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All-In Podcast 解説:AIバブルで誰が吹き飛ぶのか──VC・プライベートクレジット・データセンターの行方(ゲスト: Mark Cuban)

    ▶ 元動画: https://www.youtube.com/watch?v=OY2Sjbjd_VE

    2026年7月22日

    概要

    今回のAll-In Podcastは、起業家・投資家のMark Cuban氏をゲストに迎えた対談です。ドットコムバブルを生き抜いた二人が、現在のAIブームがバブルなのかどうかを議論しました。Cuban氏は、今回の熱狂は当時のように一般の人々を巻き込むものではなく、むしろベンチャーキャピタル(VC)やプライベートエクイティ(PE=未公開株投資)、プライベートクレジット(民間融資)といった専門投資家層を直撃する性質のものだと分析しています。

    後半では、AIを企業に導入することが想像以上に難しいという実務的な現実、世界中の起業家にとって空前の好機が訪れているという見立て、そしてワールドモデル(世界の物理法則を学習するAI)やロボティクスといった次の技術の波について語られました。

    さらに、ヘルスケアへのAI活用、Cuban氏自身の投資哲学、アメリカ政治とアルゴリズム(推薦アルゴリズム)の関係、そして大規模言語モデルが情報の非対称性を減らす可能性についても踏み込んでいます。最後は二人の共通の趣味であるNBA(全米プロバスケットボール協会)談義で締めくくられました。

    今回のAIブームは「ドットコムバブル」とは違う

    Cuban氏は、現在のAIブームを1990年代末のドットコム(ネット)バブルとは本質的に異なるものだと見ています。当時は、売上も利用者もない企業が上場して株価が50%も100%も跳ね上がり、タクシーの運転手までがその話をしているような状況でした。しかし、今はそうした光景は見られません。

    したがって、Cuban氏によれば、このバブルが弾けても大多数の一般の人々に影響が及ぶことはありません。むしろ、直撃を受けるのはVCやファンド、PEだと言います。彼らはAnthropic(アンソロピック)やSpaceXといった投資先にすべてを賭けているからです。

    司会者は、証券運用の世界でも、かつては市場平均を上回れば良かったものが、今では隣のファンドを上回らないと資金が集まらなくなっていると指摘します。皆がAnthropicやSpaceXに全力で投資して成果を祝っている状況で、もし事態が悪化すれば大きな痛手になるという構図です。

    Cuban氏は、ベンチャー投資を10年余り続けてきた経験から、参入のタイミングを誤った投資家が次々と姿を消していく様子を目の当たりにしてきたと語ります。エンジェル投資家として500万ドル(約8億円。1ドル=162.47円換算)や1000万ドル(約16億円)の評価額で投資できた会社が、いつの間にか製品も出ていないのに4000万~6000万ドル(約65億~97億円)の評価額を要求されるようになったのです。

    データセンターとプライベートクレジットのリスク

    Cuban氏が特に懸念しているのが、市場を主導するGoogle($GOOGL)やMeta($META)といった大手企業が、数千億から数兆円規模の資金を借り入れている点です。すでにプライベートクレジット市場には問題が生じており、その上に、豊富なキャッシュフローを持つ巨大企業までもが、そのキャッシュフローをすべて設備投資(capex)に注ぎ込み、さらに社債で上乗せして借り入れている状況だと言います。これは「完璧を前提とした計画(pricing to perfection)」であり、実現は難しいと指摘しています。

    さらにCuban氏は、AIの価格性能曲線が改善して電力需要が抑えられるようになれば、建設中のデータセンターの多くが不要になり、ピックルボール(球技)のコートに転用されかねないと述べます。かつて光ファイバー(高速通信回線)への投資が過熱し、後に「ダークファイバー(未使用の回線)」が二束三文で売られた歴史を引き合いに出し、AIやデータセンターの分野でも同様の価格性能の急改善が起きない理由はないと語りました。

    司会者も、OpenAIが1000億ドル(約16兆円)を投じるなら、それが売上だけでなく利益として、しかもマージン(利幅)として戻ってこなければならないという前提の危うさに同意しています。

    AIの実装は想像以上に難しい

    Cuban氏は、AIを企業に導入することが誰もが予想したよりもはるかに難しいと強調します。テストのカンニングや個人の生産性向上といった使い方は簡単ですが、企業の基幹業務に組み込むとなると話は別だというのです。

    その根拠としてCuban氏が挙げるのが、Anthropicのフォワードデプロイエンジニア(顧客企業に常駐して導入を支援する技術者)の存在です。本来、汎用人工知能(AGI)が語られるほど賢いAIであれば、AI自身に実装方法を尋ねれば済むはずです。それなのに、Microsoft($MSFT)が6000人を採用し、AnthropicやOpenAIも導入支援人員を配置しているという事実こそ、AIの導入がいかに難しいかを物語っていると言います。

