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鮨屋のマドモアゼル


    そこはカウンター八席だけの小さなお鮨屋さん。
    我が家から近く、大将が気さくで腕も確かなのでたまのお鮨はここでと決めている。
    その日は小雨が降っていて(何故かお鮨を食べる日は雨が多い)少し冷え込んだ秋の夜だった。

    私と夫と義弟の右隣りには仕事帰りらしい女性が二人、左隣には年配のご夫婦と外国人女性が座っていた。
    私たちと女性2人組は大将おすすめの季節のコース、左の3人連れはお好みで握って貰っているようだった。
    3人連れはパッと見、日本に遊びに来た外国の女性を年配のご夫婦がお鮨を食べに連れてきた、みたいな感じだった。

    その外国の女性は30代くらい。ブルネットの髪にヘーゼルの瞳が綺麗な人で、連れのご夫婦と美味しそうに日本酒を飲んでいる。
    そして、私達がビールで乾杯のあと、大将おすすめの日本酒を呑んでいると、
    「そのお酒美味しいですか?」
    と流暢な日本語で突然話しかけてきた。

    (その時のお酒)

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    「美味しいですよ。柔らかくて優しい味わいです。十四代というお酒で有名な高木酒造と、両関酒造の技術交流からできたお酒だそうです」
    嬉しくなってそう答えると
    「じゃあ、私も次はそのお酒で」となり、その後思いがけず話が弾んだ。

    彼女はニューヨーク生まれ。今はパリに住んでいてレストランやBARに置く日本酒をプロデュースしているという。
    「この子、昨日パリから来て、明日から富山、石川、広島、岡山、山口の蔵元を回るんですって。若いって良いわねぇ」とシルバーヘアが優雅なご婦人が言うと「若くはないですよ。もう四〇をだいぶ過ぎました」と答えた。
    え? そうなの⁉︎
    いやいやどう見てもマダムではなくて、素敵なマドモアゼルでしょう。

    日本酒通のマドモアゼルは、ご夫婦がニューヨークに住んでいたときに知り合ってから20年以上の付き合いで、今はシンガポールとタイ在住の2人の娘さんとも親友だと言う。
    「でも、娘より可愛いの」と日本のマダム。無口な旦那さまもニコニコと2人の会話を聴いている。

    その後も、私たちが頼んだお酒に興味津々で、同じものを頼むマドモアゼル。その前にもずいぶん呑んでいたみたいなのに……酒豪だ。
    しかも、白ワインを呑んでいたマダムまで、
    「私にも皆さんと同じお酒を」と😆
    そしてつられて旦那さまも🍶

    (以下、私たちとマドモアゼルたちが呑んだお酒)

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    みんな大好き。静岡の銘酒磯自慢
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    石川県吉田酒造の手取川「秋」
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    岩手県赤武酒造の季節限定「琥珀」

    今回初めて飲んだAKABUの「琥珀」
    アルコール度数13度なので軽やかな口当たり。
    でもコクがあってとても美味しかった。次にお店に来たときにはきっともうないかも、と思うとついついおかわりしてしまった。
    お隣のマドモアゼルたちも、お鮨をさらに頼みながら果てしなく呑んでいる。

    そのあとは、明日から彼女が行くというご当地で絶対食べておくべき?名物や、とくに好きな銘柄の話をしたり、富士登山や屋久島に行きたいというマドモアゼルに、この夏、富士登山を経験した義弟が色々アドバイスしたりと、袖擦り合うも多少の縁で、とても楽しいひとときを過ごせた。
    それもこれも、彼女が好奇心旺盛で、日本語がとびきり上手だったおかげ。今は翻訳機を使えば何処へ行っても不便はないけれど、やっぱりじかに目を見て話せるって良いなと思う。
    海外に行って、その国の言葉でその国の人と語り合いながら楽しく食事する。彼女を見ていると、私も英語をもっとちゃんと話せるようになっとけば良かったとつくづく思う。
    そうすれば、あの、香港事件も起こらなかった。
    今も語り継がれるその事件とは……

    友達3人と香港に行った時、入った飲茶レストランのメニューには写真が載っていなかった。記載された文字も繁体字の中国語でよくわからない。
    でもそこは点心が有名なお店なので、とりあえずメニューの1番最初に載っていたものから、適当に6皿頼んだ。とてもお腹が空いていたのだ。
    にこやかに注文したのに、ウェイトレスさんはなぜか眉間に皺を寄せ、怪訝な顔で私たちを見ていた。
    そして最初はたぶん広東語で、次は英語でなんか喋った。
    「Is this okay?」
    「yes」
    「Are you sure this is OK? 」
    「yes!yes!ok!ok!」
    (お腹ペコペコ。早く注文とってって!)
    ウェイトレスさんは「ア、ハーン?」みたいなそぶりで軽く首を竦め去って行く。


    そして20分後、私たちのテーブルの上に所狭しと並べられたのは……胡麻団子にカスタード饅。2個セットで出てきた可愛らしい金魚やら小鳥やら、ウサギの形をした点心のおなかにはあんこがぎっしりと詰まっていた。

    「え!!!普通デザートってさ、メニューの1番最後なんじゃないのぉ???」と嘆いても、あとの祭り。

    あの時、私たちがもっと英語を話せていたら、ウェイトレスさんにおすすめやら何やら、メニューの内容を詳しく聞いていただろう。
    空きっ腹に、こってり甘いデザート点心をしこたま食べるはめにはならなかっただろう。
    ウェイトレスさんはきっと厨房に注文を通すとき、「あの4人組、いきなり甘い点心6皿も頼んでるのよ。絶対間違って注文したわよね。でもオッケーオッケー言ってるし」と呆れていたに違いない。
    そんなことを思い出しながらも、楽しくお鮨を食べた夜でした。

    (その日のメニュー)

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    たらば蟹と白魚と栄螺と水茄子
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    お刺身盛り合わせ
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    西京焼きとはまぐり
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    イクラとウニの子丼
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    とうもろこしとモロコ
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    蟹とフカヒレとイクラの茶碗蒸し
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    カワハギとイカ
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    キンメ
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    イワシ
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    車エビと卵焼き
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    中トロ
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    洋梨のタルト


    (やっぱりデザートは最後だよね😆)



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    yumi

     
     
    yumiです。 誕生日の記念にノートに挑戦しました。 現在、保護猫3匹と料理好きの夫と暮らしています。 食べ歩き、旅、ドラマ鑑賞、下手くそゴルフ、ポケモン 介護、そして日々の暮らしの中にある「なんじゃそれ?」 な出来事を気ままに綴っていきたいと思います。

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