
王都は遠いので断りたい現役竜人と、栗ご飯が冷めると怒る看板娘
金木犀の香りが、冷え込む秋の夕暮れを撫でていく。
二千万円の賞金で買い集めた古書の山に囲まれ、山田太郎(四十七歳)は縁側で分厚い魔導書をめくっていた。将棋ウォーズ甘初段。だが、なぜか竜人戦だけは絶対に負けない、現役「竜人」である。
「太郎さん! 新米の栗ご飯、冷めちゃうでしょ!」

木戸を勢いよく開けて踏み込んできたのは、近所の定食屋の看板娘・チヨだ。立ちのぼる栗ご飯の甘い湯気とお盆を突きつけられ、太郎が目を細めたその時――。
「ここか! 噂の不届きな竜人とは!」

庭先に、王都から乗り込んできた若き天才棋士が仁王立ちしていた。豪華な羽織を揺らし、肩で息をしている。
「中央の防衛戦を三連続ですっぽかしておいて、こんな僻地で読書三昧とはな。今すぐ我が挑戦を受けよ!」
携えてきた名木の将棋盤が、縁先へ無造作に叩きつけられる。太郎は面倒そうに古書から目を離し、腕時計を見た。
「困るんですよ。王都は遠いから断ったのに……それに、あと十五分で図書館が閉まるんです」
「き、貴様ッ! 名誉ある竜人の座より、近所の図書館を優先する気か!」
「ちょっとあんた!」チヨが割って入る。「竜人だか何だか知らないけど、あたしの作った栗ご飯が冷める前にさっさと決着つけなさいよ!」

「……わかりました」
太郎は重い腰を上げ、チヨから湯気立つ栗ご飯のおにぎりを受け取った。
青年が自信満々に盤上へ打ち据えた必勝の攻め筋。その刹那、太郎はおにぎりを左手に持ったまま、右手で無造作にひとつの駒をつまんだ。
――パチン。

乾いた鋭い駒音が、静かな夕闇に澄み渡る。
△6四歩。
天才の顔から、一瞬で血の気が引いた。数万の読み筋が音を立てて崩壊していく。何もないはずの虚空から首筋へ刃を突きつけられたような、底知れない絶望が盤上を支配していた。

「ま、参り……ました……」
膝をつく青年の前で、太郎はおにぎりを一口で飲み込んだ。
「ごちそうさま。じゃ、閉まるので行ってきます」

太郎は返却期限の古書を小脇に抱え、脱兎のごとく夕闇の町へ走り去っていった。
取り残された庭には、魂の抜けた天才棋士と、漂う金木犀の香り。
チヨは湯呑みを差し出し、ため息混じりに言った。
「……あんたも、冷めないうちに栗ご飯食べる?」

編集後記
アピオスファンクラブ師匠の記事からたどりついた、わかもんさんの記事に書いてあるプロンプトを使わせていただきました。
なんだかいつもの師匠とは雰囲気が違います。なんでしょう。大人です。
私は、この記事を10月5日に書いています。
つまり、秋読コレクションの締め切りには間に合いませんでした。
だけど、ステップを刻みながら進めるプロンプトをお恥ずかしながら実ははじめて体験しました。へえ〜 こんな使い方があるのだと思いました。できたものをそのまま公開しておきます。
わかもんさんのプロンプトをGeminiに放り込んで作りました。
あなたもぜひ、ラノベ作りを楽しんでください。
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