
【響きの国】七十二候─草露白──露の向こうに人を思う
九月八日。
今朝は雨。
草も木も、
朝から濡れている。
七十二候は、
草露白(くさのつゆしろし)。
草の葉に宿った露が、
朝の光を受けて白く輝く頃。
『万葉集(まんようしゅう)』に、
こんな歌がある。
秋萩(あきはぎ)の
上に白露
置くごとに
見つつそ思ふ
君が姿を
萩(はぎ)の上に白露が置くたびに、
思い浮かぶのは、
君の姿。
もう一つ。
秋萩に
置ける白露
朝な朝な
玉としそ見る
置ける白露
毎朝、
萩の葉に宿った露を見る。
その露を、
まるで美しい玉(たま)のように見ていた。
『古今和歌集(こきんわかしゅう)』には、
文屋朝康(ふんやのあさやす)の歌がある。
秋の野に
おく白露は
玉なれや
つらぬきかくる
くもの糸すぢ
蜘蛛(くも)の糸についた白露を見て、
まるで玉を糸に通したようだと
歌っている。
萩の葉に宿る露。
蜘蛛の糸に並ぶ露。
朝の露は、
日が高くなれば消えていく。
その朝に見たものや思いは、
歌になって残った
千年以上たった今も、
歌をひもとけば、
萩の葉に宿る露が見えてくる。
その露を見つめながら、
誰かを思っていた人の姿も、見えてくる。
草露白。
昔の人が見つめていた秋の朝が、
今年も巡ってくる。
雨が上がったら、
草の葉や、
蜘蛛の巣を見てみたい。
昔の歌に残った露が、
今もそこにあるかもしれない。
観音龍詠唱
──草露白・露ニ宿ル想イノ祈リ
ネノネノネ
オンネノネヨ
オンナリトアマノネヨ
秋萩ニ宿ル
白露ヨ
蜘蛛ノ糸ニ
連ナル露ヨ
朝ノ光ニ
玉ノ如ク輝キ
消エユク一滴ニ
君ガ姿ヲ見シ
古ノ人ヨ
玉ト見シ人アリ
面影ヲ重ネシ人アリ
ソノ眼差シハ
歌トナリ
千年ヲ越エ
今ノ朝ニ届ク
オンヒーリャヒーリャ
露ハ消ユ
歌ハ残ル
季節ハ巡リ
同ジ秋ノ朝ガ
今モ我ラノ前ニ在ル
草ノ葉ニ
蜘蛛ノ巣ニ
古ノ人ノ見シ白露ヲ
我ラモ見ン
ネノネノネ
人ヲ想ウ心ヨ
時ヲ越エ
今ノ胸ニ宿レ
千年前ト
今ヲ結ブ
白露ノネ音ヨ
ヒビケソワカ

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