
荒木珠奈展《A drift》@btf 近富倉庫(勝どき)
20年来の友人でN.Y.在住の荒木珠奈展『Adrift』へ。2023年の東京都美術館回顧展『うえののそこから はじまりはじまり』以来の再会でした。過去25年間の記憶では初めての硝子作品です。

珠奈さんの作品にはいつも時代の空気が静かに反映されている。モチーフやマテリアルは時代やテーマによって変化するが、彼女の〈手〉から生まれた世界観は揺るがない。作家の身体を通った作品には確かな輪郭がある。
窓から射す陽光や照明を反射してキラキラと美しい硝子や鏡。澄んだ水のような蒼の光。それに相反して痛いほど鋭利なかたち。それは今の世界そのものだなと思う。美しい広告の後に突然現れるガザ地区の破壊、水害や地震の被災の傷跡。壊されてしまった世界から目を背けずに光を捉えること、それを〈希望〉と呼ぶのだと思い出させてくれる。いつか冬が終わり、この硝子もハドソン川の氷のように溶けて海に流れ出す。その日を信じる。


倉庫を改装した会場のギャラリーbtfはマンハッタンのような雰囲気で、とても素敵なアート空間だった。写真には納めなかったけれど、エレベーターを降りた入口の装飾から驚きがある。アートと場所の関係性、〈相性〉は非常に大事だなと思う。

長年N.Y.に暮らす珠奈さんも〈移民〉として、今のアメリカの変化を肌で感じているという。しかしどこで暮らしていても彼女の〈美〉の本質は揺るがない。それを言葉にするのがなかなか難しいのだけど、いつも喧噪の中に生まれる〈静寂〉にふと耳を澄ますような感覚を覚える。

荒木珠奈展『A drift』10月3日(土)木・金・度のみ開催 13時~19時
※9月26日(土)のみイベントのため会場時間が異なります。16時~19時