    Cuban氏は具体例として、ChatGPTに「特定の調査をして、そのレポートを毎週メールで送ってほしい」と頼んでも、それだけでは実行できないことを挙げます。JSON(データ記述形式)ファイルやコードが返ってくるだけで、結局はプログラミングの知識がなければ使いこなせないのです。しかも、失敗しても過去の失敗から学んで解決策を提示することもなく、ただ「失敗しました」と返すだけだと指摘しました。

    一方で、こうした難しさこそが巨大な機会を生むとも語ります。企業のあらゆる場所で発生するAI導入の失敗を修正できる人材、つまり「AIを理解し、基本的なコンピュータの素養がある人」には大きなチャンスがあるという見立てです。

    世界中の起業家にとって空前の好機

    Cuban氏は、投資先の一つであるLovable(ラバブル。指示だけでアプリを作れる開発ツール)を例に、起業家にとって今ほど良い時代はないと語ります。同社では週に77万件ものアプリケーションが作られており、利用の30%だけがアメリカ国内、エンジニアはわずか20%だといいます。ブラジルやインド、フランスなど世界中で使われているのです。

    Cuban氏は自ら試した例を紹介しました。「24時間の動画を記録できるボタンを持つ架空の会社を作り、特許と事業計画を作成せよ」という指示を出したところ、わずか12分で成果物が返ってきたそうです。従来なら試作に半年、立ち上げに1年かかっていた作業です。部品表(bill of materials)や調達先まで揃ったと言います。

    Cuban氏は、たとえその内容が間違っていても構わないと述べます。あらゆる事業計画は書かれた時点で間違っているものであり、それは方向性を示す思考の練習に過ぎないからです。だからこそ、AIが間違っていても、反復して学んでいけば良いという考え方です。

    世界中でツールを試す社員たち

    司会者は、自身の投資会社をAIファースト(AIを最優先する体制)にしようとしている経験を語ります。AIを積極的に使う社員と使わない社員の生産性の差は、かつてパソコンのオフィスソフトを使える人と紙のリーガルパッド(法律用箋)を使う人の差ほど大きいと表現しました。

    一方で、AIに習熟した社員が直面するのが「ツール渡り歩き」の問題です。あるツールで構築を始めても壊れやすく(brittle)、次のツールへと移っていくのです。司会者の会社では、社員がOpen ClawからClaude Co-work、そしてLovableへと乗り換えていったと言います。

    最終的に社員たちはLovableでベンチャー業務用の社内システムを構築しました。従来なら外注に年間200万~300万ドル(約3億~5億円)かけても着手しなかったような開発が、AIによって可能になったのです。ただし、Cuban氏は、根底にある大規模言語モデルが変化していくにつれてエージェント(自律的に作業するAI)が本来の設計とずれていく「ドリフト」の問題があり、それを管理する人手が結局は増えると指摘しています。

    ワールドモデルと動画がAIの次を決める

    Cuban氏は、投資先としてSynthesia(シンセシア)やAMI(Yann LeCun氏のワールドモデル関連プロジェクト)を挙げ、今後10年でAIはテキストと画像を超えていくと予測します。現在のAIはテキストと画像の上に成り立っていますが、将来はそうではなくなるという見立てです。

    その根拠として、Cuban氏は「ハイチェア(乳幼児用の椅子)に座った2歳児がコップを床に落とせば、母親が飛んでくると子供は分かっていて笑う。しかしAIには何が起きるか全く分からない」という例を挙げます。目隠しをして交差点を渡るとき、動画やAI搭載スマホよりも盲導犬を選ぶという比喩で、AIがまだ現実世界を理解していないことを強調しました。

    Cuban氏は、動画がAIの未来に不可欠だと考えています。投資先のMatter社は、衛星を打ち上げて地表の映像をスペクトル分析(光の波長分析)し、それをワールドモデルに変換しようとしているそうです。動画やワールドモデル、ロボティクスは膨大なトークン(AIが処理する文字列の単位)を消費するため、もしデータセンターへの投資について自分の予測が外れるとすれば、それは動画が原因だろうと語りました。

    AIとヘルスケア、そして自己管理型医療

    Cuban氏は、自身の健康管理にもAIを活用していると語ります。投資先のOpen Evidence(医療向けAI)を使い、鉄分のサプリメントと服用薬を同時に摂って不調になった原因を突き止めた経験を紹介しました。

    Cuban氏は10年以上前から定期的に血液検査を受けてトレンドを把握しており、当時は医師と議論になったといいます。Apple Watch($AAPL)やWhoop(ウープ。健康トラッキング端末)による睡眠・心拍・呼吸のデータに血液検査を組み合わせれば、自己管理型のヘルスケアが可能になると語ります。

    ただし、AIが医師を置き換えることはないとも明言します。医療の95%は推測であり、日々増える新しい知見をすべて記憶できる医師はいません。だからこそ、AIツールを使いながら共感力や観察力を持つ医師の価値はむしろ高まるという考え方です。

    政治・アルゴリズム・大規模言語モデル

    対談は、アメリカで高まる社会主義と資本主義の対立の話題にも及びました。Cuban氏は、DSA(Democratic Socialists of America=アメリカ民主社会主義者)の動きは基本的に地方レベルのものであり、New Yorkのような予算のある場所では実行しやすくても、全国を変えるものにはならないと見ています。

