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【小説】「共性する私たち」第章

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    第章

    千匥子が幹倫ずの「初デヌト」に遞んだのは、池袋にあるサンシャむンシティだった。

    土曜日の倕方、返信をもらっお狂喜した千匥子は、品川にある氎族通に行きたいず䞀瞬思い浮かべたが、いや、違うなず思い盎した。氎族通ずいうず、デヌトの定番感があり、幹倫の気持ちがただわからない状態では少々前のめりな気がした。

    幹倫は買い物に付き合っおもいいず蚀っおくれおいるので、それなら、倧型ショッピングモヌルのサンシャむンシティで食事や買い物をするのはどうだろうか。そしお、なりゆきに任せお、「そういえば、このビルの屋䞊に、氎族通ありたすよね。行ったこずありたす」ず誘うパタヌンを、千匥子はひらめいた。うん、さりげなくお、いいんじゃないか。

    千匥子は、たるで自分が䞭高生の男の子にでもなったような気がした。
    付き合う前の男性に察し、女の私がここたであれこれ思考を巡らせお、デヌトプランを考えたこずなどあっただろうか。これたで、デヌトプランは男性が考えるもの、ずいう思い蟌みがあったような気がした。思えば私も、男性に察しお、䞍公平なこずをしおきたかもしれない。

    土曜日の倜、千匥子は幹倫に月曜の埅ち合わせ時間や堎所に぀いお連絡をした。

    月曜日は、11時に池袋駅東口で埅ち合わせでもいいですか
    東口の「いけふくろう」の前で。
    䞀緒にランチかお茶しお、サンシャむンをぶらぶらするのに付き合っおください。

    さりげなさず芪しみ、どちらもあるよね、ず文面を確認し、千匥子は送信ボタンを抌した。

    幹倫から、その埌すぐ、「はい、了解したした」ずいうメッセヌゞずずもに、犬の口から「では明日」ずいう吹き出しの出おいる可愛いスタンプが送られおきお、千匥子は思わず笑っおしたった。可愛い。

    日曜日は、千匥子は郚屋に匕きこもり、買った冊の小説を読了した。
    久しぶりに小説の䞖界に没頭する時間を持おたこずが嬉しかった。享ず暮らし始めおからは、䌑日も倖出が倚く、読曞に集䞭する時間を持ずうずも思えおいなかった。

    享は、平日の倜こそスマホゲヌムに興じおいたが、䌑日はアクティブで、いろんな堎所ぞ行きたがった。䌑みずいう䌑みを倖出や旅行に充お、家でゆっくりする、ずいうこずには䟡倀を感じおいないかのようだった。千匥子には、土曜日は出かけお、日曜日は家でゆっくりする、ずいうスタむルが合っおいるず思っおいたが、享ず䞀緒に過ごしおいるうちに、
    「享は出䞍粟な私の生掻を倉えようずしおくれおいる」ずいう思いを抱くようになっおいた。

    千匥子は気づいた。
    私は別に出䞍粟などではなく、むンドアずアりトドアの半々が奜きなだけだ。い぀から自分に“出䞍粟”だなんおネガティブなレッテルを貌っおいたんだろう。享に蚀われたんだろうか。思い出せない。

    そうしお、さらに気づく。
    私は、享の機嫌を悪くしないように、知らず知らず、享の望むラむフスタむルに合わせおいたんじゃないか。

    ———私も、母ず同じじゃないの。
    さすがに父のこずを、モラハラ男ずは思っおないけど。

    離れようずしおいるのに、母の嫌いな郚分に远いかけられおいる気がしお、千匥子は愕然ずした。享ず私の収入はそこたで倉わらない。なのに、どこか察等ではなかった。察等でいるために、必芁なのは、仕事や収入ではないのか———。

    千匥子は考えるこずに疲れおしたい、今日は早めに寝ようず思った。寝る前に、ビタミンC入りフェむスマスクで肌を敎え、22時前に眠った。

    次の日、颚は冷たくも、日差しの枩かい日曜日だった。

    千匥子は、玄束の10分前に埅ち合わせ堎所の「いけふくろう」に着いお、幹倫の登堎を埅った。

    幹倫は、11時ちょっず前に珟われた。

    「ごめんなさい、埅ちたした」
    幹倫は申し蚳なさそうに、千匥子の顔を芗き蟌んだ。

    千匥子は心拍数が䞊がるのを感じながら、
    「いえ、私も今来たんです」ず蚀い、䞀緒にサンシャむンシティに向かっお歩き出した。

    「幹倫さん、月曜日はい぀も䜕しおるんですか」

    千匥子は幹倫ず肩を䞊べお歩きながら、話しかけた。
    同じ方向を芋お目線が合わなければ、緊匵せずに話せるこずが分かった。正確に蚀えば、緊匵しおいないわけではなく、緊匵しおいる自分を正面から芋られないで枈み、いくらか平静を装えるのだ、ず千匥子はちょっずした発芋をした気になった。

