
【響きの国】七十二候──蟋蟀在戸──秋の夜長、虫の声に耳を澄ませて
秋の夜。
開けた窓から涼しい風が入り、庭の草むらからコオロギの声が聞こえてきます。
暑さも和らぎ、虫の音を聞きながら過ごす夜が、なんとも心地よい季節。
七十二候では、蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)。
秋が深まり、草むらで鳴いていた虫の声が、家の戸口でも聞こえる頃。
昔の日本では、今のコオロギを「きりぎりす」とも呼んでいました。
小さな虫は草の根元や石の陰に身を隠し、翅をこすり合わせて鳴きます。
姿を探そうと近づけば鳴き止んでしまい、しばらくすると、またどこからか声が聞こえてくる。
秋も深まるにつれ、夜の冷え込みが増し、その声も少しずつ少なくなってくる。
やがて冬になれば、庭も静かになります。
春には鳥の声を聞き、夏には蝉の声を聞く。
そして秋には、こうして虫の音に耳を傾ける。
私たちは昔から、季節ごとに聞こえてくる自然の音とともに暮らしてきました。
夕飯を終え、温かいお茶を飲みながら、ゆっくりと過ごす秋の夜長。
誰も何も言わず、しばらくその音を聞いている。
蟋蟀在戸。
今夜はもう少し、虫たちの音を……
【観音龍詠唱】
蟋蟀在戸ノ章──秋夜ノネ
ネノネノネ
オンネノネヨ
秋ノ夜ヨ
涼風渡リ
草ノ陰ニ
小サキ声アリ
姿ハ見エズ
声ハ聞コユ
一ツ鳴キ
又一ツ鳴キ
野ノ音ハ
戸口ニ至ル
春ハ鳥
夏ハ蝉
秋ハ蟋蟀
冬ハ静寂
四季ノ音ハ
巡リテ還ル
人ハ灯ヲ点シ
茶ヲ汲ミ
手ヲ休メ
夜ノネヲ聴ク
語ラズトモ
満チルモノアリ
聴カズトモ
届クモノアリ
音ナキ音
響ナキ響
ネノネヨ
ネノネノネヨ
オンヒーリャヒーリャ
観音龍ヨ
秋ノ夜ニ
小サキ音ヲ結ビ
遠キ野ヨリ
人ノ戸口ヘ
戸口ヨリ
人ノ胸ヘ
声ナキ声ヲ
渡シ給ヘ
オンナリトアマノネヨ
虫ノ音ヨ
秋ノネヨ
夜ノ静ケサニ
深ク満チ
今宵モ
皆ノ内ニ……
ヒビケソワカ

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