メインコンテンツへスキップ
見出し画像

公開3日前、犯人は私のこだわりだった|フォーム不達とスマホ表示12秒の実録

    前回:モデルの使い分けを覚え、AIたちを「スタッフ」としてマネジメントし始めた私。だが公開直前、トラブルは連鎖する——。


    「送信されました」の嘘

    公開まで1週間を切った深夜、お問い合わせフォームのテストをしていた。

    画面には「送信されました」と出る。だが、メールが届かない。宛先を3箇所に変えても、全て届かない。画面は成功と言い、現実は失敗している。原因のヒントすらない。この夜、問題は解決しなかった。

    深夜の記録に、疲れ切った一文が残っている。

    「明日のAIが『頼れる相棒』であることを、ただ祈るのみかな……?」

    翌朝。新しいセッションのAIが、原因を突き止めた。

    犯人は、サーバー会社の「内部配送ルール」だった。同じサーバーの中にあるドメイン宛のメールは、外の世界を経由せず内部で処理される——という、初心者には知りようのない仕組み。設定をひとつ変えるだけで、メールは届いた。前夜の泥沼が、朝の15分で終わった。

    「ありがとう。本当に助かりました。」

    AIとの協業には、こういう日がある。昨日のAIに絶望し、今日のAIに救われる。

    他のAIに「査定」させてみた

    公開4日前、私はふと思い立って、あることをした。

    作りかけのテストサイトを、Claude以外のAI(ChatGPT、Gemini、他)に評価させてみたのだ。90日間並走してきた相棒の仕事を、よそのAIはどう見るのか。身内褒めではない、外部の目が欲しかった。

    結果は、期待以上の高評価だった。当時の記録にこうある。

    「こちらの期待以上に評価が高くてとても安心しました。まだ作業は残っていますが、Claudeを相棒として構築作業をしてよかった……と心から思っています。」

    安堵して、私はこう締めくくっている。「ここで油断せずにもう一踏ん張り。」

    ——この直後だった。90日間で最大のトラブルが顕在化したのは。

    12秒の恐怖

    iPhoneとiPadで、サイトの表示に12秒かかる。

    パソコンでは速い。スマホのSafari(iPhoneの標準ブラウザ)だけが、絶望的に遅い。いまどき12秒待ってくれる訪問者はいない。公開まで、あと3日。

    AIと仮説を立てては潰す作業が始まった。画像が重いのか。フォントか。外部サービスの読み込みか。ひとつずつ試しても、12秒は縮まらない。

    突破口は、AIの分析ではなかった。私の、直感だった。

    「私がぼんやりと思っていることがありますが、それを聞いてもらうことはできますか?」

    サイトのデザインを詰めていた時期、私は上部のナビゲーション(メニュー部分)に「もう少しデザイン性を」とこだわり、動きのある装飾を入れてもらっていた。見た目は良くなった。だが——あれが原因になっていないか?

    調べた結果、ビンゴだった。

    ナビに仕込んだ動きの演出が、iPhoneのSafariの描画を詰まらせていた。犯人は、私のこだわりだったのだ。

    装飾を外し、他の対策と合わせて、表示は12秒から4秒へ。公開できる水準に届いた。検証した朝の記録には「衝撃!改善された!!」とビックリマークが並んでいる。

    人間にしか出せない仮説

    この一件は、AIとの協業の本質を教えてくれた。

    AIは仮説を何十個でも出せる。だが「あそこの改修、中途半端だった気がする」という現場の勘は、そのサイトを毎日隅々まで見て、全ての判断の経緯を体で覚えている人間にしか出せない。AIの網羅性と、人間の直感。どちらが欠けても、12秒は縮まらなかった。

    残り3日。ここから私は、ほとんど寝ない日々に入る。

    (次回:「最終の最終です」)



    この連載について コードが書けない元広告ディレクターが、AIとの協業だけでクライアントの企業サイトを完成・公開させるまでの90日間の実録です。当時の実際のログをもとに書いています。登場する企業・人物は、特定を避けるため一部の表現を変えています。 連載はマガジン「#AI並走記」に束ねています。良かったらフォローしてください。



     
     
    元コピーライター・広告ディレクター。脳梗塞で一度立ち止まり、復帰後の初仕事で生成AIと出会う。コードが書けないまま、AIとの協業だけでクライアントサイトを公開まで完遂。その90日の実録を連載中。AIに挫折した同世代の背中を、少しだけ押せたら。

    あなたへのおすすめ