
セノン・ワカミヤを探して
セノン・ワカミヤ。お会いできて光栄です。ドイツから来たカール・シュミット・ダニエルです。フリーの記者をしています。
「え。何ですかいきなり。ぼく一般人ですよ。やめて。めちゃくちゃ怖いです。」
あなたの五行歌が、このたびイタリアで最も権威のある「金のこぶた賞」を受賞しました。率直な感想を教えてください。
「応募してないのに何で。」
どうやらあなたの家族が内緒で応募したみたいですよ。
「そんな80年代のアイドルみたいな流れなん。おかしいやん。何で俺に内緒なん。」
セノン・ワカミヤ。西欧や南米であなたの名前を知らない者はいません。あなたの名前と五行歌は世界中に知れ渡っています。
「そんなこと急に言われても。あ、最近やたら外国語の迷惑メール多いの、そのせいか。削除すんの大変やねんから、あれ。」
あなたの五行歌が南米で熱狂的な支持を受け、あなたの本を求めて殺到した若者が、本屋の前で暴動を起こすまでになりました。
「本なんか出してへんのに売ってる訳ないやんか。そら怒るわいや。でも何で暴動なん。もし売ってるとしてもアマゾンで買えばええやんか。」
なるほど、南米だけにアマゾンですか。
「いやそんなこっちがジョーク言うたみたいに受け取らんといて。何でそんな笑てんの、全然おもんないわ。」
暴動のきっかけになったあなたの五行歌...ここで朗読してもよろしいですか?
「いややめて。そんな初対面の白人さんに自分の書いたもん読まれるって。しかもこんな街中で。めっさ恥ずかしいやん、やめて。」
オギワラでも
ハギワラでも
どっちでもいいだろ
いますぐ
ここでキスして
「え、それが暴動の原因になったん。何で。他にもっとええやつあったやん。しかもそれ半分ずつ芸人と歌手からパクったやつやで。あかんやん。」
この歌で、満場一致で金のこぶた賞を獲得しました。
「何なんその金のこぶた賞って。聞いたことないわ。何の賞なんそれ。」
明日の授賞式にはもちろん出席しますよね。今のお気持ちは?
「そんなん急に言われても。少なくとも一ヶ月前に言うてもらわんと。急に会社休めへんやんか。」
明日の授賞式には、プレゼンターとして前年度受賞者のポール・マッカートニーが出席します。
「ポール・マッカートニーが前の年の受賞者なん。ポールと俺とじゃ神様とうずらくらい差があるやん。そんなん怖くてよう行かんわ。」
ちなみに2年前の受賞者はマニー・パッキャオでした。
「ますます何の賞か分からんやん。パッキャオてボクサーやで。点と点と点が全然結べへんわ。」
ではセノン・ワカミヤ。写真を一枚いいですか。あなたの五行歌が生まれた街をバックにぜひ写真を撮りたい。
「まあいいですけども。」
じゃあお願いします。
「あ、俺が撮影するんや。俺と一緒に撮りたいんじゃなしに。俺が撮る役なんや。俺のこと全然好きちゃうやん。」
ありがとう。記念になったよ、セノン・ワカミヤ。来週また来ます。あなたの最新作、楽しみにしています。
「何でまた来んねん。」
(終わり)
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