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『殎り殎られ詩人酒堎』ep.56「幻想巡査虚蚀」

    山際やたぎはも癜たぬうちに起き出しお、俺は襷の端を噛む。
    柄んだ氎で顔を掗い、口を挱ぐ。
    米を研ぎ、葉を刻む。
    歌人がゆるゆるず起き出しおきた頃、䞋宿の食堂には正しき朝选あさげの湯気が昇る。
    睡気県ねむけたなこの黒衣どもは空かしっ腹で寝がけた虫を吃驚びっくりさせおは笑っおいる。

    「  むペさん、ちょっずいいかい」
    孊生どものおかわり飯をがこがこず盛り付ける圌女の耳に囁いた。
    「なんだい  朝っぱらから  」
    俺の額を手の甲でぎしゃりずはたく。
    「んなもん埌でいいだろ」
    しゃもじず朚蓋の觊れ合う音は枩かく心地がいい。
    むペさんの肩は、想像以䞊に華奢だった。

    俺は孊生どもが飯に倢䞭なのを目芖しお、土間陰にその现身の女を蹲螞しゃがたせる。
    「なんの぀もりだい 朔ちゃん  」
    撥ね返すような目぀きずは裏腹に其の身は埓順である。

    「むペさん  目、閉じお。」
    「は」
    「『は』でねえよ。目ェ、閉じお。」
    「䜕考えおんだい あたしは四十しじゅう過ぎおんだよ  」
    「そしたら俺だっおい぀たでも十六、䞃でねえよ。」
    「じいさんだっお芋おんだよ  」
    「お空の䞊からな  」

    箞が茶碗に圓たる小気味のいい音、盥に萜ちる氎の音ね、お寝坊の怋鳥のさえずり  

    俺はむペさんの口元を芋匵ったたた跪いおいる。

    「朔ちゃん  あんた、腕䞊げたね。」
    むペさんは軜く喉を䞋ろすず、俺の右手から箞を奪う。
    そしお小鳥が぀いばむみたいにしお巊手の小鉢の䞭身を咀嚌した。

    「どうだい 惚れたかい」
    軜口が過ぎたかもしれない。
    次点、俺は土間に額を぀けお䌏しおいた。

    「ふん ただちょっず枋いね  」
    そう蚀いながらも、むペさんはすり鉢ごず抱えおいる。
    なんだい、なんだいず芗き蟌む黒衣どもを䞀蹎しお食っおいる。
    柿の癜和を。
    すっかり空になった鉢を俺は掗う。
    軒先では朱い顔した釣鐘が、盞も倉わらずゆらゆらず颚ず戯じゃれおいるのだった。

    俺は孊生を党郚芋送るず、さっさず庭を掃き、斜向かいの芪父の駄匁だべりを適圓に切り䞊げ郚屋ぞ戻る。
    枯草色の着物を脱ぎ捚おお、立襟たちえりシャツの释をしめ、玺絣こんがすりに袎を合わせ、倖套を肩に乗せ、頭には孊生垜子。
    目深にかぶれば前たでの俺だ。
    「でも  」
    鍔をわずかに䞊向けた。

    「あれ 朔ちゃん、お出かけかい」
    むペさんが珍しく玅差しお、めかし蟌んで飛び出しおきた。
    「ああ、ちょっず  」
    「たァた女ンずこかい 懲りない子だね」
    「そっちこそ、たたやきもちかい」
    俺はたた、、やっおしたった。
    鳩尟を突き䞊げられ、危うく胃ごず真面目な朝が転たろび出るずころであった。
    俺は咳払いしお反撃を仕掛ける。
    「むペさんこそ玅なんか差しお  男んずこかい」
    「あんたこそやきもちかい 飯食ったばっかなのに  じいさんずこだよ。あんなもん芋せ぀けられたんじゃ、石ぶち砎っお出おきちたうからね」

    道の角で笑い合う。
    むペさんず俺は反察方向に別れ別れに歩く。
    俺は面癜くっお幟床ずなく振り返っおは肩を震わせた。
    圌女の姿はあっずいう間に芋えなくなったが、俺は䜕床も振り返っおはい぀たでも笑い続けおいた。

    通りぞ出る。
    掃き残しの枯葉が小気味よく回転タアンしお、からから音を鳎らしおいる。
    品行方正ずは皋遠い、バンカラ野郎の倖套が煙草の匂いをなびかせる。
    それをどうにも矚たしげに眺める若い巡査おたわりが嚔くさめ䞉぀しお、顔赀らめた。

    「なあ、巡査。぀かぬこずを䌺うが  」
    「なんだい 曞生さんかい」
    「そんな倧それたもんじゃねえよ。昚日ここに突っ立っおたおめェさんみおェな服着た男、あい぀、八田はったっお名でないかい」
    「八田  」
    俺は肩の幅より脚を開いお腕を組み、眉間に皺寄せ、顎を匕き、制垜目深にかぶり盎しお巊目顰しかめ、右目だけで若い男を睚み぀けた。
    「ハハッ そりゃあ八田じゃねえや。矢田やだだ。」
    巡査はボロ玙をめくる。
    「んたァ、最近女に振られお倧荒れよ  」
    「ほお  女に  」
    「カフェヌの女絊だかなんだか。ちょうど眉目秀麗びもくしゅうれい  」
    巡査は瞬間硬盎した。
    「やい、曞生 おめェ、本圓は圹者でねェか」
    「はあ」
    男は掋刀サヌベルに手をかける。
    「たあ埅お。ああ、そうだ。おめェ、手柄欲しくねえか」
    「あ」
    「おめェがう぀぀抜かしたあのバンカラ  甘ェ匂いしおんだ  」
    「顔、近ちけェよ」
    「お 照れおんのかい」
    巡査は倉な虫を噛み朰したみたいな顔しお俺を芋る。
    「ありゃあ県粟ケシかもしんねえぞ  」
    「は」
    「鈍いな  おめェそんなんでよく巡査なんか  」
    「𠹭囉仿謚コロロホルムっお蚀いおえんだろ」
    「んだよ  よくわかっおんじゃねェか  」
    「たっさか   あんたしはったり蚀っおっずおめェをひっ捕えんぞ」
    巡査は恐ろしいこずを発し぀぀その実、倢芋る少幎の目で笑っおいる。
    「なあ、巡査  おめェ、掋刀サヌベルよりこっち䞇幎筆の方が䌌合いそうだな。」
    「そうかい  」
    急に静かになった巡査に手を振り俺はたた䞋駄をずっお行く。

    孊校の門が芋える。
    や぀れ果おたる぀぀じの垣が犿げおいる。
    その傍らで門番の枡瀬わたせが消し忘れの手持ち掋燈ランプで陜の光を照らしおいる。
    「やあ」ず声をかければ「よお」ず返す。
    俺は倖階段を十五も昇り、意気揚々ず八角圢の硝子倩井ぞず抜けた。

    たたあの扉の前に立ち、息をひず぀飲み蟌んだ。

    芋慣れた黒衣の孊生どもが革靎鳎らしお歩いおいる。
    色硝子の、青ず赀ずが怪しげに混じり合っおいた。

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    【創䜜倧賞2026】オヌルカテゎリ郚門゚ントリヌ䞭。
    調子に乗るず痛い目を芋る。
    倧正の文孊青幎・䞊原朔也はむペさんを、巡査を翻匄する。



    ↑
    実は恋愛小説郚門にもいる。

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    悪ふざけバンド小説読切。

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    【゚ッセむ】
    私は二月生たれです。

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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