    「 月曜日は、たいおい家にいるかな。音楜を聎いたり、雑誌ずか動画で仕事関連の情報芋たり ずきどきは出かけたりもするけど」

    「そうなんですか。週に1回のお䌑みだし、貎重な時間ですよね」

    千匥子は、聞きたいこずがたくさんあったが、質問攻めにならないよう、気を付けた。今日は時間があるんだから、焊るな焊るな 。

    サンシャむンシティに着いた。
    千匥子は、前に来たのは、享ず暮らし始めたばかりのずきだっけな、ず思い出しおいた。

    「幹倫さん、お腹、空いおたす」

    幹倫は、ただ空いおいないずいうので、
    「じゃあ、先に掋服をちょっず芋おもいいですか」ず、レディヌスファッションのお店に付き合っおもらうこずにした。
    実際、䌚瀟で着る服を買いたかったのず、幹倫の奜みも知れるチャンスで䞀石二鳥だず千匥子は思った。

    モヘアのセヌタヌが可愛いなず思っお芋おいるず、幹倫が、
    「これいいですね」ず蚀いながら、背䞭の倧きく開いたニットワンピヌスを持ち䞊げた。千匥子はびっくりしお、
    「えっ、幹倫さん、そういうの奜みですか」ず蚊いた。

    幹倫は慌おた様子で、
    「あ、これは䌚瀟では着れないですね。倱瀌したした。千匥子さん、スタむルいいから、䌌合いそうっお思っちゃっお」ず蚀った。

    「千匥子さん、スタむルいい」のワヌドに千匥子はひっそり喜びながら、「幹倫は女性の開攟的な服装に寛容なんだな」ず驚き぀぀も感心しおいた。享は、女性の必芁以䞊に肌を出すファッションに難色を瀺すタむプだったから、䜙蚈に。

    それにしおも、意倖。穏やかで優しい幹倫さんだけど、倧胆なずころ、あるんだ。ちょっずショッピングに付き合っおもらうだけでも、幹倫ずいう人間の党䜓像を把握しおいくための、小さなパヌツ集めをしおいるようで、千匥子はワクワクした。

    千匥子は、結局そのお店では䜕も買わず、別のお店で、ニットのワンピヌスを買った。肌の露出は少ないけれど、先ほど幹倫が手にしたものに近いテむストの商品を遞んだ぀もりだった。䌚瀟には着お行かないが、プラむベヌト甚の服も欲しかったし、ず千匥子は満足した。幹倫ずのデヌトがたた叶ったら、その日に着よう。

    お腹が空いおきたので、2人でレストラン街ぞ移り、お互いパスタが食べたいず意芋が䞀臎し、むタリアンのお店に入った。

    千匥子は海鮮のトマト゜ヌスを、幹倫はカルボナヌラをオヌダヌした。

    食事が来るたで、䜕を話そうかな、ず千匥子は䞀瞬考え、
    「あ、先日は、カット、ありがずうございたした。すごく気に入っおたす」ず幹倫に䌝えるず、

    「あ、いえ。こちらこそ、来おくれお、嬉しかったです。ほんず、䌌合っおたす」幹倫はそう蚀っお、はにかむように笑った。

    「幹倫さん、どうしお独立しおお店をされようず思ったんですが私は雇われる䌚瀟員しか経隓がないから、自分で経営する倧倉さずか、動機すら、想像できなくお」ず蚊いおみた。

    「あぁ 以前は、枋谷の矎容宀で働いおいたんです。ものすごく忙しくお、指名も取らなきゃいけないプレッシャヌもあっお、もう少し、来おくれるお客さんに䞁寧に向き合えないかなず思ったのがきっかけかな」

    「それは、倧倉そう。でも、そんな志の高い理由があったんですね」

    「あずは、母が3幎前に䜓調を厩したので、なるべく近くで働こうず思っお、吉祥寺にお店を持぀こずに」

    「お母さんが。そうだったんですか 。それは心配ですよね。あ、歊蔵境に䜏んでるんでしたよね。実家ですか」

    「そう、実家。実家出たこずないんです」

    千匥子は幹倫に抱いおいたむメヌゞが少し厩れるのを感じた。
    33才の男性で、ただ実家から出たこずがないなんお 。
    職堎の同僚男性たちは、郜心郚に実家がない限り、遅くずも20代半ばには䞀人暮らしを始める者が倚いため、幹倫を珍しいず感じおしたった。

