
ガタンっと揺れて、ピョンってなって、ピトっと着地したら、パニックにならない? 《シロクマ文芸部 》 | ぽてぽたのよしなしごと #48
小さな手が、プラスチックのカップの中から何かをつまみ出した。
平日の午後、東京メトロの車内での出来事である。
私が座っている向かいの席に、小学校低学年と思しき少年が座っていた。
少年は、彼が片手で持つには少し大きめのプラカップを持っている。
そのプラカップを一心不乱に見つめている少年の様子が、私はなぜか気になった。
フタのない、そのプラカップの中には、葉っぱのようなものが入っている。
なんだろう?
そして私は、見てしまった。
少年がプラカップの中から、何かをつまみ出した。
それは、ヤモリの赤ちゃんだった。
たぶんね? 100%の確信はない。
でも、あのサイズ、あの形は、ヤモリの赤ちゃん以外に思い当たらない。
ヤモリ……? 東京の地下鉄の車内で?
少年はたまにソレをつまんでは中に戻し、大事そうに見つめている。
電車がガタンっと揺れて、ソレがピョンっと飛び出し、両脇に座る大人のどちらかの膝にピトっと着地したら、車内はパニックにならないかい?
私は少し、いや、かなり気になっている。
しかし周りの大人は皆さんスマホに目が釘付けで、少年の手の中にあるヤモリに気が付かない。
一方私は、向かいの席からガン見している。
おーい。あなたたちの隣に今、ヤモリがいますよ。と言いたい。
私の視線に気づいたのか、少年がこちらを見る。
目が合う。
私はとりあえず、にこっと微笑んでみた。
「かわいいヤモリだね!」と、顔面でメッセージを送ったつもりだった。
スルーされた。
10分くらい経っただろうか。
その子どもは、電車を降りた。
ヤモリの赤ちゃんを入れたプラカップを、フタをせずに片手に持って。
ホームにある登りエスカレーターに乗るところまで、目で追いかけてしまった。
少年よ。
移動中だけでも、フタをしてあげた方がいいんじゃないかな。
改札でPASMOをピッてやる時、プラカップがコロンっと落ちて、中のヤモリがポーンって……。
プシューッ。
電車のドアが閉まる。
……それにしても、ヤモリの赤ちゃんて、ずいぶんとかわいいもんだな。
私はスマホを開いて、画像検索を始めた。
* * *
おはようございます。
あっという間に9月も半ばになりそうですね。
ぽていとぽたあとです。
#シロクマ文芸部 に参加させていただきましたよ。
小牧さん、今回も楽しいお題をありがとうございます。
お題:「小さな手」からはじめるnote
ここ最近はショートショートでの参加が続きましたが、今回は合うエピソードがあったので、日記風?エッセイ風?に書いてみましたよ。
あの少年は、夏休みの自由研究か何かを、学校から持ち帰るところだったのでしょうか。
もしかして私が知らないだけで、この時期、よくある光景なんでしょうか。
再現画像、お見せしますね。

赤ちゃんヤモリがプラカップから飛び出さず、家に無事帰れたことを祈るばかりです。
最後に、電車エピソードつながりで、またnoterさんの記事をご紹介させてくださいね。
万里さん
どこに行っても面白いエピソードが寄ってくる、万里さん。
中央線でほんの数分間、四ツ谷から御茶ノ水に向かう電車の中ですら、ちゃーんと、子どもに目をつけられた(?)ようですよ。
すごいことですね。面白かったので、ぜひ。
Otmasanさん
「オトマさんを紹介しすぎです」という指摘、される前に自分でしておきますね。自覚しております。
でも。だって。
「電車の中」に絞っても、好きな記事があるんですから、仕方がないです。私のせいじゃないんですよ。
少し前の記事ですが、すごく優しくて、面白くて、良いお話です。
🥔・🥔・🥔
本記事をおもしろいと思っていただけた方には、以下もオススメです。
ぽてぽたの「よしな、仕事!」じゃないですよ。「由無し事」です。