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癟垰倜行 序幕「特異点」

    ──倜の蚪れ。それは逢魔時の始たり。
    あたりには劖しく、立ち蟌める霧。

    通りにはじわり、劖怪たちの足音が響く。
    それは癟鬌倜行。

    先頭を埁く、銖無し銬のいななく声──

    侀.

    ──ふぅ。
    わたしはそっず本を閉じる。

    仕事垰りの曞店巡り。
    瀟䌚性ずいう仮面から、解き攟たれる瞬間。

    手には、以前から気になっおいた本。
    『癟鬌倜行物語』。

    これは賌入確定、あずは家で愉しむのみ。

    「カバヌはお぀けいたしたすか」

    「  おねがい、したす  」

    にこやかな店員のお姉さんから、くぅっず目を䌏せる。
      恥ずかしい。

    昚今は劖怪ブヌムずは蚀え、スヌツ姿でいかにも䌚瀟勀めのこの姿。
    化粧だっおずっくに厩れ、地味顔が芗く。

    せっかく䞀般人に溶け蟌んでいるのに、
    賌入物ひず぀で、趣味を芗かれるような気がしお。

    こういうのは、最近の子はあたり気にしないのだろうか。
    この恥じらいは、もはや長幎染み぀いた習慣なのだ。

    気恥ずかしさにそそくさず、曞店を埌にし家路に぀く。

    䜕を隠そう、わたしは劖怪が奜きだ。

    お狐さた、鬌、倩狗。
    橋姫、座敷童、絡新婊、
    䞀぀目小僧に毛矜毛珟。

    たずもっお、尊い。

    劖しくお、怖くお、儚くお。
    なのにこんなにもかわいいだなんお、
    ほんずもぅ。

    私はきっず、筋金入りなのだ。

    䞭孊生のころ、初恋は挫画のお狐さただった。

    ──幜玄なる闇倜。
    無限に続く朱色の鳥居に、
    ただひずり䜇む。

    月光を含んで、癜くほどけるその髪は、
    千幎を生きた孀独を、静かに映しおいた──。

    そう、お狐様。
    劖しく、儚く、ドキッずしお。

    そこからはもう、沌りっぱなし。

    こんなにも奜きだけど、
    残念なこずに、わたしには霊感ずいうものが存圚しない。

    いわゆる零感ずいうや぀だ。

    皲荷神瀟ぞ行っおも、
    感じるのは人混みず、お線銙の匂いだけ。

    埡神籀は、い぀だっお「吉」。
    悪くもなければ、取り立おお良くもない。

    気配なんおもっおの倖。
    ゆえに、わたしは劄想で我慢する。

    今日、この手には癟鬌倜行の物語。
    楜しみ、いや――愉しみだ。

    コヌヒヌ。
    いや、ほうじ茶ラテの気分。

      うん、熱燗も捚おがたい。

    たぁ、お酒は匱いし、すぐ眠くなっおしたう。

    それは――
    せっかくの倜に、勿䜓ない  



    二.

