
最初からそこに愛は無かった
旅行から帰ってきて、4日後のことだった。
浴室で滑って転倒した。
足を痛め、背中を浴槽に強く打ちつけた。
あとから見ると、浴槽のカバーが少しズレていた。
タクシーを呼び整形外科に行き、不動産会社にも連絡した。
以前の私なら、
こういう時は「大丈夫?」と言ってほしかったのだと思う。
でも今は、少し違った。
賃貸契約は夫のため、夫の出張が終わったあとに修繕担当に来てもらうと報告した。
その後、修繕不要と報告した。
けれど、返ってきたのは既読だけだった。
不思議と、もう怒りはなかった。
「ああ、やっぱりそうなんだな」
そう確認しただけだった。
昔の私は、
相手の反応で、自分の価値を測っていた。
心配してくれるか。
気にかけてくれるか。
助けようとしてくれるか。
その反応がないと、
自分には価値がないような気がしていた。
でも今は、
相手がどう反応するかと、
自分の価値は別なのだと思い始めている。
旅行から戻ったばかりだった。
一人で動き、
一人で考え、
一人で予定を組み立て、
無事に帰ってきた。
以前の私なら不安でできなかったことを、
今の私は、少しずつできるようになっていた。
だからなのかもしれない。
転倒した日、
私は「心配してもらえなかった」よりも、
「もう、この人に期待していない自分がいる」
そのことの方が印象に残った。
以前のような痛みは、もうそこにはなかった。
結婚生活の終わりは、
大きな喧嘩や決定的な出来事ではなく、
こういう静かな瞬間に、
少しずつ形になっていくのかもしれない。
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