    しかし、お母さんが䜓調を厩されおのこずだし、自分には知りえない事情っおものがあるのかもしれないず思い盎し、幹倫に察するがっかりした気持ちを打ち消した。

    そのうちに、オヌダヌしたパスタがテヌブルに運ばれおきた。

    「パスタ、シェアする」圓たり前のように、幹倫が蚊いおきた。

    千匥子は、「あ、したしょうか」ず答えた。

    幹倫が店員さんに「お皿を2枚ください」ず声をかけた。

    「幹倫さんっお、きょうだいいる」

    「ううん、䞀人っ子」

    さながら、お芋合いの垭のような䌚話だが、蚀葉遣いは敬語ず友だち口調をミックスした状態に倉化しおいた。よそよそしいのが嫌で、敬語を枛らしおいきたいなず思い始めおいたずころだったので、互いに、自然に、少しず぀倉わっおいくこずに、千匥子は心地よさを感じた。

    「そっかぁ。なんか、料理のシェアずか、“女子”をよくわかっおる気がしお、お姉さんか効さんでもいるのかなず思っお」ず千匥子は蚀った。

    男性ずの食事で、シェアの提案をしおもらったこずがなかった千匥子は、幹倫の気遣いに感心しおいた。
    ずはいえ、千匥子自身は、普段は面倒なので、シェアしない掟なのだが。

    「あヌ、お姉さん、欲しかったな」ず幹倫が目を现める。

    千匥子は、自分には兄がいお などず話し、そのあずは血液型や誕生日、星座の話などをしながら、2人は2皮類のパスタを食べ終えた。

    お䌚蚈は、幹倫が払うず蚀うので、千匥子はお瀌ずずもに、
    「あずでお茶するずきは、私が払いたすね」ず䌝えた。

    レストランを出お、
    「幹倫さん、䜕か芋たいお店ずかありたすか」ず千匥子が蚊く。

    「いや、特にないかな。千匥子さん、もう服はいいの」ず幹倫が蚀うので、

    「幹倫さん、䞊にある氎族通っお行ったこずありたすか私、䞀床もないので行っおみたくお」ず蚈画通り、勇気を出しお蚀っおみた。

    「氎族通 あぁ、あるよね。僕も行ったこずない。行っおみようか」

    千匥子は「やったヌ」ず心の䞭でバンザむをしお、2人で氎族通ぞ向かった。

    氎族通内は、季節限定の装食によっおクリスマスの雰囲気を纏い、さらにロマンティックなムヌドを挂わせおいた。いい時期に来れたなず千匥子は思った。

    平日ずはいえ、空すいおいるずいうこずもなく、小さい子どもを連れた芪子や、倖囜人芳光客、たた若いカップルも倚く、ほどよくにぎわっおいた。

    私たちも、呚りから、きっずカップルに芋えおいるよね。
    千匥子には、今日、幹倫ずの距離が瞮たる予感だけはあった。

    1階の海䞭トンネルをくぐりながら、クラゲの幻想的な雰囲気に千匥子はすっかり陶酔しおいた。同じく、蚀葉を倱っお芋惚れおいる様子の幹倫ず目が合い、埮笑み合った。

    もう、千匥子は手を぀なぎたいず思った。
    さらに、初めお幹倫に䌚ったずきに感じた「抱きたい」ずいう思いがよみがえるのも感じおいた。出䌚っおたもない男性に、こんなふうに欲情するこずは初めおで、内心戞惑いながらも、幹倫の魅力のせいだ、䞍可抗力だ、ず自分の感芚を肯定しようずしおいた。

    2階ぞ行くず、幻想的な雰囲気から䞀転、バラ゚ティ豊かな生き物たちの生態を知りたくなるような展瀺が広がっおいた。

    䞖界に䜏む氎の生き物たちが、それぞれの生息地の環境を再珟した氎槜の䞭で、快適そうに泳いでいた。

    ひず぀だけ、生息地の衚瀺のない氎槜があり、
    「クマノミずむ゜ギンチャクの海」ず曞かれおいた。

    千匥子は、小孊生の頃、遠足で氎族通に行った際、
    「む゜ギンチャクっお、いそきちやこみたいだないそきんちゃこ」ず男の子にからかわれたこずがあり、「む゜ギンチャク」には人よりも匷く反応しおしたうずころがあった。今ずなれば笑い話なのだが。

    だけど、今日、生たれお初めお、自分の名前に感謝するこずずなった。
    クマノミ くたのみきお。
    クマノミずむ゜ギンチャクが共生関係にあるこずは、以前から知っおいる。

    幹倫が気づいおいるのか、どう感じおいるのかがわからないので、䜕も口にはしなかったが、千匥子は、「私たち、運呜では」ず心の䞭で぀ぶやくほど、勝手に盛り䞊がっおいた。

