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【完結枈】拝啓、川端康成君『ラテックス、そしお倏』ep.7

    「君、川端康成かわばたやすなり君はお奜きですか」
    「ダ  ダスナリ君」

    癜石はパンドラの匣はこの䞭身をひず぀匕き出しおはたじたじず眺め、戻しおはその次を匕き出しお、を繰り返しおいる。

    「ゆ  雪囜くらいなら  」

    正盎、奜きだの嫌いだのず倀螏みできるほど俺はダスナリ君のこずを存じ䞊げない。
    トンネルを抜けたら突然癜銀の䞖界が広がっおいたずか、幎䞋の女の子に恋をしおしたった幎霢のいかれた高校生の話を曞いた人、くらいにしか。
    ふいに蚘憶の衚局をずんでもない化粧を斜されたダスナリ君が逃げるように駆けおゆき、぀い吹き出しおしたった。

    「たさか、『トンネルを抜けたらそこは雪囜だった』、なんお蚀いたせんよね」
    「ふぁい」

    詊すような口調をしおおいお、癜石は朗らかに埮笑んでいる。
    パンドラの匣は口を開けたたた倧人しくしおいた。

    「正解は  」
    「正解は  」
    芖線はぶ぀かったたただ。
    頭の䞭でねちっこい意地の悪いBGMが流れる。

    「たあ、ご自分でどうぞ。」
    蚀えよ、蚀っおくれよ。
    コマヌシャルで匕き延ばしお芖聎率荒皌ぎする某クむズ番組よりタチが悪いぞ、癜石──
    䞀䜓どんなプレむなんだ  
    今すぐ掎みかかっお揺さぶりたい衝動の党おを拳に蟌めおスラックスの腿を殎った。

    「読み手の楜しみを奪っおはいけたせんから  」
    唇を人差し指で封じる癜石の埌ろの窓はもう、青くない。
    焊れる俺に構うこずなく、奎は再びパンドラの䞭身を吟味し始めた。

    「結構なご趣味で。」
    「そりゃあどうも。」

    さながら薫颚吹き蟌む電車の䞭で、吊り革片手に本のペヌゞを繰くるように。
    春の窓蟺で埮睡むように。
    俺のパンドラはすっかりこの男に手懐けられおいる。

    「あいにく今日は『雪囜』を持ち合わせおいないもので  代わりず蚀っおはなんですが。」
    癜石は鞄から䞀冊、本を取り出すず賞状でもよこすみたいにしお差し出しおきた。
    䞍芚にも俺は頭を䞋げおいる。

    「これ、きっず、お奜きかず思いたす。」
    「千矜鶎  」
    剥き出しの衚玙には「川端康成」ず曞かれおいる。
    「ダスナリ  君  」
    癜石は瞳で頷いた。

    俺がペヌゞをめくっおいる間も癜石はパンドラの䞭身を顔色ひず぀倉えずに眺め続けおいる。
    「マゞかよ  」
    癜石の顔面に貌り付けおいた芖線が床方向に萜ちかけた。
    だめだ。だめだ、だめだ。
    俺は文字に集䞭しようず本を持ち盎した。

    「簡単に蚀えば淑女ならびにそのご什嬢ず、ちょっず蚳ありの青幎が繰り広げる、道ならざる恋の物語です。」
    「え  」
    その暪顔は、憎たらしいほど涌やかだった。

    「悠来、開けるよ」
    そう蚀った時にはもう母は扉のこちら偎に立っおいる。
    「ノックくらいしろよ」
    俺は母の前に立ちはだかった。
    「なぁに、そんなに慌おお。」
    なんだ、その甘ったるい声は。
    なんなんだ、そのどろどろに溶けたバニラアむスみたいなペタペタした喋り方は。
    俺は蜘蛛を暡したアメリカン・ヒヌロヌの劂く手足を広げ、入り口を塞ぐ。
    「䜕しに来た  」
    芋逃さなかった。
    母の手が巊䞋で小刻みに振れるのを。
    「䜕っお  」

    俺は恐る恐る振り向いた。
    パンドラの匣は──
    癜石は俺の方にめくばせをしおいる。

    「そろそろお茶、なくなる頃かず思っお。」
    もう䞀床振り向く。
    どういうわけか膝を抱えた癜石が䞊県遣いに口角を䞊げおいる。

    「あ、あヌ。それはそれは、どうもありがずう。おかあさん、、、、、。ちょうど、取りに行こうず思っおいたずころだったんだ。」
    「熱でもあるの」
    母はさっきたで揺らしおいた巊手で俺の額に觊れた。
    「やめろっお。」
    その手を払いのけ、氎出しポットをひったくる。
    「ちょっず」
    「あずは倧䞈倫だから、うん。いいから。」
    俺は母の肩を掎み、回れ右をさせ背を抌した。
    薄手のTシャツの透けやら銖に垂れる埌れ毛やらがひどく俺を苛立たせる。
    「もう」ず憀慚する母を芋送っおから郚屋に戻るず、癜石はたた剥き出しの床板に戻っおいた。
    膝立ちになっお、窓の倖を眺めおいる。

    「癜石」
    茶を泚ぎ぀぀声をかけた。
    「玠敵なお母様ですね。」
    「どこが。」
    奎は䜕も蚀わなかった。
    俺は本の続きを読み始めた。
    癜石は西陜のせいで圱ず化しおいる。

    物語の䞻人公が劖艶な淑女ず眠りに぀いた頃、奎はようやく口を開いた。

    「お手掗いをお借りしたいのですが  」
    「え」

    パンドラの匣の䞭身が頭の䞭でばらばらず散らばり始める。
    栞なき文庫は音を立お、青幎の眠る郚屋を隠しおしたった。

    癜石は銖を傟げおいる。
    「わかった。぀いおく。」
    「䞀人で行けたすよ。」
    「぀いおく。」
    「もしかしお、花子さんでも出るんですか」

      花子さんよりもっずたずいもんが出るかもな。
    廊䞋を歩きながら、俺は䞀宀䞀宀の扉を睚み぀けた。

    「さっさず鍵閉めろ。」
    「はい、ただいた。」

    鍵の閉たる音を聎く。
    安息のため息を぀く。

    俺は䞀䜓䜕をしおいるのだろう。

    氎の流れる音が聎こえる。
    こんなにも暑苊しい氎の音を聎いたのは、埌にも先にもこの時だけだった。


    本日も【習䜜】です。
    やっず、ストックが远い぀きそうです。
    ず、曞いおいる今はストックになりそうなものをひず぀曞いおいる最䞭です。
    芁するに明日の分です。
    ふふふふふふふふ   

    ↑
    䞀応読切ですが、昚日のこれず繋がりたす。

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    癜石が遊びに来る線だけのマガゞン䜜りたした。
    あず二話くらいで完結したす。
    たぶんね。

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    倧正時代はこちら。

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    恋愛小説はこちら。

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    川端康成ず「パンドラの匣」、そしお拝啓ずいえば  
    いいえ、隙されおはいけたせん。

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    ラブラドヌルの匂いで肺を満たしたいアラりンドサヌティ。 9歳児に芪育おされおいる本末転倒人間。 文字に嫌われた人間が、し぀こく文字を掻き集める滑皜な姿を東京の片隅からお送りしおおりたす。 ※連茉小説も基本的には䞀話完結ずしお読める構成を目指しおいるので、おじけづくこずなかれ。

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