
【アマノ文筆クラブ】『9月は接吻してってば』【SF】
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ようこそ、皆さま! セイウチです。
波打ち際を散歩していたら、夏と秋がじゃれ合っているような、少し甘くて可愛らしい瓶を拾いました。
冷たいココアでも飲みながら、誰かの恋の終わりと始まりの物語をのぞいてみませんか?
それでは皆さま、本日お届けする漂流記をどうぞ。
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エアコンの冷風が虚しく響く部屋で、アキネはベッドの上から私の顔を覗き込んできた。
少し丸めた背中、ちゅっと音を立てそうな唇。
女の子同士の距離感としては近すぎるくらいだけど、これが彼女のいつもの甘え方だ。
「ねぇ、9月になったらキスしてくれるって言ったじゃん! もう9月だよ!?」
頬を膨らませて詰め寄ってくるアキネの顔をツンと突くと、彼女は不満そうに「んーっ」と声を漏らした。
私はわざとらしく首をすくめ、いたずらっぽく笑ってみせる。
「言ったけどさぁ……まだ心の準備ができてないの! もうちょっとだけ、この熱いトキメキを満喫させてよ♪」
ここから、私とアキネの長くて甘い攻防戦が始まった。
アキネの狙いは私の唇一筋だ。
ソファーで並んでアイスを食べている最中、急に顔を近づけてきたり、お風呂上がりに髪を乾かしてあげている隙を突いて上目遣いで迫ってきたりする。
だけど私は華麗にかわし続けた。
不意を突かれても、ハンディファンでガードしたり、冷えた麦茶のグラスを口元に差し出したりしてすり抜ける。
だって、一度でも唇を重ねてしまったら、この眩しくて解放的な時間が終わってしまうから。
けれど、9月も後半。
あと数日で10月を迎えるという日の夕暮れ時、私はついに隙を見せてしまった。
ベランダで西日を浴びながら油断していた私の顎を、アキネの手が優しくすくい上げる。
「——捕まえた」
逃げる間もなく、重ねられた柔らかい感触。
アキネの吐息が私の唇へと流れ込み、互いの熱が混ざり合っていく。
ただの甘いおふざけではない。
互いの存在そのものを手渡すような、どこか厳かで不可逆な「継承」の接吻。
「ふぅ……! なんとか9月中にキスできたぁ」
唇を離したアキネは、肩を上下させて息をつくと、急にプンスカと怒り出した。
「もぉー、ナツキがさっさとしないから9月の終わりまで暑いまんまだったじゃん!人間たちから『今年の残暑は異常だ』ってまた怒られるよ!」
「はいはい、ごめんって」
私はハァーっと深くため息をついた。
アキネから受け取った清涼な風が、私の体内に満ちていくのを感じる。
名残惜しいけれど、約束は約束だ。
私はそっと背中の真夏を降ろし、渋々アキネへ——「秋」へと、季節の座を譲り渡した。
(了)
※この物語はフィクションです。
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最後まで読んでいただきありがとうございます❗😭✨
なかなか涼しくならない9月の終わりに、「もしも残暑の原因が、季節たちのちょっとした愛おしい執着のせいだったら?」という妄想から生まれたお話です。
夏(ナツキ)の「まだ終わらせたくない」という名残惜しさと、秋(アキネ)の「早く交代したい」という痺れを切らした可愛らしさが、少しでも伝わっていれば幸いです。
季節の変わり目、急な冷え込みにはどうぞご自愛くださいね。
【甘野 充】さん本当に素敵な企画ありがとうございます!
毎週火曜日に自分の作品を投稿、企画に参加させていただく時は不確定的に投稿します!
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現在連載中❗『世界でいちばん遠回りな呪いの殺し方』 〜10年かけて俺を殺すはずの黒羽さんが、婚姻届を出してくるまで〜
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