メインコンテンツへスキップ
見出し画像

【響きの国】七十二候─玄鳥去──海を渡る黒き羽、常世への帰り道

    ふと、軒下を見上げる。


    春から見かけていた燕の姿が、いつの間にかなくなっている。


    泥で固めた小さな巣は、

    そのまま残っている。


    そこから顔を出していた雛も、何度も餌を運んでいた親鳥ももう居ない。


    七十二候では、


    玄鳥去(つばめ さる)。


    燕たちが南の彼方へ帰る候です。


    燕の古い呼び名、

    玄鳥(げんちょう)。


    「玄(くろ)」という字には、

    黒という色だけでなく、

    奥深い、はるか遠いという意味もあります。


    昔は、

    燕がどこから来て、

    どこへ行くのか分かりませんでした。


    春になると、いつの間にか姿を見せ、軒下に巣を作って雛を育てる。


    そして秋になると、

    また姿を消してしまう。


    そのため古の人達は、

    燕を常世(とこよ)と呼ばれる

    はるか彼方の異界から来る鳥とも考えていました。


    『万葉集』には、

    大伴家持がこんな歌を残しています。


    燕来る

    時になりぬと

    雁がねは


    国偲ひつつ

    雲隠り鳴く


    (つばめ くる

    ときに なりぬと

    かりがねは

    くに しのひつつ

    くもがくり なく)


    燕がやって来る頃、

    雁は故郷を思いながら帰っていく。


    空を渡る鳥達を見て、

    季節の移ろいを感じていたのでしょう。



    「燕が軒先に巣を作る家は栄える」


    そんな言い伝えも残っています。


    野に巣を作るのではなく、

    人の暮らす家のすぐそばで子を育てる鳥。


    春から夏まで、

    親鳥が行き来する姿を見ていれば、

    雛が育つ様子も自然と目に入ります。


    だから、

    今年も来たな。


    雛が生まれたな。


    大きくなったな。


    そんなふうに、

    人は見守ってきたのでしょう。



    その姿が、見えなくなる。


    残るのは、

    軒下の小さな巣と、

    少し静かになった空。


    春に現れ、

    秋には去っていく玄鳥。


    古の人達が、

    その向こうに常世を思ったのも、

    どこか分かる気がします。


    玄鳥去。

    海を渡る小さな羽ばたきに、

    「また来年」と祈りながら。



    【観音龍詠唱】

    玄鳥去──常世ノ風


    ネノネノネ……


    軒下ニ残ル

    小サキ土ノ巣


    雛ノ声モ

    親鳥ノ羽音モ

    今ハ無ク


    見上グル空ニ

    秋ノ風


    玄鳥ヨ

    春ニ来タリ

    人ノ軒ニ命ヲ育ミ


    秋ニナレバ

    遥カ南ノ空ヘ渡リユク


    昔ノ人ハ

    汝ノ来ル彼方ニ

    常世ヲ思イ


    汝ノ去ル空ニ

    季節ノ移ロイヲ見タ


    黒キ羽ヨ


    風ヲ読ミ

    海ヲ越エ


    遠キ空マデ

    無事ニ渡レ


    オンヒーリャヒーリャ


    去ルハ

    終ワリニアラズ


    巡リテ

    再ビ還ルタメ


    玄鳥ヨ

    常世ノ風ニ抱カレ

    遥カ彼方ヘ渡リユケ


    次ノ春

    再ビ此ノ軒ニ

    小サキ羽音ヲ

    響カセ給ヘ

    「マタ来年」


    ソノ願イ

    秋ノ空ヘ放チ


    ヒビケソワカ

    画像

    前回の記事👇️

    響きの国シリーズ👇️

    お笑い曼荼羅シリーズ👇️

    魂覚醒ガイドブック※音声動画解説付👇️














    #響きの国 #七十二候 #玄鳥去 #燕 #玄鳥 #常世 #万葉集 #大伴家持 #渡り鳥 #季節の移ろい #観音龍詠唱








     
     
    二十四節気、季節の行事、神社やお寺、昔の言葉。そこに残る響きから、日本人が大切にしてきた心を読み解いています。響きの国、曼荼羅シリーズ、物語を通して、忘れかけた感覚をもう一度思い出すために。

    あなたへのおすすめ