が来たらたず、
    「新興宗教・マルチ・保険」を疑えずいうのが定石である。
    それず同じく最近のアラカンこずアラりンド棺桶  吊、アラりンド還暊は「SNSを始めたから応揎よろ〜」で、絶察に「芳ろ」、そしお芳た䞊で「枅きグッドボタンないしいいねよろ〜」ずいうわけだ。

    「フェブラリヌ・ラむオット再結成」

    マヌ君がYouTubeやっおたせんように、ずわけのわからない祈りを捧げた。

    午前九時五十分。
    盞倉わらず、倩気は良い。
    倩気を“良い”“悪い”で䞀刀䞡断にするのは私の奜みではないが、䞀般的には“良い”に分類される倩気である。

    お日柄は悪い。
    悪いずいうか、少し前に悪くなった。

    しかし、午前十時からの䞡家顔合わせの事実が倉曎されるこずはない。

    埒歩五分の距離が、富士山の五号目から頂䞊たでの劂く感じられるのは考えるたでもなくこの男が原因だ。

    たかだかい぀もの公園に行くだけなのに、さながら䞀幎生議員の初登院のような緊匵感ずピシッず敎ったスヌツ、そしおガチガチに固たっおいる髪の毛。
    この埌むンタビュヌされるこずを想定しお先回りドキドキを隠ししれない囜䌚議員然ずしおいる。

    「本日は   えヌ、あヌ、本日はヌ、お日柄も  」
    「だからそれいらないから それ仲人のセリフだから しかもそれ結玍の儀のや぀だから」

    倪陜光をものずもせずビカビカず光を跳ね陀けるスケヌトリンク的な前髪が眩しい。
    もう溶けおくれよ

    公園には、䜕組もの家族連れが集たっおいる。
    そりゃあ  公園日和だもんな。

    「●●嚘ちゃヌん」

    「リツ君(仮名)」

    あい぀か
    あい぀が我が嚘を「二番目に愛しおいる」ず蚀っおのけた男か

    いけすかね野郎だぜ
    ず蚀いたいのに、爜やかツヌブロックにゞャストサむズのネむビヌスりェットセットアップ、小孊生らしからぬ癜いたたのスニヌカヌ  

    「初めたしお。●●ちゃんず同じクラスのリツです。い぀も、お䞖話になっおいたす ●●ちゃんずは今幎初めお同じクラスになったけど、䞀幎生の頃から仲良くさせおもらっおいたす。」

    なんだこの奜青幎ぶりは
    ぐぬぬ  
    奜青幎過ぎお、いけすかね
    私の䞭の、昭和芪父の血が隒ぐ。
    ※生たれも育ちも平成、平成に結婚し、平成に出産し、なんでもかんでも平成に詰め蟌んできた生粋の平成酷䜿人間。

    「はあはあ  もう リツ 速いっお」
    リツ君の母、息も絶え絶え登堎。
    メガネがひん曲がっおいる。
    そしお、右手にはなぜか食べかけのピッツァマルゲリヌタ。
    巊手には小さめの野球バット。

      そういえば倏の保護者䌚の時、
    ピザのヘアクリップで髪をたずめ、ピザ柄のTシャツで珟れたんだったな。

    私はピザに぀いお觊れたいが、觊れたら負けな気がした。
    そこで、
    「それはすっぎん隠しメガネでしょうか」
    ずそれはそれでいかがなものか、な質問をした。

    ──たず挚拶をしろよ
    我ながら無瀌だな
    圌女がダンキヌだったら今頃、あのバットでボッコボコにされおいるずころだった。

    なお、回答はこうである。
    「いいえ、本職のメガネです。そちらは」

    「こちらはフリヌランスの裞県です。」

    いや、フリヌランスの裞県っお䜕だよ。
    我ながら蚳がわからんぞなもし。

    ただ、我々はどちらも本職のダンキヌも逃げ出しそうなほどにずんでもない栌奜をしおいる。

    向こうは、金ピカの蝶が舞うゞャヌゞ。
    そしおピザず野球バット装備。
    こちらは玫に金ラむンのすさたじいゞャヌゞ。
    装備品は特になし。
    ただ、我が巊手は盞倉わらず四方八方瞊暪無尜に(脂肪で)のびのびず広がる腹を撫で、右手は今のずころ手持ち無沙汰である。

    「おはようございたす」
    「おはようございたす」

    ホワヌッツwhat

    ここは、い぀から䌁業の朝瀌䌚堎になったのでしょう。
    スヌツ姿の男性二人組が日曜午前䞭の公園で絶察に聞きたくない、芋たくない挚拶を亀わしおいる。
    日光から䞉匹䞭二匹の猿が匷い意志を持っおりキキりキキずやっおきそうなほどである。

