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口元は目ほどに物を言う

     スマホに目を落とす。auペイの残高を確かめるためであった。しばしの真っ暗な画面に……とてつもない化け物の顔を見た!

     なんのことはない。無防備な己の顔が、些か仰角に浮かび出たまでの話である。

     不機嫌と言うか……この世の終末を垣間見たにも似た、やり切れない顔貌なのだ。

     俺は普段……こんな表情をしていたのか!
     ショック尋常ならず、咄嗟に目を閉じ、改めて自らの顔を凝視する。
     こんな顔の奴が近くにいたら……それだけで不愉快になることだろう。

     無表情と言うより、世の中の全てを拒絶し、独断と偏見の独房に精神を閉じ込めてしまった志願囚人のようであった。

     まあ、よくよく検証して見れば……顔面が絶望の重力に敗北して、その口角は諦めにも似て力なく垂れ下がっている。

     要は、「笑顔」とは真逆の顔なのだ。
     思えば……最後に笑ったのはいつのことだろう?
     友人なり仲間に恵まれている人ならば、ほぼ毎日、何気ない会話の中で、ごく自然に笑顔を作っているはずだ。
     しかし、僕はここ何年もの間……孤独癖という事情こそあるが、全くご無沙汰なのだ。
     もちろん一人でいても、アニメを見ながらついニタつくことはあっても、あとはせいぜい苦笑や冷笑の類いに他ならない。

     まず、単純に思ったことに……少しは他人から見て気持ちのいい表情になりたいものだと。すなわち、口角を引き上げ、わざとらしくない程度の微笑みを湛えたような表情になりたいものだと……

     その瞬間、僕の頭に女神のこどく閃いた顔があった。
     そう。僕のnoteでは毎度お馴染の中学時代好意を寄せていた順子さんの顔であった。

     順子さんの魅力については、これまでにも綴ってきたと思うが、その第一にあげたいのこそ、始終湛えていたごく自然な微笑みであった。
     口角が引き上がっていて、優しさを含んでいるかのような表情。

     たぶん、僕の美意識はこの順子さんの口元から生れたと思っている。
     そう。僕は女性の美しさの基本を、断然「口元」に置いているのだ。
     一般には、「目は口ほどに……」を信じているのか、目に重点を置く向きが多い。
     アイライン、つけまつげ、時には整形。
     中には、せっかくの神秘的な一重の瞼を、ただ見開いているだけの二重に整形してしまう女性も多いが……僕としては残念としか言う他ない。

     反面、口元に関しては目ほど扱いに重点が置かれていないのだろうか。
     確かに、ルージュ等での演出はあるが、その表情となると、はなはだ心もとないように感じてしまう。

     街中や車中で……一人でいる人を観察してみれば、老若男女問わず、たいてい口角は下がり気味で、僕ほどではないにしても、どこか不機嫌そうに見える。
     そんな時でも、偶々だろう知り合いと鉢合わせした瞬間……俄然明るい笑顔に転調する瞬間も何度か目にしてきたものだ。

     確かに、今の世の中……仲間とのバカ話でもする以外、心から笑えるような状況ではないのかも知れない。

     なら、いっそ……そんな世の中にしてしまった奴らを笑い飛ばしてやるのも一興というものだ。
     口角を引き下げ、不機嫌な顔を作ってしまうということは、とりも直さず……無意識の裡にそんな世の中を容認し、自らの無力を受け入れてしまう証左なのかも知れない。

     少しでも反骨精神を持ち、なにくそ! という思いがあるのなら……仏頂面の白旗だけは掲げたくないと思う。

     無理にでもいい。痩せ我慢の強がりでも構わない。
     僕は今後……意識して、順子さん張りの「微笑み」を湛えて生きたいと思う。

     

     
     
    左脳デジタルの時代ながら、基本、右脳アナログ人間です。 シンギュラリティーが目睫に迫ってるとはいえ、いっそ迫っているからこそ言葉に魂を込めて、文章を綴ってゆく所存です。 雑文、エッセーから小説まで……綴ることしか能のない身ですが……

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