
「理解できない」という言葉の誠実さ | アニメ「異国日記」に見た ブルベ冬の信念 と、砂漠を歩く足音
以前、「物語を必要とする人」という記事を書いた。
冬アニメが終わったので感想を書いてみたいと思う。
今回書きたいのは
以前の記事でも書いた「異国日記」について。
メインの二人ともに共感できるという
私にとってはとても珍しい作品だった。
一見、対極にいるような二人の間に流れる
静かな理解と揺るぎない境界線は、
深海に生きる私にとって、一筋の光のようだった。
まず高代 槙生。
この人は私と同じブルベ冬。
そして小説家である。
亡くなった姉の娘を引き取ることになるのだが
そこがまず、なかなかすごい人だと思った。
いくら大人とはいえ、
子供を一人引き取って育てるということは
並大抵のことではない。
しかもこれからお金がかかり始める高校生。
さらに独り身の女性にとって。
だから偉いなと思った。
でも彼女はきっと
自分の信念で選んだことだと思う。
ブルベ冬は基本的にイエベ達とは違い、
人情や温かみというもので動いてはいない。
だから、誰かのため、というより
自分の信念のために動いている。
ブルベ冬として、作家として、
彼女の言葉の一つ一つが
鋭く、新鮮な共感として私の心に刺さっていくのを感じた。
そして姉の娘を引き取った
もう一つ大きな理由、
それはきっと
29歳の頃に作品がヒットして
マンションを買っていたこと
にあると思う。
家賃のかからない家がすでにあるということは
35歳の槙生にとって精神的余裕が大きい。
(管理費や修繕費がかかるとはいえ)
一時期、家づくりや不動産についても
めちゃくちゃ調べたことがあるからわかる。(その時の記録は こちら)
精神的な余裕は、具体的な生活の基盤(実務)
の上にしか成り立たないのだから。参照:現実の岸辺
そういう、
ある種の成功があったからこそ
未成年を引き取る余裕があったんだろうと思う。
信念と成功。
それがきっと土台だった。
でも、共同生活の初めに
「あなたの気持ちは私には理解できない」
「同じようにあなたも、私のことは理解できない」
というような宣言を、一番最初にしていた。
側から見たら冷酷な人間に見えることだろう。
両親を亡くした子を突き放すように聞こえる言葉だからだ。
でも、
私はしみじみと思った。
真実で、誠実な言葉だ、と。
言葉だけの優しさなんていくらでもかけられる。
でも、実際的に助けになってくれる人はほとんどいない。
なら、偽りの優しさで覆うよりも、
真実を最初から伝えた方がいい。
見せかけの優しさで役に立たないよりも、
冷たいように見えても力になってくれた方がいい。
私はそう思う。
そして田汲 朝。
両親を急に事故で亡くしてしまい、
槙生と生活することになる。
私の場合とは状況が違うけど
親がいない、その気持ちはわかる。
作中に出てくる
「心に開いた大きな穴を見る」シーン。
誰もいない、水のない、
荒れ果てた砂漠を一人で歩くシーン。
とても共感した。
目には見えなくても、
確実に何かを失っているのだ。
遅れてやってくる悲しみ。
受け入れられない現実。
それでも進んでいく日々。
それでも
朝が闇堕ちせずに済んだのは
槙生の存在が大きかったと思う。
適度な距離感で真実を示すことができる存在。
静かな灯台のように。
とても貴重だ。
とはいえ、朝、強すぎないか。
立ち直るの早すぎないか。
その理由を考えてみる。
母親のことは好きだったけど
行動を制限されていて不自由だった。
本当はやりたかった軽音部、できなかった。
でも、槙生の元ではできるようになった。
だからだろうか。
両親を失う悲しみよりも
本当に生きたかった人生を生きる希望と喜び
の方が勝ったんだろうか。
そう考えると、
才能の芽は槙生の元で開花したことになる。
なんだかんだ言って、朝も高校生。
両親と過ごすのもあと数年。
本来なら反抗期でもおかしくない。
もう自立する時期だ。
だとするとやっぱり、
親を失う悲しみよりも
未来を開花させる方が必要だろう。
まだ親が必要な時期にいなくなった私と違うのはその点だ。
あまりにも立ち直りが早く感じた理由だろう。
ちなみに、異国日記は実写映画版も見た。
実写化って難しいと思う。
きっとアニメ化も難しいのだろうけど
原作を見ていないからわからない。
アニメを先に見て思ったのは
映画はやっぱり言葉よりも映像で見せる作品だなということ。
アニメで感じた、重さ、深さ、心情、
全てがなかった。
槙生というよりもガッキー。
朝というよりも年相応の若い子。
俳優さんのための作品。
そんな印象でしかなかった。
それが役作りの問題なのか何なのかは分からない。
映画には映画の良さがきっとあった。
でも個人的には、アニメの方が好きだった。
声優さんの語る一つ一つの言葉の重みが
確かにこの心に響いた。
知っている声優さんだけど、
特徴のある声だけど、
役になりきって声を出すって
本当にすごいことだな
声優さんてすごいな
っていつも思う。
「あなたのことは理解できない」
その突き放すような言葉の裏にある、
相手を一人の人間として尊重する究極の誠実さ。
それは、私が「一人戦闘」の果てに求めていた、
「演技ではない愛」の形でもあったのかもしれない。
目に見えない砂漠を一人で歩き、
やがて誰かの灯台を見つける。
そんな朝の再生の物語は、
今まさに「回復の記録」で「母が消えた日」という
自らの核に向き合おうとしている私の、
小さくも力強い「浮力」となってくれていると思う。

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