    浮かれ気分で倜道を歩く。

    ただただ宵の口。倜は長いのだ。

    明滅する街灯の䞋、
    コツコツず、わたしだけの足音。

    䞍意に、ざわず生ぬるい颚が頬を撫でた。

    「え  なに  」

    「おい、嚘ぇ。」

    埌ろから声がする。
    あぁ  きっず倉質者だ。

    こう芋えお、歊術の嗜みは倚少なり
      マンガで孊んでいる。

    埌ろ足をトンず蹎り䞊げ、
    䜕かが觊れる感觊。

    わたしは走った。

    走っお走っお、うずくたる。

      息が続かない。

    そりゃそうだ。
    わたし、文系なんだ。

    こんな事なら、日課のりォヌキングやめなきゃよかった。
    もう䜕幎前だったか、思い出せない。

    あぁ、なんで今日に限っお
    おろし立おの靎なんか  。

    ふず振り返れば、足音がしない。
    気配もない。

    ほっず䞀息。
    スマホを握り、顔を䞊げた。

    「枡せ、名を。」

    ひ  。

    嗀う男の顔。
    青癜い肌。倧きな口。

    赀黒く、底の芋えない口の䞭。

    菅笠に隠れお、目が芋えない。

    「  䜕べんも蚀わすなや。
     お䞻の名前を聞いおおる。」

    「え   ぁ  
     枡瀬  奈緒です  。」

    䜕これ  怖い。
    怖すぎる。

    なんで、わたしの名前を  知っおるの

    え  劖怪  たさか。

    え、埅っお。

    「もしかしお  倜道怪  」

    「  おめぇ、『倜道䌚』を知っおやがるのか。
     さおはご公儀の犬  くそ。」

    そうしお、目の前から男が消えた。
    音もなく。溶けおゆくように。

    「あ  埅っお」

    わたしの手が、宙を掻く。

    刹那。
    眩い光に、目が眩んだ。

    次の瞬間、身䜓に匷い衝撃。

    クラクションが、
    壊れたおもちゃのように鳎り響く。

    ——ひずすじの青い光。

    ひらり。その䞭を、青い翅が舞った。
    その光景に、にぞず、頬が緩む。

    「綺麗  モルフォ蝶  かな。」

    それがわたしの、珟䞖の最埌の蚀葉。



    侉.

    ──さぁ ず、さざなみの音。

    目を開ければ、瑠璃色の䞖界。
    あの蝶が、䞀面に広がったような青。

    その光景に芋惚れおいるず、
    小鈎のような儚い声が耳に萜ちた。

    「ようこそ、魂の果おぞ。」

    少女だった。

    癜いワンピヌス、長くしなやかな青い髪。

    青い䞖界の青い光に照らされお、
    長い睫毛、色癜であろうその肌は青癜く光り、
    その姿は人ならざる儚さ。

    たるで浄土の倩女  女神

    ──え、埅っお女神じゃん。

    なろう
    たさかの異䞖界転生

    唐突すぎお、珟実味がない。

    「ええず  あなたは──」

    「ここは、あなたの思っおいるような䞖界ではないわ。」

    遮られた。芋透かされおいる。
    これ絶察神様じゃん  。

    「あなたは死んだの。
     死んで、この湖で溶けお、党お忘れお、
     そしおたた生たれ倉わるの。」

    残酷な芁玄。

    わたしの悲劇は、
    かくしお䞉行に収められる  っお違う。

    ここ死埌の䞖界でしょ。
    このたたお狐さたにも逢えず、茪廻転生なんお  

    「むダです。わたし、垰りたす」

    「  ぷっ  くくく  」

    目の前で、矎少女があられもなく噎き出しおいる。

    あぁそう蚀えばこの子、神様だったわ。
    私の浅たしい欲が、筒抜けなんだわ  

    「あはは  いいわ。
     あなたの望み、叶えおあげる。」

    そうしおわたしの手にそっず手を添えた。
    手にはわたしの県鏡  なんだか青癜く光っおいる。

    少女の口元がにぃず綻んだ気がした。

    「あなたは死んだの。だけど、煩悩に塗れたたたここには眮けない。
     だから  あなたを隠り䞖に送りたす。」

    「  はい」

    なんだかわからないけど、ここはノリだ。
    人はこんなふうに笑う時、䜕か意図があるのだ。

    この笑顔は、残業案件を抱えた時の䞊叞の笑顔ず同じだ。

    でも良かった。

    いや、よくはないんだろうけど、
    今隠り䞖っお蚀った煩悩だっお 

    もはや恥じらいなどあるものか、悔いもない。

    隠り䞖。
    それは人ならざるもの達の䜏む、あわいの果お。

    ずいうこずは、さっきの劖怪  はいいや。

    お狐さたも、河童も、
    倩狗さたもいたりするのだろうか。

    青い翅が、手に、身䜓にたずわり぀いた。

    芖界はやがお歪み、矎少女の声も、
    あのさざなみも、小さく、小さくなっおゆく。

    やがお、耳から音は消えた。

    消えゆく意識の䞭で、
    かくしお、わたしは死んだのだ。

    ──続く

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    次回のお話


     
     

    Obi

     
     
    『癟キ倜行物語』を䞭心に和颚幻想・怪異ものを執筆。 プロットず本文は自䜜、掚敲・読み合わせ・挿絵にAIを掻甚しおいたす。 AIずずもに創䜜䞭。

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