
ねえ、セルゲイ 2 -そして伝説へ-
「ねえ、セルゲイ。あたしもうダメみたい。」
おまえ、1週間で2回も銃で撃たれんなや。不死身か。
「最後に教えて。あなたの本名。」
本名?セルゲイ。セルゲイ・イワン・アントロコビッチやないかい。知ってるやろ。
「あなた、どう見たって東洋人じゃない。」
気のせいやろ。
「気のせいかしら。」
気のせいや。
「国籍は?ロシア?」
俺の国籍は天国や。今はアメリカ人やけどな。
「アメリカン・ジョーク言ってみて。」
おまえ、死にかけてんのに相変わらず注文多いな...。まあええわ。ほないくぞ。「クマンバチ」はな、ほんまは飛べへんはずやのに飛んでるやん。何でか分かるか?それはな、クマンバチが自分が飛べへん事を知らんかららしいで!
「セルゲイ...あなたの博学は認める。だけど全然笑えないわ。」
さよか。
「無意味ね。」
ほんまやな。
「ねえ、セルゲイ。あたしの本名、知りたい?」
別にええわ。
「由美子よ。」
おまえ、どう考えたって見た目バリバリ白人やのに由美子かい!ハーフか?
「いいえ、れっきとした日本人。だからあなたの本名も教えて。」
...久保。久保実や。
「ミノル・クボ...何て力強い名前。まるで天の命をそのまま授かったような...あなたにピッタリね。」
そこまで大層なもんか?
「わたしの苗字も当ててみて。」
苗字を当てるて...難しいな。池田とか斎藤とか...中村とか?
「ムケーレ・モベンベ。ムケーレモベンベ由美子よ。」
何やその怪物みたいな名前。おまえやっぱりどう考えてもハーフやんけ。
「無意味ね、本名なんて。」
おまえが言い出したんやろ。
「見て、セルゲイ。カーナビの案内が、さっきからずっと“道なり”になってる。」
雑な案内やな、毎回思うけど、これ。
「わたしたちも天国まで“道なり、まっすぐ”ってことかしら。」
上手いこと言いよんな。おまえ、落語家なったら良かったのにな。
「だめよ。落語家の弟子入りはきついもの。修行とか。師匠の世話とか。」
銃で撃たれて死ぬよりマシやろ。
「そうね、弟子入りするなら................」
....弟子入りするなら、誰やねん!おい、気になるやんけ、ここで死ぬなや!続きめっちゃ気になるやんけ!おい、死ぬな!教えろって!誰に弟子入りすんねん!
「もちろん林家ペーよ。」
楽しそうやな。
(終わり)
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