
あとはよろしく|拝啓文芸部
冷蔵庫に、黄色い付箋が貼ってある。
「プリンは食べてよし。課長には、あの件、謝っておいた。企画書は七割。あとはよろしく」
覚えのない文面。でも、確かに私の字だ。「よ」の終わりがくるんと丸まる癖まで。
引き出しを開けると、同じ黄色の付箋が束になっている。日付は一日ずつ違って、字はどれも私の字。どれも最後は「あとはよろしく」で終わっている。
記憶喪失になったのか、異世界に転生したのか。どちらもどこかで読んだような、ありえない話。
けれど考えても仕方ない。とりあえず返信を書いてみる。
拝啓 昨日の私へ
プリンは、おいしくいただきました。
課長は私の顔を見て、少し笑いました。いったい何を謝ったんでしょう。
企画書の七割は、思っていたより良い出来でした。あなた、なかなかやりますね。
ただ、一つだけ言わせてください。
付箋の裏に、小さく書いてありました。
「三〇二号室の人に、まだ言えていない」
何を、ですか。
その続きを、私にどうしろと。
敬具
*
夜になった。ひょっとしたら今度は、私が書く番なのか。
拝啓 明日の私へ
プリンは買い足しておいた。企画書は九割。三〇二号室の人とは、エレベーターで天気の話をした。恥ずかしいことも少しあったけれど、それはこちらで持っていきます。教訓だけ、どうぞ。あとはよろしく
今日の私より
冷蔵庫に貼って、明かりを消す。
このメモを見る私が、少しだけ笑ってくれたら、と願いながら。
Mr.Qさんの企画に参加します。
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