    ふず幹倫を芋るず、神劙な顔をしおいるこずに気づいた。

    「幹倫さん」ず声をかけようずしたそのずき、幹倫が口を開いた。

    「千匥子さん、クマノミの生態っお知っおる」

    「え、クマノミの生態 なんだろ、む゜ギンチャクず共生の関係があるっおこずくらいしか 」
    ぀い、にやけおしたいそうなのを抑えながら蚀った。

    「あ、そうだよね、それは有名だよね。それず、あずもう䞀぀特別な生態があっお、クマノミっお、生たれたずきは、オスもメスもないんだっお。で、それから成長しおオスになっおいくんだけど、矀れの䞭で䞀番倧きいオスが、メスに性転換するの。そうしお矀れの䞭で2番目に倧きいオスずペアになっお産卵するみたい」

    「え、えヌオスからメスに性転換そうなんだ、知らなかった」

    千匥子は、幹倫の話に玔粋に驚いた。
    それず同時に、幹倫の䜕かもの蚀いたげな、ただならない雰囲気も感じ取り、胞がざわ぀くのを感じた。

    「 幹倫さん、魚奜きなの魚の生態に詳しいんだね」

    千匥子は、それだけ、やっず口にした。

    「あ、いや、そんなこずないよ。クマノミの生態を高校生の時に知っお、ほんず䞍思議だなっおずっず思っおただけで」

    「そうだったんだ 。あ、そういえば、性転換ずは違うんだけど、カタツムリずかナメクゞは、確か雌雄同䜓しゆうどうたいずかいっおオスずメスどちらでもあるんじゃなかったっけ」

    「千匥子さん、よく知っおるね。そうそう、それも本圓に䞍思議だよね」

    カタツムリの話で、陰っおいた幹倫の衚情に少し明るさが戻ったような気がしたが、千匥子は耇雑な気持ちになっおいた。

    幹倫には、䜕か抱えおいるものがあるのだろうか。

    ふず、合コンのあずの“4次䌚”で䜳奈が幹倫の印象に぀いお
    「ちょっずゲむっぜいなず思った」話が、脳裏に浮かんだ。

    千匥子は動揺しおいた。
    しかし、それを幹倫に知られたくなくお、努めお明るく振舞った。
    「他にも䞍思議な生態の生き物がいないか、探しおみようかな」ず蚀いながら、「クマノミずむ゜ギンチャクの海」を離れ、別のコヌナヌぞず歩いた。

    2階から、屋倖ぞ出た。
    空気はひんやりずしおいたけれど、日差しは匷く、1日のうちでもっずも暖かいだろう時間垯で、䞊着を着る必芁がないほどだった。

    倧郜䌚の屋䞊で感じる自然に癒されながら、幹倫ず過ごした今日のこの時間を忘れないでいたい、ず千匥子は思った。私たちはどうなっおいくのか。わからないけれど、流れに身を任せよう。あたり倚くを考えすぎに 。

    屋䞊にカフェがあったので、
    「幹倫さん、䜕か飲むこんなに暖かいから、ホットじゃなくおもいいくらいだね」ず蚀いながら、入口に眮いおあるメニュヌを千匥子は指さし、幹倫を振り返った。

    そのずき、幹倫が「はい、もしもし」ず電話に出た。

    「えっ、母が」

    幹倫の衚情ず声で、倧倉なこずが起きたのだず千匥子は瞬時に察した。

    「はい、はい、今池袋にいたしお。はい、今すぐ向かいたす」

    電話を切った幹倫は、必死に冷静さを保぀ような口調で、
    「千匥子さん、ごめん、母が倒れお病院に運ばれた。申し蚳ないけど、ここで」ず頭を䞋げ、身をひるがえしお立ち去った。

    千匥子は䞀瞬、その堎に立ち尜くしたが、幹倫のこずが心配になり、急いで远いかけた。

    ゚レベヌタ—を埅っおいた幹倫に远い぀き、2人は走っお、池袋から山手線に乗った。新宿で䞭倮線快速に乗り換え、歊蔵境に着くたでの玄30分、ほが蚀葉を亀わすこずはなかった。

    どうか、最悪なこずが起きたせんようにず、ひたすら千匥子は祈り続けおいた。


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    ※この䜜品はフィクションです。実圚する公共亀通機関名、商業斜蚭名が出おきたすが、実圚の人物や団䜓などずは䞀切関係ありたせん。

     
     
    日垞の痛みや人間の業を、文章に立ち昇らせる。 そんな゚ッセむや小説を曞きたがっおいる43歳。 登校に苊戊する3人の子どもたちず、圚宅ワヌクの合間のnote。旧名長橋知子 電子曞籍https://x.gd/hRmNd

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