
「マンガ離れ」は、6.7%だった。──「マンガ意識調査2026」から考えたこと
10月27日、小学生の「読書ゼロ」が25年ぶりに1割を超えたというニュースが報じられました。全国学校図書館協議会の「学校読書調査」によると、1か月に本を1冊も読まなかった小学生は13.4%。前の年から3.8ポイント増えたそうです。
この記事には、マンガの数字も載っていました。今年初めて調べた、マンガを1か月に1冊も読まない子どもの割合は、小学生で28.2%、中学生で40.2%、高校生で50.8%。SNSなどでも、たくさんの反響がありました。
ただ、マンガについては今回が初めての調査です。比べる過去の数字がないので、増えたのか減ったのかはまだわかりません。
気になる数字は、読者の調査だけではありません。市場の数字も同じです。2025年のコミック市場は、紙と電子を合わせて6,925億円。前年から1.7%減り、8年ぶりのマイナスでした(出版科学研究所調べ)。ただ、売上の統計からわかるのは、いくら売れたかです。誰が読んでいるのか、読まない人はなぜ読まないのかまではわかりません。
こうした数字が出るたびに、「マンガ離れ」という言葉を耳にします。
では、マンガから離れた人は、本当に増えているのでしょうか。確かめるには、読まない人も含めて、紙と電子とアプリを同じ人に聞き、以前と比べる必要があります。
「マンガ離れ」は、定義があいまいなまま語られてきた言葉でもあります。
私はコミチのCEOとして、30以上の出版社・メディアの皆さんと一緒に、Webマンガ雑誌を運営しています。マンガに関わる会社として、定義もファクトもあいまいなまま、この言葉が広がっていくのは良くないと考えました。
そこで、自分たちで測ることにしました。それが「マンガ意識調査2026」です。11月3日の「まんがの日」に向けて、結果を公開しました。
「マンガ離れ」と呼べる人は、6.7%
調査の対象は、全国の15〜69歳の3,000人です。ポイントは、マンガを読まない人も含めて、同じ設問で聞いたことにあります。
過去1年にマンガを読んだ人は51.5%。読んでいない人は48.5%でした。
読んでいない人の内訳を見てみます。「5年前も今も読んでいない」人が32.8%。「5年前より減った結果、読まなくなった」人は6.7%でした。

読まない人の3分の2は、マンガから離れたのではなく、もともと読んでいない人でした。「マンガ離れ」と呼べるのは、全体の6.7%にとどまります。
読者だけに聞く調査では、この区別はつきません。読まない人を分母に入れて、はじめて「離れた人」と「もともと読まない人」を分けられます。
この区別は、思った以上に大事です。読まない48.5%をすべて「離れた人」と見れば、やるべきことは「呼び戻すこと」になります。昔読んでいた作品の続編や、懐かしさに訴える施策です。でも、実際に離れた人は6.7%でした。残りの多くには、呼び戻すべき「昔」がそもそもありません。
もともと読まない人に理由を聞くと、いちばん多かったのは「興味がない」の51%でした。「子どもの頃に読む習慣がなかった」も21%います。離れたというより、まだマンガと出会っていないと言ったほうが近いのかもしれません。
ことわっておくべき点もあります。5年前の読書量は、本人の記憶による回答です。また「その他」の9.0%は、いま読んでいないものの「5年前と変わらない」と答えた人が中心です。来年からは同じ設問で、実際の変化を追っていく予定です。
減っているのは「紙の雑誌」
この調査では、紙のコミックス、紙のマンガ雑誌、電子書籍、アプリ・Webマンガの4つを、同じ人に聞いています。
過去1年に読んだ人の割合は、紙のコミックスが34.4%、アプリ・Webマンガが34.1%、電子書籍が28.8%。紙のマンガ雑誌は17.6%でした。

