
箱もない『Paul Is Live』が、2002年の東京ドームを連れてきた
激安で落札した半端品の一箱を探っていたら、その中に Paul McCartney の『Paul Is Live』が混ざっていました。箱もスリーブもなく、CDのブックレットと盤だけという、いかにも半端品らしい姿です。
ブックレットの Abbey Road の横断歩道を渡るあの構図を目にした途端、あっ、これ、そういえばあったなぁ、と記憶が蘇りました。1993年に出たときは聴かずにいたので、中身の思い出ではなく、ジャケットの懐かしさだけが急に戻ってきた感じです。タイトルは 1969年の「Paul is dead(Paul 死亡説)」という都市伝説を自分でネタにしたもので、愛犬の Martha まで一緒に歩かせているところが、いかにも Paul らしい悪ふざけです。

そして不思議なことに、この1枚は、2002年11月に東京ドームで見たライブの記憶まで連れてきました。ステージに Linda McCartney の姿はなく、前に並ぶのは Paul を含めて4人で、後ろには黒人のドラマーがいるという編成でした。客電が少し落ちて、アンビエントな曲が流れる中、サーカスのような余興が始まった開演前の空気もよく覚えています。曲間のおしゃべり(MC)は同時通訳でスクリーンに日本語字幕が出て、もう帰らないと電車なくなるよ、と言って笑わせるのですから、日本人相手なのに芸人並みでした。ハイライトは Live and Let Die で、Wings と Beatles の曲がずらりと並ぶ中、あの曲の迫力は今でも思い出せます。
ドームは巨大で物販には近づけず、いつもは取ってある半端な紙切れの半券も、なぜかこの日だけ見当たりません。行ったのは11日、13日、14日のどれかなのですが、どの日だったのかは分からないままです。それでも、同じ曲を同じ順番で演奏しながら毎晩ちゃんと盛り上がる Paul のライブはほぼ鉄板だということを、あの夜に体で覚えたのだと思います。箱も何もない半端品の1枚が、ずいぶん多くのものを運んできてくれました。