
初心者は、有料noteを書いてはいけない/タイムセールのボタンを押したら、もう戻れなかった
ステラ・ミリア「ソル、見てください。30記事書いたので、ついに有料デビューです。500円の記事を、タイムセールで100円。これなら絶対売れますよね」
ステラ・ミリア「もし評判が悪かったら、すぐ無料に戻せばいいだけですし」
ソル「……戻れないワン」
ステラ・ミリア「え?」
ソル「オレは戻れなかった。だから、記事ごと消したんだワン」
ソル(太陽)とステラ・ミリア(愛の星)。師匠と弟子の問答が、今日も始まる。
古びた喫茶店の隅の席。ずっとnoteを書き続けているのに一向に芽が出ない弟子と、かつて同じ道でもがき、今は涼しい顔でコーヒーをすする師匠が、今日も向かい合っている。師匠は犬言葉を使うネコで、口は悪いが面倒見はいい。弟子が本当に困っているときだけ、真剣な顔になる。弟子は素直で、悔しがり屋。師匠の言葉を右から左に流さず、ちゃんと持ち帰って考えるタイプだ。
ソルはカップを置いた。いつもならここで「冗談だワン」と笑うところだが、今日はそれがない。ステラ・ミリアはスマホの画面を伏せた。投稿ボタンの上で止めていた親指が、少し汗ばんでいる。
ステラ・ミリア「消したって……売れなかったんですか?」
ソル「売れたワン。一人だけな」
ステラ・ミリア「じゃあ成功じゃないですか」
ソル「通知が来た瞬間は、跳び上がるほど嬉しかったワン。知らない誰かが、オレの文章に百円を払ってくれた。その夜は何回も売上画面を開いた」
ソル「でも、期待したような反応は返ってこなかった。そこで初めて、買った人の目で自分の記事を読み返したワン」
ステラ・ミリア「……どうでした」
ソル「まだ、お金をもらっていい段階じゃなかった。少なくともオレには、そう読めた。胸の奥に、じわっと罪悪感が湧いてきたワン」
ソル「それで慌てて無料に戻そうとした。買ってくれた人に申し訳ないし、せめてこれ以上は誰にも売りたくなかった。ところが、動かせなかったワン」
ステラ・ミリア「動かせない? 自分の記事なのに?」
ソル「タイムセールは、ただの値下げボタンじゃないワン。『通常500円のところ、今だけ100円』と見せる。これは二重価格表示といって、景品表示法のルールがかかる。本当にその500円で売っていた実績がなければ、読者をだます表示になりかねない」
ソル「だから運営は法律を守るために、本来の値段でどれくらい売っていたかをセールの条件にしているし、セールが始まったら終了日すら勝手に動かせないようにしてある。ちゃんと理由のある仕組みなんだワン。オレはそれを一行も読まずに、ボタンを押していた」
ステラ・ミリア「……それで、消した」
ソル「そう。逃げたんだワン。買ってくれた人がいる記事を、書いた本人が黙って消す。いちばんやっちゃいけないことだった」
ステラ・ミリア「じゃあ、どうすればよかったんですか」
ソル「無料に戻すんじゃなく、有料のまま新しく売るのだけを止める。販売停止ってやつだワン。買った人の手元は守って、これ以上の被害を出さない。やり方は運営のヘルプで必ず確かめろ。オレみたいに、知らないまま触るな」
ステラ・ミリアは唇を噛んだ。
ステラ・ミリア「でも、情報商材の人たちって、売ったら終わりじゃないですか」
ソル「売り逃げで済む世界なら、オレもあの夜は眠れたワン。でもnoteは違う。買った人は、明日もオレの名前を見る。次の記事のタイトルの横に、同じアイコンが並ぶ。そのたびに『あの百円の人だ』と思われる場所で、オレたちは書いてるんだワン」
ステラ・ミリア「じゃあ、私はいつ有料を出せばいいんですか。ずっと無料で書き続けろってことですか」
ソル「『いつか』じゃなくて、条件だワン。読んだ人が『払ってよかった』と納得できるものを、自分の手で差し出せるようになったとき。それまでは出すな」
ステラ・ミリア「その『なったとき』が、自分じゃわからないんですよ」
ソル「だから目安を言うワン。最低でも3ヶ月。または100記事。そこまでは、収益を焦って有料に手を出すな」
