
SNSの「この間取りどう思いますか?」の危うさと、建築士の信用
最近、ThreadsなどのSNSで「この間取り、どう思いますか?」という相談投稿を頻繁に目にします。一生に一度の買い物で不安になる気持ちは痛いほど分かります。が、結論から言うと、細かい背景を説明しきれないまま、SNSに間取りをばら撒いて意見を求めるのは絶対にお勧めしません。
同時に、施主にそんな行動をとらせてしまう「建築士の信用低下」という現実について、同じ実務者として強い自戒を込めて書きたいと思います。
建築の「プラン」は間取りパズルではない
我々建築士は、家の図面を間取りとも呼びますが、「平面図(プラン)」と呼びます。プランとは、単にパズルのように部屋を並べたものではありません。
敷地形状、その土地の周辺状況、方位、地盤の高低差、建物の立面のバランスの良さ、断面計画による空気の流れの考え方、周囲の建物の高さ、太陽の入る角度、法律、条令、構造、設備、そして設計者の作風に至るまで、多種多様な条件を編み込んで作成するものです。
例えば、SNSの有象無象が「南向きにリビングがないなんて素人の設計だ!」と批判したとします。しかし、実は南側にクレーマー気質の隣人が住んでいて窓を開けたくないという事情があり、逆に北側には美しい借景が広がっているとしたらどうでしょう。
背景が分からないのに、一概に「ここに窓があったほうがいい」とアドバイスするのは、無責任で危険とすら言えます。

信頼関係の崩壊と、作業化する設計者のリアル
では、なぜ施主はSNSで赤の他人に相談してしまうのか。
投稿の文面をよく見ると「要望を伝えているのに反映されない」「お任せにしたらひどい提案だった」など、担当者との信頼関係が崩壊しているケースが目立ちます。
これは非常に気の毒な話であり、一部のハウスメーカーや設計事務所の中に、作業のようにパーツをくるくる回して「人の家の間取りを作るだけ」の担当者がいるのもまた事実です。我々設計者は、日々の業務の中で「施主をこんなに不安にさせていないか?」と強く自戒しなければなりません。

建築にも「セカンドオピニオン」が必要な時代?
利用者の全員が文脈を深く読み取るわけではないSNSで、断片的な図面だけを元に議論するのは不毛です。
これから必要になるのは、医療の世界にあるような「セカンドオピニオン」の仕組みなのかもしれません。担当者とは別の建築士が、敷地条件や施主の要望という「背景」をヒアリングした上で、プロとして図面を診断する。
もちろんそこには、無責任なSNSのコメントではなく、金銭による正当な報酬と責任が伴ってほしいと思ってはいます。
しかし結局またこれも難しい問題で、ではセカンドオピニオンの意見で変更したところが、結局元のほうが良かった/その方法には問題があったなどとなったら、契約者でもないのに何をどうやって責任を取るのでしょう?工期が伸びたからセカンドオピニオンに200万円請求しますか?
単純な話ではすまなさそうですよね…
最後に:自らの仕事への矜持
もしあなたが家づくりで迷っているなら、まずは担当者ともう一度話をしてみる。どうしようもなければ、SNSの不特定多数ではなく、利害関係のない別のプロに「相談料」を払って意見を求めることをお勧めします。
そして私自身は、目の前のクライアントに「不安だからSNSで他人に聞こう」なんて微塵も思わせないよう、圧倒的な対話と信頼関係でプランを練り上げていく。
自らがどんな仕事をしているか、その責任と矜持を改めて胸に刻みたいと思います。
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