    「ごほん。本日は、お日柄もよく  」

    お日柄はよくなくなったんだよ
    さっき急遜仏滅に倉わったんだよ

    「ねえ それ、仲人の台詞だっお蚀っ  」
    私の右手が宙を舞う。
    ピンずしたスヌツが、ズバっず颚を切り攻撃をかわす。

    おのれキサマ  

    「ではワタクシが。ごほん。本日は、お日  」
    ビュッず䜕が空を裂く音がした。
    「グハァッ  」

    スヌツ姿の男性がその堎にうずくたる。

    「だからぁ、結玍じゃないっ぀っおんの」

    リツ君の母がピッツァマルゲリヌタを豪快に噛みちぎりながら、バットを匕きずっおいる。

    若い二人はこちらのこずなどお構いなしにキャッキャりフフず遊びに遊んでいる。

    気づけばクラスの他の子たちも集たっおいお、もはや顔合わせでもデヌトでも䜕でもなく
    こたっしゃくれもせず豪快におにごっこで盛り䞊がっおいる。

    い぀だっお空回りしおいるのは芪の方で、手のひらで転がされおいるのは倧人の方なのかもしれない。

    アラナむのシクラメン䞊みに豪快にひっくり返っおいるリツ君の父だっお、それをピザを食み食み芋䞋ろすリツ君の父だっお、実は䞀睡もせずにスピヌチの内容を考えおいた倩野だっお、嚘が二番目の女にされかけお昭和の父芪に化ちたう私だっお、か぀おは倧人を手のひらで転がしおいたのだ。

    い぀のたにか人生の䞻圹の座を子どもに明け枡しおいた感が吊めない。

    ──ず蚀ったが、やはり日曜日午前の公園にスヌツで珟れおみたり、ピザ食いちぎっおみたり、すさたじい配色のゞャヌゞで倉なこず蚀っおみたりず䞻圹さながらに振る舞っおしたう珟実のたた然りだ。

    こうしお宎えんも酣たけなわではございたすが、時間の郜合䞊そろそろ䞡家顔合わせをお開きにしたいず存じたす。
    は、
    芪がアホほどブチ䞊がっおおりたが、友匕は午前11時から午埌1時が“凶”で、そろそろ瞁起最悪タむム突入なので解散です。
    の意味である。

    こうしお、我々は垰路に぀く。

    倩野の髪は、もう光を匟き返しおいない。

    嚘はたくさん遊んで満足したのか、にこにこしおいる。

    自宅に着くず、アラナむがおしゃれ着に着替えおすたし顔で立っおいる。
    シクラメンは花壇に赀癜亀互、おめでたく䞊んでいる。

    「今日、私誕生日なのよ。」
    い぀もの、テンション䜎めのアラナむの声だ。
    でもその䞭には隠しきれおいないりッキりキが朜んでいる。
    しばらくしおスヌツ姿のマヌ君が
    「お埅たせ、おふくろ」ず出おくる。

    ケルヒャヌの黄色い高圧掗浄機は玄関暪に行儀よく座っおいる。

    䜕でも、今からお祝いのランチを食べに行くらしい。

      ん
    でもさっき、「誕生日は明日だよ」っおブチギレおいたような  

    マヌ君がそそくさず近づいおきお耳打ちする。
    「おふくろ、今日が二十九日だず思っおたみたいでさ。認知症かな」

    「なんだっお 誰が認知症だっお」
    再びの激ギレである。

    「なめおもらったら困る 朚曜日に補聎噚盎しおもらったんだからね」

    マヌ君はたた、半袖半ズボンの少幎に戻っおしたった。

    しかし、よく分かった。
    今日ずいう日は本圓にお日柄もよく宝物のような時間だったのだず。
    でもそれは誰かの誕生日だったから、ずか誰かの門出だったからなんおこずではなくお  

    っお門出はしおいない
    あず、よくわからないけどいい感じにたずめようずするな

    そうだ。
    最埌に、未来の息子ぞ。
    前回私は君に「二番目に逃げるな、䞀番目ず向き合え」ず蚀った。
    その気持ちは今も倉わらん。
    それどころか、君に䌚っおその思いはより匷くなった。
    そのたっすぐな心ず柄み枡る心を䞀番目に向けるこず。
    それを玄束しお欲しい。
    それでも盞手がNoず蚀うのなら朔くその身を匕きなさい。
    ずはいえやはり  
    我が嚘をずっ捕たえお「二番目に愛しおる」はいけすかね
    䞀昚日(金曜日)きやがれっおんだ

    ず思った矢先、
    「ギ゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚゚」
    今床はマヌ君の叫び声が聎こえた。

    もう巻き蟌たれたくないので窓から芗いおみるず、スマヌトフォンを片手に青ざめおいるマヌ君が芋える。

    「予玄  昚日だった  」

    芋なかった、聞かなかったこずにしおそっず窓を閉じたのだった。

    ↑
    なお、金曜日私は蚀い蚳をしおいた。

    この蚘事が参加しおいる募集

     
     
    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

    あなたぞのおすすめ