
Diezelは、何を完成させたのか。90sハイゲインの到達点と『分離』という設計
前回、Soldano SLO-100 が「ゲインの量ではなく配分」で、深いのに濁らない高ゲインを作った話を書いた。1987年のことだ。では、その先はどこへ向かったのか。
一つの明確な到達点が、1994年にある。Peter Diezel の VH4 だ。Adam Jones(Tool)や James Hetfield(Metallica)がその音を鳴らした瞬間、ハイゲインの新しい基準が生まれた、とまで言われる一台。この記事は、Soldano が開いた道を、Diezel がどこまで進め、何を「完成」させたのかを掘る。鍵になるのは、ゲインの深さではない。**分離と定義(ディフィニション)**という、もう一段先の設計思想だ。
1994年、自分のために作られた怪物
VH4 の出自は、少し変わっている。
Peter Diezel は当初、VH4 を売るためではなく、自分を満足させるためだけに作った。ところが、その音を聴いた仲間のギタリストたちから「自分のぶんも作ってくれ」という依頼が殺到し、やむなく製品化した——それが1994年だ。つまりこの一台は、市場調査やコスト計算からではなく、一人の作り手の「こういう歪みが欲しい」という純粋な欲求から生まれている。以前 CSL が何度も書いてきた「アンプは誰かの判断のかたまり」という話が、これほど素直に当てはまる例も珍しい。
そして、その私的な理想が、結果として時代を動かした。VH4 は、ロックとメタルのギターの音を恒久的に書き換えた、ごく少数のアンプの一つに数えられる。個人の満足のために突き詰めた設計が、公共の基準になった。ここに、90sハイゲインの一つの完成形がある。
4チャンネルという思想——妥協せず、全部積む
VH4 の構成は、その名のとおり 4チャンネルだ。Clean、Crunch、Mega、Lead。それぞれに独立したゲイン、EQ、マスターを持つ。
これは、単なる多機能ではない。思想だ。Soldano SLO-100 は、卓越したオーバードライブとクリーンを持つ2チャンネル機だった。Diezel はそこから、「クリーンも、クランチも、ヘヴィなリズムも、歌うリードも、どれ一つ妥協せず、一台に独立して積む」という方向へ進んだ。チャンネルごとにEQまで独立しているから、リズムを削って締めつつ、リードは中域を持ち上げて歌わせる、といった相反する要求を同時に満たせる。しかも MIDI 切替を備え、複雑なリグにそのまま組み込める。
以前「チャンネル切り替えはいつ当たり前になったのか」で書いた、一台で複数の音を再現性高く呼び出すという流れ。VH4 は、その思想をハイゲインの最高峰で徹底した一台だと言える。音を「作る」だけでなく、「構成して、呼び出す」時代の設計だ。
この先は、CSL公式サイトの全文で続けている。
Megaチャンネル——「タイト」の代名詞
Diezelが完成させたもの——「深さ」から「分離」へ
スペックには、やはり書いていない
まとめ