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【響きの国】七十二候─鶺鴒鳴──鳥の声に秋を聞く

    「チチッ」


    道ばたから、

    短い鳥の声が聞こえる。


    細い体に、長い尾。


    歩きながら、

    その尾を上下に振っている。


    セキレイです。


    七十二候では、


    鶺鴒鳴(せきれい なく)。


    セキレイの声に、

    秋を感じる頃です。


    あの長い尾を振る姿から、


    石叩き(いしたたき)、

    庭叩き(にわたたき)


    とも呼ばれてきました。

    そして、

    セキレイにはもう一つ、

    少し変わった名前があります。


    恋教鳥(こいおしえどり)。


    『日本書紀』には、


    伊弉諾尊(いざなぎのみこと)と

    伊弉冉尊(いざなみのみこと)が、


    セキレイが頭と尾を動かす姿を見て、

    男女の交わりを知ったという話が残っています。


    国を生んだ神さまが、

    小さな鳥に教わった。


    なんとも、

    おもしろい話です。


    鳥の声を聞いて、

    季節を知る。


    鳥の仕草を見て、

    名前をつける。


    そして時には、

    人の営みまで鳥から教わる。


    昔の人にとって自然は、

    ただ眺めるものではなかったのでしょう。



    今でもセキレイは、


    川辺や道ばた、

    公園や駐車場を歩いています。


    長い尾を振りながら、


    「チチッ」


    と鳴く。


    虫の声が聞こえる夜。


    風に揺れる草。


    そして、

    昼間に聞こえる小さな鳥の声。


    秋は、

    いろいろな音でやってきます。


    鶺鴒鳴。


    今年もまた、


    セキレイの声が、

    秋の中に聞こえています。


    観音龍詠唱

    ──鶺鴒鳴・秋ノ声


    ネノネノネ

    オンネノネヨ

    オンナリトアマノネヨ


    秋ノ野ニ

    小サキ声アリ


    チチッ


    川辺ニ

    道端ニ


    長キ尾ヲ振リ

    歩ム鶺鴒ヨ


    昔ヨリ

    人ハ汝ノ声ヲ聴キ


    季節ヲ知リ


    汝ノ姿ヲ見テ

    名ヲ授ケ


    時ニハ

    恋ノ営ミサエ

    教ワリシト云フ


    神モ亦

    小サキ鳥ニ学ビ給フ


    オンヒーリャヒーリャ


    我ラモ亦


    風ニ学ビ

    草ニ学ビ

    鳥ノ声ニ耳ヲ澄マサン


    見過ゴシシモノノ中ニ

    季節ハ在リ


    聞キ流シシ声ノ中ニ

    秋ハ在ル


    恋教鳥ヨ


    人ノ心ニ

    小サキトキメキヲ運ビ


    鶺鴒鳴ノ声ヨ


    今年ノ秋ヲ

    静カニ告ゲ給エ


    ネノネノネ


    鳥ノネ音ヨ

    人ノ暮ラシニ響ケ


    ヒビケソワカ

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    二十四節気、季節の行事、神社やお寺、昔の言葉。そこに残る響きから、日本人が大切にしてきた心を読み解いています。響きの国、曼荼羅シリーズ、物語を通して、忘れかけた感覚をもう一度思い出すために。

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