紙のコミックスとアプリ・Webはほぼ並び、紙の雑誌はその半分ほどです。また、読者の48.1%は紙と電子の両方で読んでいました。電子だけ(30.0%)、紙だけ(22.0%)より多い。読む場所は、紙とWebの両方に広がっています。
起きているのは「雑誌離れ」で、「マンガ離れ」ではない。私はそう見ています。
『週刊少年ジャンプ』の紙の部数が100万部を割ったときも、同じ問いを立てました。紙の器は減っても、作品を育てる場所はWebにも広がっています。
雑誌が担ってきたのは、作品を載せることだけではありません。読者と作品を出会わせ、作家を育てることです。器が減っても、その役割はなくなりません。
では、読者はいま、どこで作品と出会っているのでしょうか。
作品との出会いは、ランキング・店頭・SNS
作品を知ったきっかけを聞くと、上位はアプリ・電子書店のランキング(28%)、書店の店頭(26%)、SNSでの投稿・話題(22%)でした。出版社・作者の公式発信がきっかけになった人は7%です。

読者の多くは、作品を探しに行くというより、目に入ったところで出会っているようです。ランキングも、店頭も、SNSも、たまたま目にする場所です。
公式の発信が少ないという話ではありません。作り手の発信だけでは届かない人に、どう届けるか。この数字は、その問いを投げかけているのだと思います。
世代による違いもはっきり出ました。SNSがきっかけになった人は、10代(15〜19歳)で37%、50代以上で10%です。
一方で、10代は紙もよく読んでいます。「紙が中心」の読者は10代で44%と、20代の29%を上回りました。紙で読む理由に「所有して手元に残したい」を選んだ10代は59%で、全年代でいちばん高い数字です。
マンガアプリには、18歳以上でないと使えないものも少なくありません。私たちのアプリもそうです。10代が紙を手に取る理由には、そうした事情もあるのだと思います。
もう一つ、意外な結果がありました。AIが制作に関わったマンガに「抵抗がある」と答えた人は、10代で50%、60代で24%。若いほど抵抗が強かったのです。マンガを読む人(39%)は、読まない人(26%)よりも抵抗が強い。
新しい技術に慣れた世代ほど、AIに寛容だと思われがちです。でも、作品については逆なのかもしれません。手元に残したい。マンガ家さんが、読者に何かを届けようと人生をかけて描いた作品に出会いたい。若い人ほど、そうした「本物」のマンガを求める気持ちが強いのではないか。私はそう受け止めています。
まだ出会っていない人に、100年愛されるマンガを
「マンガ離れ」と呼べる人は6.7%でした。読まない人の多くは、離れたのではなく、まだマンガと出会っていない人です。
この違いによって、やるべきことが変わります。離れた人を呼び戻すことと、まだ出会っていない人に最初の1冊を届けることは、別の仕事です。
そして、その最初の1冊は、探しに来た人よりも、たまたま目にした人に届くことが多い。ランキング、店頭、SNS。出会いの入口は、すでにいくつもあります。
Webマンガ雑誌は、その入口の一つです。無料で1話を読めて、SNSで流れてきたリンクからそのまま作品に入れる。紙の雑誌が担ってきた「出会わせる」役割を、Webでも担える場所だと考えています。

コミチは、出版社の皆さんと一緒に、作品を育て、読者と出会わせる場所を、Webとアプリでつくっています。この調査も、その仕事の延長にあります。どこで、誰が、どんなふうにマンガと出会っているのか。それを測ることは、場所をつくる側の責任だと思うからです。
Webで出会い、アプリで定着した読者の熱量は、やがてアニメ化や実写化へと作品を押し上げていきます。この調査とは別に、私たちは同じ日に「IP推薦レポート」の提供も始めました。
特許を取得した分析手法「マンガメトリクス®」で読者の熱量を作品ごとのデータにし、映像化の候補を推薦するものです。

「マンガ意識調査2026」の図表はこちらのページで公開し、解説資料と回答データ(CSV)も同じページから無料でお送りしています。出典を書いていただければ、どなたでも使えます。マンガについて語るときの、共通のファクトになればうれしいです。
11月3日は「まんがの日」であり、「文化の日」でもあります。この調査は、毎年この日に向けて、同じ設問で続けていく予定です。世界に誇る日本のマンガ文化を支え、「100年愛されるマンガづくり」に貢献していく。それが、私たちコミチの決意です。