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AI時代の創作メモ|「なろう系は読まれる。でも、なろう系主人公は書きたくない。」という人のための、なろう系の正体(#創作論 #Web小説 #なろう #カクヨム #文章術 #小説の書き方 #note #エッセイ #書籍化 #生成AI #画像生成AI)

    こんにちは。こんばんは。
    普段はラノベを書いている「うら表紙」と申します。

    私のずいぶん昔のnoteに、「流行りの小説が書けない人へ」という記事があります。
    かなり前に書いたものなのですが、今でも結構読まれています。

    おそらく「なろう系小説が書けない」という苦悩を抱えた人が多いからなのだと思います。
    だから今回、かなり突っ込んだことを書きます。

    私も「なろう系主人公」は、正直とても苦手です。

    なぜなら、端的に言ってしまえば、
    「自分は他人に合わせなくていい。しかし他人は自分を理解し、評価し、必要としてくれる」
    という、非常に都合のいい主人公像だからです。

    たとえば、こんな主人公は珍しくありません。

    ・力を得た途端、急に「お前」とか言い出す
    ・自分を地位や権力で値踏みした女性は異常なほど悪く描かれるのに、自分は女性を容姿・純潔性・性格・能力・貞淑さ・献身性などで値踏みしている
    ・個人主義を「誰にも配慮しなくていい」と混同している
    ・謝らないことを「他人に媚びないクールさ」だと思っている
    ・ものすごく魅力的な女性が好意を向けているのに、「女なんて面倒だ」みたいな態度をとる

    挙げればきりがありません。

    そして女性読者の場合、ヒロインの造形が気になる人も多いのではないでしょうか。

    なぜか、黒髪・薄化粧で、目立たないのに有能な美人が多い。

    ・黒髪
    ・薄化粧
    ・美女なのに派手ではない
    ・武道家、聖女、剣豪、医師などの硬派な能力や職業を持っている
    ・真面目
    ・誰にでも平等

    おそらくこれは、「俺自身を見てくれそうな女性像」と「男性からの評価を必要としていない女性像」を記号化したものなのだと思います。

    まあ、港区女子みたいなヒロインだと、しょっちゅう他の男性と主人公を比較しそうですしね(笑)

    さらに、ヒロインに王族、剣豪、聖女、高位冒険者、天才といったステータスを持たせることにも意味があります。

    最初から「価値の高い女性」として登場させることで、
    「普通の男には媚びない女から求められる俺、どやぁ」を成立させられます。

    男女を逆転させれば、
    「誰にでもなびくわけではない皇子から無条件に求められる私、どやぁ」です。

    構造そのものは変わりません。

    そして、もう一つ。

    女性読者なら「う~ん……」となる人も多そうなのが、
    優秀な女性だったはずのヒロインが、主人公の前でだけ急に低IQになる問題です。

    ただ、これも「作者が女性を馬鹿にしている」と考えるより、物語上の機能として見た方がわかりやすくなります。

    出会った頃の「男性からの評価を必要としない、自立した有能な女性」という設定をそのまま維持すると、主人公の判断に疑問を呈する可能性が出てきます。

    主人公の道徳観に矛盾があれば指摘する。
    合理性のない判断をすれば反論する。
    自分が不当に扱われれば怒る。

    どれも、自立した有能な人間として考えれば、ごく自然な反応です。

    しかし、それでは主人公の判断を中心に物語を進めるにはかなり都合が悪い。

    そこで、ヒロインを「主人公の唯一の理解者」にします。

    すると、あら不思議。

    有能な女性だったはずなのに、
    「でも、彼には何か考えがあるはず」と言い始めます。

    そして最終的には、
    「もう、あなたってば♡」となる。

    こうすれば、ヒロインのIQが低下したように見える問題を、「主人公への信頼」に変換できます。錬金成功です。
    しかも医師なら医療、剣豪なら戦闘、聖女なら治癒というように、必要な場面では本来の天才的な能力を発揮してもらえます。

    この構造を使えば、
    主人公の判断に関係しない領域では、有能なままでいられるのです。

    ここまで、なろう系主人公とその周囲にありがちな例をいくつか挙げてきました。

    「流行りの主人公がどうしても書けない」という人は、おそらくこうした歪みに気づいてしまい、書くことそのものに抵抗があるのだと思います。

    それはすごく理解できます。
    物語のキャラクターを一人の人間として考えると、「なぜこんな人が好かれるのだろう」「なぜこのヒロインは怒らないのだろう」という疑問が次々と出てきてしまうからです。

    しかし、この主人公を「人間」としてではなく、「読者さんへ報酬を届ける舞台装置」として見ると、印象がガラリと変わります。

    中心にあるのは、
    「主人公の価値を、主人公以外のものが証明する」という仕組みです。

    主人公が「俺はすごい」と言うだけでは、自己評価にすぎません。
    だから世界側が証明します。

    弱いと思われていた主人公が圧倒的な力を見せれば、能力が証明されます。
    権力者が一目置けば、社会的価値が証明されます。

    重要なのは、主人公の人格や道徳観ではありません。
    すべての矢印が主人公へ向かっていることです。
    世界の方から主人公を評価し、その評価が繰り返し正しかったと確認される必要があります。

    この構造を成立させるためには、敵役も記号化させる必要があります。

    傲慢な貴族。
    主人公を無能扱いする仲間。
    地位で男性を判断する女性。
    主人公の能力を認めない上司。

    相手の事情を深く理解する必要がなければ、「不当評価→真価の証明→相手の後悔」というカタルシスサイクルを短く設定できるからです。

    連載型Web小説では次話をクリックしてもらう必要があるので、小さな単位でこれを繰り返せる物語の方が「読まれる」という意味では圧倒的に強くなります。

    主人公が侮られる。
    能力を見せる。
    驚かれる。
    評価される。

    過去の人物が再登場する。
    現在の主人公を知る。
    後悔する。

    「俺TUEEE」「ざまぁ」「成り上がり」「溺愛」は別々のジャンルに見えますが、同じ回路を違う方向から動かしているだけです。

    だから、なろう系主人公の本質は「俺様」でも「最強」でもありません。
    世界が主人公を全方位から評価することです。

    逆に言うと、ここを押さえれば、主人公の性格はかなり自由に設計できます。

    必要なのは、苦手な「なろう系主人公」を真似することではありません。
    物語の世界が主人公を評価するという構造です。

    そういう風に考えると、「苦手だったなろう系を無理やり書く」ではなく、むしろ「自分の好みなキャラクターで、なろう系を設計」するということができるのではないかと思います。


    あとがき:
    やっぱりラノベは飲み物ですね(笑)。昨日紹介した作品、あっという間に100話まで読んでしまいました。面白いだけでなく、設計が本当にうまい。毎話しっかり「次をクリックさせる強烈な引き」を置きながら、その背後には常に“復讐”という一本の線が通っている。それでいて、カタルシスは別ルートで短く挟み込む。読者が離脱できない構造です。本当にお見事。「毎話引きを置く」だけでも難しいのに、意味を失わない本線があり、さらにラノベでは不利と言われる三人称視点の群像劇で成立させている。web小説の競争が激しいからこそ、こうした“不利な条件を全部貫通する”作品が出てくるのでしょう。なんだか、web小説のこれからのお手本を読んでいるような気持ちになりました。

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    書籍化作家で、マーケター歴20年。 なのに中身はだいぶ繊細気質。 創作の裏側や、読まれる仕組み、時々ちょっと人生の話。 うまく言えない感情を、言葉にしていく場所です。

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