    Cuban氏が重視するのは、こうした動きを主導する人々がソーシャルメディアに長けているという点です。アメリカでは推薦アルゴリズムが投票行動を左右し、それを制する者が選挙を制すると語ります。Donald Trump氏も、New Yorkの若い政治家Zohran Mamdani氏も、その手法を熟知していると指摘しました。

    一方で、Cuban氏は大規模言語モデルこそが世界を救う可能性があると期待を寄せます。ソーシャルメディアの目的が利用者の関心を引きつけ続けることであるのに対し、大規模言語モデルの価値は正しい答えと知識を提供することにあるからです。信頼を失わないためにも真実を追求せざるを得ず、人々が政治について「誰に投票すべきか」を尋ねる先として、今後ますます頼られるようになるだろうと語りました。

    Cuban氏はまた、合法移民や優秀な人材の獲得に強い情熱を持っていると述べます。バスケットボールのチーム編成に例え、優秀な選手を獲得すれば他チームはその選手を得られないのと同じで、優秀な人材を惹きつけることの重要性を強調しました。

    州の競争とTexasへの移住

    Cuban氏は、New York、California、Texasのすべてで暮らした経験から、州ごとの財政の違いを語ります。Texasは市民一人あたりの支出がNew Yorkの半分ほどでありながら生活の質は高い一方、New Yorkは連邦財政への貢献がTexasより大きいという逆説もあると指摘しました。

    司会者は、CaliforniaのSilicon Valleyでは何も建てられない一方、Texasでは自分の牧場にソーラーファーム(太陽光発電所)を作れる自由さに驚いたと語ります。Austin近郊では建設が進み、3年連続で住宅価格と家賃が下がっており、創業者が家を持てるようになって重圧から解放されたといいます。

    Cuban氏は、初めての創業者にとってはSilicon Valleyに身を置く価値があるものの、二度目の創業者はTexasやNevada、Floridaで会社を作れば人材も集まると考えていると述べました。Silicon Valleyでは資金調達のステージばかりが話題になり、余計な気が散るというのが理由です。

    「カラー」による資産防衛

    対談の中で、AnthropicやOpenAIで働く社員が保有株の価値をどう守るかという話題も出ました。Cuban氏が勧めるのが「カラー(collar)」という手法です。これは、上値の一部を放棄する代わりに下値を保証する取引で、人生を変えられるだけの資産を得たなら、上振れの一部を残しつつ下振れを守るべきだと語ります。

    Cuban氏自身、かつてYahoo($YHOO)株を保有していた際、まだカラーという金融商品が存在しなかったため、Goldman Sachs($GS)に「自分が良くないと考えるネット株の指数」を作らせて空売りし、後に本物のカラーを組むまでのつなぎとしました。この空売りで数千万ドルの損失を出したものの、全体では史上まれに見る好取引になったといいます。

    AI時代こそ企業は上場すべき

    Cuban氏は、今回のバブルがプライベートキャピタル(未公開株資金)に強く駆動されているからこそ、SpaceXやOpenAIのような大型案件ではなく、1億ドル(約162億円)規模のIPO(株式公開)がもっと多く出てくるべきだと主張します。

    その理由は、AIが業界を破壊していくとき、破壊する側の企業は必ずしも巨大企業である必要がなく、優れたドメイン知識やデータを持つ小さな企業を買収する場面が増えるからです。株式という通貨(currency)を持っていれば、そうした企業を機動的に買収できますが、通貨がなければ非常に高くつく資金を新たに調達しなければなりません。だからこそ、業績が良いうちに上場して株式という武器を手にしておくべきだというのがCuban氏の助言です。

    司会者は、Lina Khan氏(前FTC=連邦取引委員会委員長)の下でM&A(合併・買収)が実質的に凍結され、4年間にわたり大企業の買収が止まっていた事情にも触れました。しかし、AIが確実に業界を破壊していく以上、機動的な買収に備えることの重要性は変わらないと二人は一致しています。

    NBA談義──アペイルールとチーム編成

    対談の締めくくりは、二人の共通の趣味であるNBAの話題でした。かつてダラス・マーベリックスのオーナーだったCuban氏は、司会者が支援するニューヨーク・ニックスの優勝を祝福します。

    二人は、新しい「セカンドアペイ(second apron。チーム総年俸に対する厳しい上限規定)」がリーグに競争の均衡をもたらしたと分析します。3人のマックス契約選手(最高額の契約選手)を抱えることができなくなったため、どんな強豪チームもいずれは選手を放出せざるを得ず、連覇(three-peat)は極めて難しくなったというのがCuban氏の見立てです。かつてないほどチーム編成の戦略と運が重要になっていると語りました。

    また、チームの評価額が観客動員や勝敗ではなく、ストリーミングサービスの加入者数によって決まる時代になったという指摘も印象的でした。試合の視聴率よりも、PeacockやESPN($DIS)がどれだけ加入者を獲得し、そして維持できるかが評価額を左右するのです。

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