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Photo bycocoro_no_koe

英語 how come 「なぜ」の由来、あるいは疑問詞「なぜ」が別格であること

    きょう読んだ記事。島田庵さんが英語 How come 「なぜ」の由来について書かれている。

    "How did [does] it come about that ..." の省略に由来すると解説されることがあるが、そのような用例をみたことがない。むしろ探すと出てくるのは "How comes it [to pass,] that ..." のような表現で、むしろこれに由来するのではないか、との指摘。

    HEE こと唐澤一友・小塚良孝・堀田隆一『英語語源ハンドブック』(研究社)の come 「来る、生じる」の項に次の説明があった。

    How come?(なぜ?)の起源は主には16世紀頃から見られる How comes that? (どうしたらそんなことが起こるのか)や How comes it that ...? (どうやって…は起きるのか)というような言い方である(16世紀頃は一般動詞でも疑問文に必ずしも do は必要なく、主語と動詞または助動詞の順番を変えるだけで疑問文となった)。これが徐々に省略、簡略化され、19世紀頃のアメリカ英語から How come? という形式が広まった。

    HEE p.67

    HEE の見解は島田庵さんの指摘と一致するようにみえる。この表現が生まれた16世紀ごろには疑問の助動詞 do が必須でなかったので、How come を導くにあたっても does や did の存在を前提する必要がなかった。

    ただ残念ながら、具体的な用例までは HEE も紹介していない。

    辞書も文法書も、出典を明らかにした用例がないと信用できない
    疑い深いワタクシとしては、
    そういう表現を(辞書と文法書以外で)実際に見たことがないので
    どうにも納得がいかず。

    How comeの由来:Genius英和とロイヤル英文法は正しいか|島田庵(shimataiori)

    出典に対して几帳面な KDEE こと英語語源辞典(研究社)ならもしかして…と how や come を引いてみたものの、こちらには how come への言及自体がない。残念。
    大きな英語辞典ならきっと初例を載せてくれているんだろうな… OED とか。しかしさしあたり読む手段がないので、いったんここまで。だれかこれを読んだ奇特な方が辞書にあたってくださることを祈って。

    ところでドイツ語の「なぜ」にも、もっともよく出る warum とは別に wieso というのがある。
    warum は英語 where 「どこ」と相通じる疑問詞 wo に前置詞 um 「~をめぐって」がついた形で、中高ドイツ語期の11世紀に初出した。対して wieso は wie (英 how) と so (英 so) から成り、初出は16世紀とより新しい。英語 how come とドイツ語 wieso が同じ16世紀に出たというのは、単なる偶然だろうけれどおもしろい。

    ドイツ語 warum と wieso は同じ意味と説明されることもあれば、warum よりも wieso のほうがより話し手の疑念・反論の気持ちを含んでいるとされることもある。

    「なぜ」を問う表現にそもそもなぜバリエーションが増えがちなのか、次のような興味深い指摘もあった。

    warum 「なぜ」
    (2) 「原因・理由」を問うことの難しさ・複雑さ(causa materialis 「形相因」、causa formalis 「質量因」、causa efficiens 「作用因」、causa finalis 「目的因」の区別という基礎的議論からはじまり)を反映しているせいか、同義語が多い:weshalb, weswegen, wieso, wozu。

    石井正人『現代ドイツ語文法便覧』(白水社)p.146

    ちなみに weshalb や weswegen の wes- は was 「何」の属格(2格)に由来。wozu は wo (英 where) + zu (英 to) ということで、両要素とも現代ドイツ語と同じ形であるあたりに新語っぽさを感じる(warum の war- は現代ドイツ語 wo の古い形)。ただ、手元の資料では初出年代まではわからなかった。

    いわゆる 5W1H(ドイツ語ならぜんぶ w だけど)の中でも「なぜ」は別格。「なぜ」を問い「なぜ」に答えることはかように難しい。

    英語史4コマ『英語語源ハンドブック』用語解説シリーズNo.13「具格」

    「何やつ!?」「もう遅い!」「う・・・具格!」(それは不覚!)。具格は、whatの活用だったわい(why).#なぜさんたんげん #英子さんたんげん #hel活@chariderryu @liming_0 @_heartyfluid @z7B1KEhVqzPG0G9 @helvillian https://t.co/qCBMpsyLOb pic.twitter.com/ENdDyT8omp

    — ari (@arsm51) September 8, 2026


     
     
    本業は Web 屋。プログラマーときどきマネジャー(Engineering Manager)です。趣味でドイツのニュース記事や語源辞典を読んでいます。

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