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Photo byemicanote

謀略鉄道

    【前回の話】

     北京のデパートからホテルへ戻る際、地下鉄の窓外に何かのロゴマークがずっと光っていた。電車は走っているのに、それについて来るようにずっと同じ位置へ表示されている。日本では見かけない広告スタイルである。きっと新しい技術なのだろうと思って、未来都市へ来たような心持ちがした。
     電車を下りて例の武骨な改札機を通ろうとすると、ブザーが鳴って大きな扉がバタンと閉まった。
    「陳さん」と呼んだけれど、陳さんは気付かない。そのままスタスタ歩いて行ってしまった。
     扉は開かないままである。振り返ると後ろには大勢並んでいた。これでは下がるに下がれない。もっとも、下がってどうする当てもない。
     進退窮まるとはまさにこの事と得心したが、それがわかってどうなるものでもないから、一向つまらない。毫も愉快を感じない。
     困った顔をして大いに窮まっていたら、駅員がやって来て扉を開けた。
     通っていいかと身振りで訊くと、先方も身振りで通れと返す。
     それで安心して通っておいたが、あんまりいい気はしない。そもそもこちらに落ち度がないのに閉じ込める改札機が悪いので、駅員にシェシェとは云わずにおいた。

     ちょうどそこへ陳さんが焦った顔で戻って来た。
    「どうしたの? 閉まったの? びっくりしたよ。百さんは後ろに来てると思ってたけど、いなかったからね。でも良かったね。びっくりしたよ」
     陳さんは驚いた顔で笑いながらそんな事を言った。本当はわざと置いて行ったのではないかと思う。


     
     
    随筆家。日常をそれっぽく書いたり、気持ち悪い話を書いたりする。 著書∶『牛おばさん・他49篇』 パスタ屋店長、人材派遣屋、メーカーのEC担当など種々の職業に就く傍ら、2003年よりウェブ上で執筆活動中。

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