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薄暮のドライブ 【ショートショート0001】

    薄暮のドライブ
    助手席で彼女が足を組み替えるたび、網タイツ越しのふとももが薄暮の車内に浮かび上がる。信号で止まるたび、僕の左手はハンドルから離れそうになって、慌てて握り直す。こんなに近くにいるのに、彼女の存在がやけに遠く感じるのは、きっと初めて見るその網タイツのせいだ。
     「どうしたの?」
     彼女が小首をかしげて僕を見る。
     「いや、別に」
     ごまかすように前を向くけど、窓に映る自分の顔が、思いきりニヤけているのがわかった。
     「ふーん」
     彼女は小さく笑って、スカートの裾を指でつまむ。
     「今日、なんでそのタイツなの?」
     思いきって聞いてみた。
     「なんとなく。ドライブだし、ちょっと特別な日にしたかったから」
     彼女はそう言って、窓の外に視線を投げる。
     信号が青に変わり、車が静かに走り出す。街の灯りがフロントガラスに流れて、二人だけの小さな世界が生まれる。
     「どこまで行くの?」
     彼女がぽつりとつぶやく。その声は、ただの目的地を尋ねるものじゃないことが、すぐにわかった。
     「どこまででも」
     僕はそう答えて、彼女の手をそっと握る。彼女は驚いたように僕を見て、すぐに微笑んだ。
     言葉はいらない。
     ただ、これから先のことを想像するだけで、胸が高鳴る。
     網タイツのふとももも、彼女の息遣いも、全部が新しい夜の始まりを告げていた。
     僕たちはまだ、どこへ向かうのかも知らない。
     信号がまた赤に変わる。
     今度は、僕の左手が自然に彼女の手を探した。
     夜の街を、二人の未来を、静かに走り抜けていく。

     
     
    日常の隙間に潜む、切ない恋と不思議な出会いのショートショートを綴るライター。本好きが高じて、星空の下の告白や清流の囁きをnoteで紡ぎ始めました。心が揺れる一瞬を、あなたに届けたい。 X: https://x.com/yuichi_asama フォロー・感想お待ちしてます。

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