
電車が好きすぎて、踏切になってしまった男の子の話。
僕は電車が大好きだった。電車が大好きで大好きで大好きで、施設に帰らなくてもいい日は、ホームの待合室から何時間でも電車を眺めていたんだ。
僕は神様にお願いした。生まれ変わったら駅になりたいって。たくさんの電車たちを見送る駅になりたいって。
駅になれば、もう会いに来てくれなくなったお母さんや、会ったことのない弟や、施設の先生たちみんなみんな、僕を使ってくれる。
駅がだめなら、線路になりたいって思う。線路になれば、どこにも行けなかった僕が、どこまでも伸びていけるんだ。
線路がなければ、もしもこの世に線路がなかったら。みんなどうなると思うかい?電車が来ないから、君たちはずっと徒歩のままさ。
困るだろう。僕はみんなが困らないようになりたいんだ。だから僕は生まれ変わったら、線路になってもいいって思うんだ。あくまで第二希望さ。
だけど僕は踏切になった。あるんだ、第一希望と第二希望落とされるなんて。ごめん、それは想像してなかった。
いいよ。僕は気にしない。踏切。とてもクールさ。黄色と黒の竹竿とか。なかなか無いぜ、竹って。
踏切だって大切な仕事さ。もしも僕が朝から壊れっぱなしで、一日中遮断機が降りていたら、どんな騒ぎになるか理解できるかい?
始発から電車が来なくて、駅はQueenのライブみたいになってるってことさ。
竹内まりやの「駅」に出てくる女性だって、駅がフェスみたいになってたら、見覚えのあるレインコートを見ることもできず、黄昏の駅で胸が震えなかった可能性が高い。とても高いんだ。
踏切は重要さ。だから僕は踏切であることを誇りに思う。僕は踏切をやりながら、少しずつ大人になっていった。
なのに。何だお前ら。僕がせっかく遮断機を下ろしているのに、何でくぐろうとする。そんな真っ青な顔で。何を思い詰めてる。
僕はしっかり仕事をしている。時間がくれば警報器を鳴らし、遮断機を下ろして、電車がここを通り切るまでは、誰も渡れないようにしてる。
なのに、ああ、どうしておまえらは今日もまた、遠い天竺を見つめるような目で、無理矢理僕をくぐろうとするのか。
どこへ帰ろうというの。僕をくぐった先にはいつもの田舎街があるばかりだ。どんなに君たちが頑張ろうと、極論そこには本州か東アジアしかないよ。
何で次の物語を期待して、僕をくぐっていくんだ。例え環状線を何周したって、君の目指す根の国は、どこにもないんだ。ないんだよ。
次に生まれ変わったら、荷物を乗せる棚になろう。棚はいいよね。クールさ。
(終わり)
SENON ARCHIVE -まとめのまとめ-
エッセイまとめ
俺のスピ道
俺のスピ道 -内なる静寂へ-
他言語版 / Other languages
【PT-BR】Português (Brasil):
【ES】Español:
【FR】Français:
【EN】English:
【ZH-简】简体中文:
【ZH-繁TW】繁體中文(台灣):