土地の味に出会う飯、旅先の定番の食事処

旅先の昼飯には、いつの間にか足が向く店というものがある。
四万十へ来ると、決まって「いちもん家」に立ち寄る。
この店のよさは、土地のものを、気取らず、惜しげもなく食べさせてくれるところにある。
うなぎにかつお、四万十ポークに四万十鶏。
海の幸も川の幸も揃い、近隣で獲れた魚が刺身や焼き物、たたきとなって膳に並ぶ。
四万十という土地の豊かさが、ひとつの食卓に集まっている。
季節が変われば、料理の顔つきも変わる。
旬の魚はもちろん、その時季に採れる野菜も取り入れ、春夏秋冬、それぞれの味わいを楽しませてくれる。
決まりきった品書きだけではなく、季節の移ろいまで皿の上に映しているのがうれしい。
高級店のような気取ったところはない。
けれど、味よし、量よし、値段よし。
食べ終えれば、なるほどとうなずき、腹も心も満たされる。
旅先での昼飯は、こういう店に出会えるからいい。
四万十へ来たなら、また寄りたくなる、そんな一軒である。

松山へ行くと、昼飯は決まって「伍縁」。
えひめ共済会館の一階にある食事処だ。
宿もいつも同じ会館にとるから、自然とここで昼飯を食べることになる。
店内にはテーブル席とカウンター席があり、大げさなレストランではないが、落ち着いて食事をするにはちょうどよい。
地元の食材を生かし、手間を惜しまず料理を仕立てる。
そんな姿勢がうかがえる店だ。
ここで食べるのは鉄火丼。
特別な美食を売りにする店ではないが、値段は手頃で、魚もうまい。
旅先の昼飯は、こういう店がありがたい。
気取らず、財布にもやさしく、きちんとうまいものが食べられる。
松山での昼飯は、今日も「伍縁」。
いつもの宿に泊まり、いつもの店で海鮮丼を食べる。
旅先にそんな一軒があると、何かと心強い。


地方都市で朝飯を食べようと思うと、案外店が見つからない。
ホテルの朝食バイキングは利用しない。
冷めた既製品を並べただけの料理に高い金を払う気になれないからだ。
そんな時に重宝したのが、高知の繁華街、はりまや橋近くにあった「はりまや橋食堂」である。
高齢の主人が営む、朝から昼までの食堂だった。
観光客向けの気取った店ではない。
定食や麺類などを気軽に食べられる、地元の人たちの日常に根ざした一軒だ。
料理はボリュームがあり、なかでもカツオの刺身がうまかった。
高知に来たからには、やはりカツオを食べたい。
何の変哲もない普通の食堂で土地の魚を味わう。
こういう朝飯こそ、旅の楽しみである。
残念ながら、店はすでに閉店してしまった。
高知を旅するたびに頼りにしていた店が、いつの間にかなくなっている。
後継ぎのいない小さな食堂が姿を消していくのは寂しい。
高知の朝に、またあの食堂で飯を食いたいと思うのだが、それもかなわぬことになった。
①「いちもん家」
11:00 - 21:00
木休
高知県四万十市右山383-7 サンリバー四万十敷地内
0880-34-5552
②「伍縁」
11:00 - 14:00・17:00 - 21:00
不定休
愛媛県松山市三番町5-13-1 えひめ共済会館 1F
089-933-6028
③「はりまや橋食堂」
★閉店