ステラ・ミリア「100記事……今の3倍以上じゃないですか」
ソル「もちろん、もっと早く出していいやつもいる。何年も書き続けてきた上級者や、アカウントを作り直してきた転生者だワン。あいつらは、もう100記事分の筋肉がついてる。でも初心者は違う。オレも違った」
ステラ・ミリア「じゃあ、その100記事のあいだ、私は何をすれば」
ソル「読むんだワン」
ステラ・ミリア「書くんじゃなくて?」
ソル「書くのは当然。それと同じくらい、長く続けているクリエイターの記事を読め。無料記事もいい。でもできれば、有料記事を自分の財布で買って読め」
ステラ・ミリア「お金を払う側に回るってことですか」
ソル「そうだワン。500円を払った直後の、あの少し身構えた気持ち。元を取ろうとして一行ずつ読む目。その目で読まれることを知らないやつに、価値のある有料記事は書けない。オレは買う側をほとんど知らないまま、売る側に立った。順番が逆だったんだワン」
ステラ・ミリア「でも、読むだけで自分の悪いところって、わかるものですか」
ソル「わからないワン。だから、もうひとつ。お前の文章を遠慮なく斬ってくれる人のそばにいろ。褒めてくれる人じゃない。忖度しない人だワン」
ステラ・ミリア「……そんな人、どこにいるんですか」
ソル「探せば、ちゃんといる。オレもそうやって見つけたワン」
ステラ・ミリアはしばらく黙っていた。それから伏せていたスマホを表に返し、有料の設定を外して、下書きに戻した。
ステラ・ミリア「悔しいです」
ソル「それでいいワン。悔しいうちは、まだ書けるワン」
ステラ・ミリア「代わりに今日は、誰かの有料記事を一本買って帰ります」
ソルは何も言わず、冷めたコーヒーを一口すすった。口の端が、少しだけ上がっていた。
ここからは、ソルではなく私自身の言葉で書かせてください。
ソルが話した失敗は、私の話です。たしか500円の記事を、タイムセールで100円にして出しました。お一人の方に購入していただきました。そして私は、その記事を消してしまいました。
購入してくださった方へ。大切なお金と時間をいただいたのに、ご迷惑をおかけしました。本当に申し訳ございませんでした。この場を借りてお詫びいたします。
あの失敗のあと、私はひとりで書くのをやめました。いまは、かつぶしさんとネロ王子、おふたりのメンバーシップに入っています。
かつぶしさんを知ったのは、わかモンさんの記事がきっかけでした。寄り添って伴走してくれる人だと紹介されていて、入ってみたら本当にその通りでした。直接アドバイスをくださるし、悪いところは忖度なく指摘してくださる。ソルの言う「遠慮なく斬ってくれる人」は、私にとってかつぶしさんです。
ネロ王子のメンバーシップには、正直に言うと、イケメンだから入りました。過去にイケメンにひどい目に遭ったことがあるので、最初はかなり警戒していました。ところが、中身までイケメンでした。身構えていた自分が、少し恥ずかしいです。
書く側にしか立っていなかった頃の私は、誰かにお金を払ってもらうことの重さを知りませんでした。自分のお金でメンバーシップに入り、学ぶ側に座ってみて、ようやくその重さが少しわかってきた気がします。
私はまだ初心者です。だからしばらく、有料記事は出しません。仕組みとルールをきちんと理解して、読んでくださる方に「払ってよかった」と思っていただけるものが書けるようになってから、もう一度だけ、あのボタンの前に立とうと思います。
最後にひとつ聞かせてください。あなたが初めて有料記事を出したのは、何記事目でしたか。まだの方は、何記事目で出すつもりですか。コメントで教えてもらえたら、次のソルとステラ・ミリアの話の参考にさせてください。
ステラ・ミリアが100記事にたどり着くまで、スキとフォローで見届けてもらえたら嬉しいです。
なんと、わかモンさんがこの記事を紹介してくださっています。
是非一度見ていただく事を、お勧め致します。
わかモンさんの貴重なサブスタック時代の話もあるワン!!
こちらです。